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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第15章
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【第150話:ヴェスタのターン】

1時間後に再度集まって相談するヴェスタ達。

「まず‥‥式神は引き上げましょう」

アイカとジュノにヴェスタの提案。

アイカはジュノを見る。

「そうだね、これ以上監視しても何も出来ないし混乱するだけだよ」

ジュノも気持ちを切り替えたのかスッキリした顔だ。

「アイちゃんも大変だしね!」

ジュノはにっこりとそういう。

ヴェスタもにこりと笑うのでアイカは帰還指示を出す。

「わかりました‥‥通常シフトに戻しますね」

「うん、衛星からの画像だけで進めよう」

ヴェスタは身の丈をしっかりと思い出している。

「ちょっと考えてみたのだけど‥‥双方に外交で収められないかお願いしてみようと思うの‥‥おかしいかな?」

ジュノもアイカもちょっと意外そうにうなずく。

「うん‥‥停戦を勧めるということ?」

ジュノの質問だ。

「そう‥‥双方の責任者を訪ねて、引いてもらうようにお願いする‥‥」

アイカもジュノもスッキリしない表情。

「あのね‥‥」

ヴェスタはちょっと淋しそうに話し出す。

「このままだと沢山人が死ぬのだと思う‥‥こないだ楽しんだマヤカランの街だって‥なくなっちゃうかも」

あっというアイカの表情。

ジュノは困った顔。

「よほどの好条件じゃないと聞いてもらえないよ‥‥戦力比がひどいもの」

現実的なジュノの意見にヴェスタはにっこり不器用なりに笑う。

「リステルはどうやって利便を引き出そうとしただろう?」

ヴェスタらしくない持って回る言い方。

ジュノもアイカもちょっと考えれば想像はついた。

「‥‥負けそうなほうに持ちかける?」

アイカが自身なさそうに言う。

「私もそれしかないかなと思う‥‥今の状態なら王国だね」

ジュノは無表情に続ける。

「リステルはそして帝国軍を撤退か‥‥殲滅するまで攻撃する気だった‥‥同じ事をするの?」

ジュノは同じことではないかと言って、ヴェスタに問いかける。

ほっといて死ぬ以上に自分で殺すことになるよと。

ふるふるとヴェスタは首をふる。

「また‥‥女神様のお名前を借りようと思う‥‥王国が止められたら、帝国にも同じ外交をかける。神罰がくだるよと‥‥それで引かないかな?」

「むりだよ‥‥そうして帰ったら責任者達は死罪だよきっと‥‥もっと酷いかも知れない‥‥」

ジュノが即座に否定した。

この時代には死罪を超える罰があり得るのだ。

「こないだ将軍が引いたのは教会主導の遠征で、そっちに文句を言えるから‥‥今回は国を上げて軍部が動いていると思う‥‥それを決めた人たちも処罰されるよ。大金をかけて遠征して、何もせず戻るなんて軍人は選べないんだよ‥‥」

悲しそうに辛そうに話すジュノ。

理屈と知識ではそうだと思っていても、ヴェスタを否定し嫌がる事を言うのは辛いのだ。

ヴェスタは眉を下げながら、拡張マップを出す。

「ここにサンガマラ王国という国があるわ。砂漠の商人が作った国」

ヴェスタはマップの中に記載された国名を指す。

「帝国と陸路の貿易で成り立っている砂漠のほとりの国だわ」

ジュノとアイカが確認したのを見てつつんとして線を引く。

地殻の中を通せば地表に張り付く線でルートを示す。

「帝国は海路の貿易で利益がどうしても少ない‥‥距離もあるし、ラマディン=ラカンラマンの海峡でも関税を受ける」

そうしてヴェスタが描いたのはサンガマラ王国からヴァルサール帝国帝都アズラントを結ぶピンクの線だ。

「これが現在通されている陸路の交易路なの。アイカの買ってくれた図鑑に有った」

アイカも一緒に確認したのかうんうんとしている。

アイ02もうんうんとするのは、アイカとヴェスタと共に見たのであろう。

ジュノも興味をもって確認する。

「この山越えが50kmくらい続く部分が難所らしく、大きな荷物を渡すのは難しいそうなの」

ヴェスタが地図の線を指さし説明。

大陸中央の巨大山脈の合間に通された山越えのルートなのだろう。

立体マップで横から目測しても、標高1000m以上の高地を通るようだ。

「これどうしてこっち行くのかな?大河を目指したのかな?」

ジュノの質問にはアイカが答える。

「河川を利用もなのですが、そのまま砂漠を越えるのが彼らでは難しいのです。この山中に入る手前で1000km、ここから砂漠を越えるのに500km以上あります‥‥水が補給出来ないので山を越えるようです」

アイカがぺらぺらと早口で教えてくれる。

ちょっとにこりんとするのは、知識を活かせるのが嬉しいのだ。

うんうんとジュノもヴェスタもアイカの説明に納得。

「なるほど補給問題か」

ジュノは無理にルートが引かれる意味を理解した。

ヴェスタが二人に頷き新たに線を引く。

つつんすいいつつんでまた地表に線を引く。

今度はオレンジ色で引いていき、たぶん最短距離はこれといったルートを引いた。

その線はかつて、帝国に行くときの燃料補給基地を作ろうと予定した地点を通った。

「あ‥‥」

「なるほど?!」

ジュノとアイカも気付いたようだ。

「そうなの‥‥前に調べていて、ここに補給基地を作ろうと思ったのは、ここの地下に水脈になる地底湖があるからなの。井戸を掘る予定にしていたわ」

ジュノとアイカがぱぁと理解を示す。

「なるほど!そこで補給可能なら、こちらのルートも有りえますね」

「そうだね‥‥何だったらそこに町をつくれる支援をしてもいい‥‥そういうこと?」

ジュノは更に先までを理解する。

「この新しい交易路を代償に軍を引いてもらおうと考えたの‥‥私達の力ならルートの整備すら手伝えると条件をつけてもいいかなと‥‥なにしろ慈悲の女神の使徒だからヴェスタは」

にっこり笑顔のヴェスタに、ジュノもアイカもついに笑顔になる。

アイカは嬉しそうにさらに説明する。

「そもそもこの現在のルートはコストが高いのです。エルダヴァスカ=ドレヴァスと帝国の町を経由し、川を抑えているマリヤパトナ公国の通行税がかかります」

ジュノもヴェスタも明るい顔になる。

「そうか‥‥こっちの新しいルートなら帝国は丸儲けにできると‥‥」

ジュノの言葉をさらにヴェスタが補強する。

「ここにあるペンデシンという帝国の街から先は船も通せる川になるの」

ジュノもアイカも十分な手応えを感じた。

「いいかも!」

「はい!素晴らしいですヴェスタ!」

アイカにぽむんと抱きつかれて、てれてれとするヴェスタ。

「こういった技術の供与が‥‥戦争を減らしてくれないかなって思うの」

ヴェスタは至って真面目にそう願った。

そう願える心を持っているのだと、ジュノはなぜか誇らしい気持ちになる。

アイカも嬉しそうにマップをぐりぐりと見て精査していた。

ジュノもヴェスタを抱きしめる。

ひしと抱き合う二人の間には、もうわだかまりも不安も無く、希望に頬を染めるのだった。

進んでいけるのだと確信して。



挿絵(By みてみん)


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