【第151話:慈愛の女神の使徒(決戦仕様)】
VTOL機に増槽を積んで、帝国艦隊を偵察しつつ補給基地に向かう。
朝一番で出発し、式神は4機ともアイカと共に出撃だ。
拠点にはマクラだけになるが、アイカはマイニング6台中1台のマクラを拠点に詰めて監視できるようにした。
アイカは新しいティア7義体の感触を試し、告げる。
「これ頑張ればあと6台くらいマクラ行けるかもです‥‥式神もあと2機いけるかも」
「すご?!」
「そんなに無理しないでいいよアイカ」
ジュノが驚き、ヴェスタは心配してしまう。
ヴェスタとしては式神を戦闘に従事させたくない。
アイカがアイ達を本当の子供のように大事にしているのを知っているし、なによりヴェスタもアイ達が大好きだ。
バックアップを取ってあるから死んでいいと、AIを扱う者はこのチームにはいなかった。
家族だと思い合っているのだった。
VTOL機の飛行高度は可能なら発見されたくないと、20000m程の位置を取っていた。
「見えたね‥‥思ったより進んでるな‥‥殆ど向かい風のはずなのに」
ジュノの目がすっと細まる。
カーゴに搭載したレーダー類の操作をアイカからもらい、アイカは解析に集中する。
「補正入りました」
アイカが能力いっぱいに使い演算処理する映像は、この高度から見たとは思えない精細さで描かれる。
横に衛星からのデータも付けられて、ジュノはしっかりと確認する。
「‥‥早ければ3日ってとこだね。帝国艦隊有能だな‥‥かなり速い」
タイムラインも確認して、ジュノは開戦までの時間を試算した。
移動速度から練度まで想像された。
「‥‥こちらも急ぎましょ、時間を無駄にできない」
ヴェスタはスロットルを開けて、増速する。
少しづつ高度も落としながら加速していった。
補給基地でVTOL機を満タンにし、王国艦隊を目指す。
「ラヴァナドゥ連邦は思った通り軍をだしている‥‥帝国とつるんでいるんだよ」
ジュノが補給基地に行く途中で、陸上に戦線を見つけていた。
アヤンタ王国は殆ど戦力を割けていないので、ここでも10:1で負けている状態だった。
アイカが政治的見解も説明する。
「連邦は川まで国境線を戻したいのです。もともとアヤンタに寝返った街のせいで、今の国境となっているようです。奪還が悲願だと書かれていますね」
なるほど地勢的にそうだなとも思う3人。
アイカがさらに補足。
「これアヤンタ王国だけが西方から来てる王家なんだ‥‥東方では孤立している?」
「まあ‥‥人種も違う感じだものね」
ジュノが皮肉そうに言う。
リステルの事を思い出しているのだ。
「みえたよ‥‥」
「了解」
「りょーかいです!」
アイカとジュノが後部カーゴに向かう。
今回はジュノ・アイカで先行し、ヴェスタも降りる予定だ。
高度を落としていき、500m程度でホバリングに入る。
「アイちゃんあとよろしくね!」
「はーい、ままをよろしくねヴェスタ」
にっこりと綺麗に笑うヴェスタ。
アイ01は心配そうに手をふった。
ごぉぉとジェットを響かせて、大型の艦艇に降りるジュノとアイカ。
よく見れば先日こわした船だった。
とんっと今日は静かに下りた二人は、武器を向けて周りを牽制する。
「はい、えらいひとおいで。また壊さないと出てこないかな?」
ジュノとしてはかなり優しい対応と思っている。
船員達には災害か天災だと思われていた。
蜘蛛の子をちらすように逃げていき、真っ白い船長服の男が押し出されてくる。
すごくイヤそうだが、3人がかりとかで生贄のように差し出された。
アイカもにっこりと笑顔を向けたのだが、「ひぃ」などと悲鳴があがる。
ちらと二人は見交わし、すっと膝をつく。
察した船員も船長もははぁと平伏する。
上空から式神02の黄色ライトが煌々と下りてきて、そのなかに白いシーツで作ったなんちゃって女神様使徒のヴェスタが、光り輝きながら降りてくる。
ブーツとか外装がゴツいのでアーマード女神の使徒になっている。
とんっと降り立つのは完全武装の慈愛の女神使徒ヴェスタ。
ごついカノンポットを両手保持して降臨した。
2.12mmの天罰が1分間に2000発降り注ぐ神器だ。
「ところでさ‥‥あんたこないだもいたよね?名前は?」
ジュノが立ち上がって、白服の船長に訊ねる。
アイカもヴェスタの横に移動し、式神を2機展開し守る。
「ははぁ!ナラインと申す者で、将軍職を持って海軍を任されております!使徒様」
平伏したままヴェスタに名乗る。
アイカはしらなーいといった顔。
「ナライン将軍おもてをあげよ‥‥使徒様からお言葉が有る」
ジュノがそれっぽくすましていい、ヴェスタの横に戻る。
今日も片手でスマートライフルの長大な銃身を掲げている。
未だに式神02の黄色ライトが照らすヴェスタが声をかける。
「ナラインよ、よく聞くのです。本日中に西進し、国土をお守りなさい‥‥存じていますね?」
ナライン将軍はもちろん軍議で何度も出たので知っているし、西部の将からは援軍の要請が来ていた。
「はは‥‥御心にそいたいのですがぁ‥‥ここも守らないといけないのですます」
タラリと冷や汗のナラインはちらちらとジュノとアイカを見る。
乱暴されそうと恐ているのだ。
ジュノの眉がぴこんとあがる。
ああん?みたいな顔になる。
「ヒィ」
また平伏して頭を下げるナライン。
「この地に災いはおこさせません‥‥帝国の船はわたくしが止めてまいります。ラヴァマドゥ連邦は関知しませんので、そちらで対応なさい‥‥以上です」
だんだんと恥ずかしくなり、普通っぽくなるヴェスタ。
ちょっと頬も染めていた。
目を閉じて手を合わせるのは必須だろうと、アイカとジュノがごねるので、帰還のポーズになるヴェスタ。
どひゅううとジェットの音も高らかに使徒さまがお帰りになっていくのだった。
アイカもちらりと周りを監視して、ヴェスタがカーゴに入ると飛び立った。
ジュノは最後にナラインに一言。
「わかってるだろうけど‥‥逆らうと良いことないよ?」
やさしいジュノの微笑みが、破壊神のお告げに聞こえるナラインは額を甲板におしつけるのだった。
「ははぁあ!!」
どひゅううとジュノも去ると、ちらちらと見て、いなくなったと確認できると、全力のため息を付くのだった。
「ふはぁああ‥‥もういゃなのだがぁ?誰かかわってよ将軍?」
涙目のナラインは国王の命令など、ほっといて沿岸に向け進路を取るのだった。




