表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第16章
191/785

【第160話:ジュノ子の旅立ち】

久しぶりに落ち着いたので、本来していた事に戻るヴェスタ達。

先日のマヤカラン旅行で必要性を感じた、地上移動用の車両を作る。

「どうです?なかなか可愛らしく仕上がりました!」

アイカが自信満々に組み立てたものは、博物館にあるようなレトロな物だった。

4人乗りで設計され、2✕2で右前がパイロットシートなのはスパイラルアークと同じ仕様だ。

ボディカラーは白地に朱色のツートンで、メッキ仕上げのバンパーが前後につく。

前照灯も丸形でメッキの縁取りが入り全体に丸っこい。

屋根はなくフルオープンでロールバーだけが付き転倒時に乗員を守るようだ。

タイヤは太く大きめで、走破性も良さそうだ。

「おぉ!すごいよアイカ、かっこカワイい!」

ジュノが絶賛するだけのクオリティだった。

ヴェスタもつやつやのボディをなでる。

「レトロな感じがおしゃれだわ!乗ってみてもいい?」

うんうんとしながら自分も後席に乗り込むアイカ。

ジュノも助手席に乗り込むのを見ながらアイカが説明する。

「主機は水素ガスタービンジェネレーターで、4機の超電導モーターによる全輪制御4輪駆動です!」

アイカはペラペラと楽しそうに説明し続けている。

「アイカ!これ右アクセル、左ブレーキ?」

うんうんとうなずくアイカ。

「はい!アークと同じレイアウトを目指しました。

「いいわ!馴染みがある‥‥メインスイッチは、これね?」

しゅぼ!

ィィィヒィィィイイイイ!!

タービンが前方のエンジンルームで唸りを上げる。

パン!!ィィィイイイイ!!

排気ガスに燃え残った成分がマフラーから火を吹き、タービンの回転が最高潮となる。

ジェネレーターが温度を上げてキンキンとノイズを発する。

「いくわよ」

にっこりのヴェスタが宣言すると同時に、4つのタイヤが地面を蹴り飛ばす。

ギュギャギャギャギャアアァァァ!!

「わぉう!なんてトルク!!」

4輪をドリフトしながら左右に車体をぶらしながらも、制御していくヴェスタ。

「ひゃあ!」

「いいぞ!いけいけえヴェスタ!!」

悲鳴を上げるアイカと、絶好調楽しそうなジュノがごうごうと唸る風に負けないように叫んだ。

拠点から掘り抜いたトンネルを抜けて、発射設備のある砂漠側の荒野に抜けた。

あちこちに飛び出した岩を器用によけて斜めに車が滑っていく。

「すごいすごい!ヴェスタの操縦はフィギアスケートみたいだねww」

笑いの止まらないジュノと、目がおかしくなってるヴェスタが奇声をあげる。

「ひゃぁあっほおぉうい!」

ぎゅぎゃぎゃぎゃぎゃあああ!

「みゃああああ!!!」

くるんと一回転して走り出す車から、放り出されそうになって悲鳴をあげるアイカ。

そうして15分ほど試運転をして拠点に戻ると、アイカはくったりとして横になっていた。

ジュノとヴェスタは絶好調でもう一周行こう!とか騒いでいるが、アイカに必死に止められるのだった。


挿絵(By みてみん)


「もう!レーシングカーじゃないのです!このトルクはロケットを乗せたカーゴを引くためです!」

アイカとしては、重力制御まで組んで接地圧を稼ぎ、超々強化ゴムの性能にものを言わせた超トルクで、重量の有るものを運ぼうと思っただけだった。

モーターも余裕を持たせるため、VTOL機やロケットに使う高性能なものを移植したため、思わぬモンスターマシンに仕上がっていて、泣きそうだった。

「もうヴェスタに貸さないからあ!」

アイカがついに泣き出してしまい、やっとヴェスタとジュノのテンションが戻ってきた。

「ごめんごめんアイカ、泣かないでもう無茶しないから」

「そうそう‥‥でもこの不自由なレイアウトと不安全な所がたまんないね」

「そうなのよ!さすがジュノ解ってる。操るのが難しいから楽しいのよ!」

謝ったのは一瞬で、また二人で盛り上がるので、アイカはいそいそとキャリアーを後部に連結する。

「ふふこれでもう無茶は出来ないです!」

アイカが曳いてきて連結したトレーラーは大きなタイヤが6本も付き、それ以外は骨組みのような仕様。

大きなロケットの部品を発射場に運ぶためのものだ。

トレーラーだけで15mほどの長さになる。

「おおぅ‥‥でかいの曳いたね‥‥なるほどあのトルクがいるわけだ」

ヴェスタも納得の大きさの後部車両だった。

「これで、有人飛行のできるロケットが作れるの?」

ジュノの質問に、また嬉しそうににこにこ説明し始めるアイカ。

「はい!前回の3段式ロケットの構造をそのままに、有人で軌道まで上がれるものを設計しました。今日は人形を打ち上げますが、重量と強度はジュノとヴェスタを基準に設計した人形をゆわえて打ち上げます!」

ジュノもヴェスタも前にアイカの遠隔着陸訓練で作った二人の人形を思い出した。

「あぁ‥‥ジュノ子ちゃんの首がまた取れるのね」

「ヴェス子はベルトで半分ちぎれてたわ」

悲しそうにする二人に、慌てて説明を続けるアイカ。

「だ、大丈夫ですよ!今はUMS(G抑制制御装置)とかも積みますから!首がとれたのは人形の方の設計に問題があったのですよ!」

なんか必死に説明されると余計に不安になる二人。

ちなみに結構リアルな人形なのに、顔はシンプルな顔だ。

毛糸で作った人形のような髪の毛がまた哀愁漂うのだった。


ぎゃんぎゃんと騒ぎながらもロケットのパーツをどんどん運ぶアイカとヴェスタ。

ジュノは発射場でロケットを組み立てている。

前回の反省を元に、一人で組み立てできるようにパーツ数を多くして、部品のサイズを調整した。

運び込むのは輪切りになったロケットで、大きな輪っかのようなものだ。

下から組み立てるので、だんだんと小さくなっていく分、カットされる厚みが増えていく。

トンネルもこれを通せるように天井と壁を拡張していた。

「おぉ‥‥ロケットっぽくなってきたね!」

ヴェスタが目を輝かせる。

「はい!今半分くらいです」

アイカも設計したものが形になっていくのが楽しいのかニコニコだ。

ジュノがパルスジェットで降りてくる。

現状で30m有り、先日静止軌道に上げたロケットの拡張型になる。

先端のフェアリングが少し太くなり、1人分の座席を乗せる予定だ。

補助ロケットは今回なしで、ファンで吸気してゆっくり上がる。

毎回切り離した部分も回収してリサイクルしているので、意外とコストは安い。

そうしてお昼までに組み上がったロケットは、なかなかの勇姿。

「おっきいね!」

「うんうん」

ジュノもヴェスタも見上げて首が痛そうにする。

全長は前回と同じで60m程になった。

20階建てのビルに相当する高さは、この星の住人なら死を意味するだろう。

ジュノ達は保護スーツとブーツのパルスジェットがあるのでお散歩の高さだ。

すでにジュノ子ちゃん人形が内蔵されており、約6時間後に帰還予定だ。

最後にジュノが人形を抱きしめて涙する姿は感動のピークだった。

まるで戦地に子を送る親の様に赤い目で見送るジュノ。

「くすん‥‥ずっと待ってるわ!ジュノ子ちゃあん!」

もうジュノは楽しんで演技しているのだが、アイカは面白くないのでぷくっとなる。

「大丈夫だもん!首もとれないですよ!」

「まぁまぁ、さあ発射しよう!」

ヴェスタが二人を連れて、退避壕につれていく。

1.5mほど地面を掘りおろして、発射操作をする待避所を作っていた。

バージョンが上がり改良され、今では透明な風防まで備え、ちゃんと椅子とデスクも準備した。

「さぁ‥‥それではチームラウミナスの初有人(ジュノ子)打ち上げの瞬間ですよ!」

そしていつものように秒読みし、緊張のなか点火打ち上げされる。

ひゅごぉぉぉおぉおおおお!!

前回のロケットと違い、パルスジェットだけで浮き上がるので、VTOL機と同じような加速をしていく。

首を曲げて見上げる頃には一気に加速してぐいぐいと登っていった。

「はい!打ち上げ成功!」

パチンとハイタッチの三人。

「よし、モニターしに行こう!」

ジュノはたたっと走り出してスパイラルアークを目指した。

「ふふジュノ、本当に楽しそうだね」

視線をあわせクスっと笑いあうヴェスタとアイカ。

今回も夕方には戻って来る予定なので、遅いランチを今から作るのだった。

わくわくとした気持ちと共に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ