【第152話:慈愛の女神の聖騎士(突撃仕様)】
挿絵をちょっと直しました!(バランス調整)
ぼひゅぅぅん!
VTOL機が高空から船団の前に降下してくる。
垂直降下ではなく、急降下爆撃のコースだ。
どどん!どどん!
ドドドドバァァアアン!!
88mm滑空砲の4連射を急降下しながら放ち、機首を起こしてフライバイ。
旋回降下でピタリと爆炎を背負って宙に止まるVTOL機から、拡声された叫びが放たれる。
『全船停止して話をお聞きなさい!次はあてますよ!』
ヴェスタの叫びが雷鳴のように轟いた。
そんなこと言っても帆船ですよこっちは、と思ったかどうかかなりの練度で、停止する帝国艦隊。
旗艦らしき大型艦が進み出てくる。
ジュノとアイカが降下し、パルスジェットで乗り込んで行く。
とんとん
もうジュノもアイカも慣れたもので、軽やかに前甲板に降り立った。
一段高いそこに陣取り、ながめ下ろすとまるで準備して来たかのように整然とひれ伏す一団。
「ようこそお運びいただきました、聖騎士様がた」
一歩分前でひざまずいていた男が挨拶してくる。
アイカは怒られないように大人しくじっとしている。
式神は展開済みで、2機がアイカの周りをくるくるしている。
2機は船団の監視で高度500m程を巡航旋回している。
その気になればアイカ一人で30秒もあれば艦隊を全滅できるのだった。
「すなおでよろしい!では使徒様のおいでだ‥‥失礼のないようにね」
ジュノは長大なスマートライフルを、槍のように立てて持ち告げた。
アイカとジュノがひざまずいて中央を開けると、そこにフルアーマー女神の使徒ヴェスタが降下してくる。
ズン!
ヴェスタはまだパルスジェットの降下に慣れていないので、結構な迫力で着地した。
えっへんのポーズで立つヴェスタ。
もうなんだか慣れてきてしまって、男たちをひれ伏させるのが気持ちいいまであるヴェスタだった。
「お?シャラハ将軍、ひさしいな、おいでおいで」
ジュノが目ざとく見つけて2列めのシャラハを呼びつける。
くいくいと手でおいでとする。
膝でスリ出てくるシャラハが前の男と並ぶ。
「シャラハよ発言をゆるす、紹介するように」
「はは!」
もうなんかしもべのように扱うヴェスタ。
「恐れながら使徒さま、これなるは我らの取りまとめをしておりますカヴィールと申すものです、お見知り置きを‥‥」
それだけ告げるとすごすごと戻っていく。
「ただいまご紹介に預かりましたカヴィールでございます、将軍職を与えられ帝国海軍を取り仕切っておりますよろしくお願いいたします」
シャラハより大分年上の落ち着いた壮年の男だった。
黒髪は西方では珍しいが、肌は白く瞳は水色だった。
見事な黒いひげも生やしており、上品に整えてアゴを覆っている。
「端的に申します、条件を飲んでいただけたら、砂漠を超える直通の交易路を準備してあげられます‥‥サンガマラ王国から帝都アズラントまでの直通ルートです。それで全軍撤退してください」
ヴェスタは駆け引き無しで、ズバっと提案。
キャリアウーマンのようなキビキビした話し方になっていた。
ざわざわと後ろの者たちが騒ぎ出す。
むりだろとか、イヤもし可能ならとか結構好き勝手に話し出す。
ガン
「コホン」
ジュノの咳払いとスマートライフルの銃把が甲板を打って、シーンと静けさが満ちた。
ガシャとヘルメットのフェイスガードがあがり、クリアのバイザーごしにキリっとしたジュノの顔が見渡す。
恐らくシャラハから報告されているのだろう、ジュノとアイカの実力に震え上がる一同。
「砂漠の中央付近に水を満たすオアシスを差し上げられます‥‥それで砂漠を越えられれば、帝国はマリヤパトナもラマディン=ラカンラマンも通らずに東方との交易が可能となりませんか?」
ヴェスタが確認の意味で細かく説明。
カヴィール将軍が顔を上げる。
「発言をよろしいでしょうか?」
落ち着いたバリトンでとおりの良い声をかけるカヴィール。
ひざまずいているのに、見下されるような迫力がある。
「どうぞ‥‥」
ヴェスタが答えると、にっこりと笑顔で話し出すカヴィール。
「おそれながら、砂漠には道もございませんので、補給が出来ても荒野を抜けるすべがございませんな」
カヴィールの声には丁寧だが、へりくだる気はないぞといった気迫が有る。
「‥‥ペンデシンまでの街道も準備できるとしたらどうでしょう?」
カヴィールはにやりと表情をくずす。
「ペンデシンの奥‥‥砂漠の入口には恐ろしい魔物がいて通れませぬな‥‥」
ヴェスタはジュノとアイカをみやる。
ふたりとも小さく首を振る。
「どのような魔物なのですか?」
言わせたぜみたいなにやり顔のカヴィール。
「最強の魔物‥‥ドラゴンです!‥‥巨大な赤竜が砂漠への道を阻むので、帝国はペンデシンの奥地は手を付けない‥‥」
「それくらいわたしがプチっと狩ってあげるよ」
ジュノが鼻息荒く言い返す。
ふっと鼻で笑うカヴィール。
もう敬意は大分減ったように見える。
「聖騎士さまはオツヨイとは伺いましたが‥‥あいては魔物の王ドラゴンですぞ?見上げるような巨体にかなうものでしょぅかぁ?」
小馬鹿にした態度にカチンときたジュノの目線に冷気がやどる。
「‥‥ジュノ‥‥カヴィール将軍はお前の実力を知らないようですね‥‥すこしお散歩にお連れしなさい」
ヴェスタの視線にも冷たい温度がまとわれる。
あ、やばいっすよ、みたいな顔をするシャラハ。
カヴィールは余裕の態度をくずさない。
小娘になにができるのかなぁ?みたいな顔をしている。
「リョウカイシマシタシトサマ」
ジュノがマシンボイスのように平坦に話した直後に、ジュノが消える。
しゅんとカヴィールの眼の前に瞬間移動のようにあらわれ、むんずと首根っこを片手で掴む。
にんまりと笑顔になるジュノ。
「ちょっとつきあえよ!」
ぼひゅううん!
パルスジェットのフルパワーがたたきつけられ、シャラハ達残された将軍がボーリングのピンのように転がっていく。
キイイィイイィイイイイイン!!!
数秒で亜音速に達するジュノ。
どぉぉん!ばりばりばりばりぃ
旋回してきて音速を越えたのか円錐形のショックコーンを残し、今度は急上昇。
ごぉぉおといった音をのこして豆粒のように小さくなった。
きぃぃぃぃんずばぁああん!!
元の位置に戻りつつ急減速。
実はジュノのアサルトアーマーの周りにはUMSのG軽減フィールドが貼られるので、気圧も気温も変化は少なく、加速度Gも最低限だった。
ぺしゃん
ふにゃんふにゃになって転がるカヴィールには、あまり慰めにはならなかったかも知れない。
ぱんぱんと手を叩いてニコニコのジュノがもとの位置にもどり、アイカとハイタッチ。
パチン
「どうですか?うちの聖騎士の実力は?」
ヴェスタのいじわるそうな笑みも添えられて、かくんかくんと頷くカヴィールであった。
その後ろの方で、シャラハはひき肉にならなくて良かったっスね、と言ってカヴィールをとんとんと慰めていた。




