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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第16章
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【第163話:ある日山の中】

カヴィールはまたお土産を準備していた。

今度は帝国のお菓子だという焼き菓子だった。

「く‥‥悔しいですが美味しいです‥‥」

アイカが歯ぎしりするくらい美味しかった。

すっかりとにこにこになった3人を、満足そうににまにまみるカヴィール将軍。

今日はメガネちゃんはお休みで、メガネくんとメガネ無しくんの文官コンビが一緒だ。

「ところで‥‥シャラハ将軍はどうしたの?最近みないね?」

ジュノに言われて、ぴくんとするカヴィール。

「そうですな、次の機会があれば控えさせておきましょう聖騎士様」

如才なく答えるカヴィールに、ジュノはちょっと不思議そうにする。

(帝国艦隊の中でも派閥(なかよし)が有るのかな?)

派閥はもう帝国としてあるのだが、ジュノにも感じ取れた。

今日は式神も2機だけ連れてきていて、今はアイ達を隠すためにアイカの外装で寝ている。

アイカはせっかくの移動時間で色々とカヴィールから情報を引き出す。

それはアヤンタのナライン将軍から教わった情報をベースに、双方を確認する作業ともなっていた。

食い違った部分を抜き出せば双方の思惑が浮かぶものだ。

顔色一つ変えないAIモードで対応する笑顔のアイカ。

外交官としても素養のあるカヴィールは、アイカに手強い老練さを見て驚いた。

可愛らしい外見とのギャップに恐れを抱くのだった。

14才程度の外見だが、アイカは過去を含めると18年程度の人生経験があった。

これはAIであれば十分に訓練され、技能を身に着けた年齢とも言える。

甘い物で釣れるのはジュノとヴェスタだけなのだった。




先ずは先日のオアシスにと案内した。

そのあまりの変化に、帝国の面々はまたしてもラウメン聖王国の技術におののく。

すっかり水辺が広がり、緑に包まれているのだ。

担当官となったアイカが説明し、まもなく植樹したヤシも根を張るでしょうと締めくくった。

「将軍‥‥これならば、まったく夢物語ではなくなりますね」

議会から派遣されている、カヴィール派閥の使いっ走りでもあるメガネくんがそういった。

興奮で頬を染めて、メガネを曇らせていた。

カヴィールの相手をアイカがしているうちに、ジュノとヴェスタで給油しておく。

オアシス中央に浮かぶ櫓に組まれた風車は、聖なる装置の一部だと説明し、勝手に触るとオアシスがなくなると脅しておいた。

ここを拠点として使えれば、そう遠からずサンガマラ王国までのルートを開くことだろう。

なにしろ50kmもいけば既存の街道に出るのだ。

これだけでも十分な外交カードとなるだろう。


更にVTOL機で移動し、帝国首都アズラントの手前の街ペンデシンにつながる山地に出た。

オアシスからは200km程なので、VTOL機ならほんのすぐそこだ。

その速度にも驚愕を隠せないカヴィール。

山地はアズラントに近いところまで繋がっている、ここはもう帝国の領土なのだ。

いまだ帝国艦隊では1周間はかかる距離だ。

山中の開けた台地に下ろすと、式神を1機護衛に残し、フル装備の三人が帝国の三人を引き連れて砂漠方面に山中を進む。

このあたりで竜の目撃事例が多いらしい。

「止まって‥‥」

ジュノが手を横に出し、一行を止める。

「アイカ式神を」

それだけで理解したアイカは上空にあげていた式神をおろし、先行偵察させる。

帝国の三人は固まってふるふるとする。

将軍は武人なのではぁ?といった目でジュノに見られている。

「誰か逃げてきます‥‥うしろから大型の獣の姿がありますね‥‥クマ?みたいのです」

ジュノは右肩から大型の戦斧をおろし、代わりにスマートライフルを二つ折りにして装備する。

カチンと音を立ててライフルが収まるころ走る男たちが見えた。

身体付きのしっかりした薄汚れた姿。

猟銃を持っているので、ハンターなのだろう。

どぉんと大きな音で、巨大なクマが追ってくる。

じゃまになった大きな木をへし折って進んでくる。

「た!たすけてくれえ!!」

猟師達は死ぬ気で走ってくる。

もうその背に爪がとどきそうな息遣いを聞いているのだ。

「やあやあ!われこそはラウメン聖王国のジュノ=ラウミナス!!聖騎士なるぞ!!」

ぽかんとヴェスタとアイカは口を開けた。

帝国の三人はおおお?!みたいな顔だ。

猟師達も驚いたが足は止めなかった。

止めたら死ぬると思っているのだ。

「とう!!」

なぜか掛け声とともに飛び出すジュノが身長の5倍ほどある巨大なクマに真正面から挑む。

どぉぉん!!

いや斧の意味は?!みたいに4つに組み合ったジュノ。

童話にもバカバカしくてならないレベルの絵がそこにあった。

クマはよく見ると立派な角が生えていて、普通のクマではないと知れた。

ちんまいくせに力負けしそうになるクマは理解不能な雰囲気。

「ガアアア!!」

大きく吠えると額の立派な角から雷を放った。

ガアアンと雷撃するが、20万ボルトに耐える保護スーツのジュノにとっては痛くも痒くもない。

「とりゃあ!!」

何故か拡声装置で大声を出すジュノが気合を入れると、クマはころんと転がった。

「ば‥‥ばかな‥‥ブリッツベーアの成獣だぞ‥‥」

おそらく体重は5~6トン程度あっただろう。

「ふぅん!!」

また無駄にきあいでバトルアックスを振り抜くジュノ。

どがあぁああん!!

ごろんごろんと巨大な熊の頭が転がる。

斧は地面に食い込んで止まっていた。

ソニックブームが来たので音速を超えた打ち込みだったのだろう。

ばしゃっとヘルメットを跳ね上げたジュノがまた名乗る!

「ラウメン聖王国のジュノ=ラウミナス聖騎士が討ち取ったぞ!!」

ぱちぱちぱちとアイカとヴェスタが褒めると、キリッとしてたジュノがにへらんと笑った。

狩人と帝国三人衆は限界まで口と目を開いて固まっていた。


猟師達にお礼を言われ、帝国三人の口を閉じさせて先へ進むジュノ達。

すっかり竜以上にジュノを恐れていた。

カヴィールは先日の超音速デートより怖かったらしい。


「‥‥止まって」

ジュノはまた手を横に上げた。

アイカが言われずとも式神を下ろし、偵察に出す。

ジュノはヴェスタにも目配せ。

「ヴェスタ‥‥そうとうヤバそう‥‥最悪そいつ等逃がして」

うなずくヴェスタがヘルメットのバイザーを下げた。

「了解」

短く答えたヴェスタが下がり、帝国三人をまとめて網で捕まえる。

事前に最悪のばあいと言われジュノに言われ準備していた、ナノカーボンの投網だ。

15tまでの負荷に耐えられるが、網が壊れる前に3人はひき肉に成るだろう。

「わあ!」「なんだなんだ!?」

と騒いでいるが、ヴェスタはきゅっと絞って捕える。

「最悪避難させますから、あばれないでね」

ヴェスタが演技もわすれて普通に言った。

今日は監督アイ達が見ていないのでいいかなと思うヴェスタだった。

正面の崖の影から影が伸び、地響きがした。

ずぅん‥‥ずぅん‥‥

「アイカ‥‥」

「でかいです‥‥あと‥‥なんだかやたら硬そうです?!」

アイカはちょっとパニック気味。

「お、おかしいよ!?カメラにノイズが入る?!霊子波を感じるのに重力波にも電磁波にも反応がない‥‥吸収している?ステルス?!」

がりりと崖を削ってドラゴンが現れる。

それは真紅に輝く2つの目を備え、ぶわっと暖色プリズムの翼を広げた姿。

長大な尾がふられ、超重量に森の木々がなぎ倒され飛んでいった。

メタリックな赤い鱗をもつそれはギリリと体を曲げジュノ達を睨みつけた。

アイカが震えながらひゅっと息を飲む。

ジュノの唇が苦鳴を零した。

「そ‥‥そんな‥‥アニマロイド?!」

それは金属でできた全長20mにも及ぶ巨竜だった。







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