【第149話:偵察分析考察推測想像連想恐慄】
「南方植民領地に動きが有りました。ちょっと変なんだけど‥‥」
アイカがお昼の報告で話し出す。
「首都沖の終結地に向かわず、ウルヴァシャックから首街区カルサリクへ船が向かったの」
ジュノとヴェスタにお昼のパンとグラタンを配膳しながら首をひねる。
ジュノがアゴに指を当てつつ言う。
「一回集結する?にしては無駄が多いかな‥‥」
海流としても不利な移動だ。
基本あの海域は北東から南西に流れる大きな海流が有るので、わざわざ動きにくい位置に集まるのは愚策だ。
北に向かうのに集まるならサラディク沖が好ましい。
ヴェスタも質問する。
「規模はどれくらいなの?前は中型船1小型2だったかな?」
前回の海戦終結後、帰投する船舶の所属を確認してあった。
ウルヴァシャック所属は3隻だけだった。
「中型船が5小型船4です‥‥あぁ停船したようです。‥‥これではまるでカルサリクの港を封鎖する位置ですね」
ジュノが表情を変える。
焦りをにじませる胸騒ぎの表情だ。
「映像だせる?アイカ」
ヴェスタも気になってジュノの後ろに行く。
「2Dなら‥‥画質も期待しないでね‥‥はいこれです」
そういってジュノの前に拡張表示された平面の画像。
かなり上空から撮影されたのか、拡大され処理された雰囲気がある。
「‥‥これおかしいね‥‥帆船じゃない‥‥回転砲塔が乗ってる‥‥新兵器?」
処理されている小さな船影をジュノが見極めた。
「アイカ‥‥近寄ったらあぶないのかな?もう少し詳細なのほしいな」
アイカはちょっとの間を開ける。
「うん‥‥きました更新します‥‥さっきのが高度2000mで、これは500m程度に一回下ろして戻しました」
式神を降下して撮影させ、元の位置まで上昇させたアイカ。
映像は同じ画角同じ大きさだが、解像度がぐっとあがり船上の人影まで見取れる。
「これって‥‥」
ヴェスタも異常に気付いた。
「鋼板を貼っているね‥‥やっぱり三連装回転砲塔だ‥‥装甲もされている‥‥一隻に砲塔が3つ乗ってる‥‥これじゃあ近代の軍艦だよ‥‥時代が違いすぎる100年どころじゃない進化だ」
ジュノが詳細を読み取った。
ヴェスタとジュノが視線を交わし頷く。
「リステルだね‥‥」
「技術を広めて作らせたんだ‥‥この船はウルヴァシャックから来た‥‥あの島にいたんだリステル」
かつて潜入もしたのだった。
ヴェスタ達が街に行ったのはリステルがマヤカランに行っている間であった。
その時点ではまだ、リステルは街に何もしていないので気付きようがなかったが、船はこの頃から作られていた。
アイカは衛星のデータもマップに重ねていく。
不鮮明だが近海の船舶が全てのってくる。
ジュノは全体図と拡大図を見比べ、確認していく。
ヴェスタもアイカもこうなってくるとジュノに任せる。
「‥‥アイカ、こっち側に帝国ー王国の海図もちょうだい」
アイカが指示に従いジュノの周りにデータと地図を貼っていく。
「アイカこれ全体のタイムライン揃えて遡れる?」
アイカは少し間を置いて返答。
「一昨日までだよ?」
「そうそう5分くらいにして」
逆回しで戻していくと、帝国艦隊が止まったところで全体も止まる。
「‥‥やばいなリステル‥‥どこまで考えてあるのかな‥‥」
「じゅのぉ‥‥」
ヴェスタが意味がわからなくて困り顔。
うんとジュノが頷いて説明してくれる。
こっちより正確な監視体制を持っていること。
こちらが騒ぐ前からリステルは動いていたこと。
式神を送った直後には港を出る準備をして、朝日と共に出港していること。
南方植民領地はもう王手にかかっていること。
王国と帝国の海戦に介入する気だということ。
「そういったことが見て取れる‥‥監視の技術も、仕掛けるタイミングも完璧だよ‥‥」
ジュノは苦笑い。
「そして、容赦がない‥‥帝国艦隊も王国艦隊も生かして返す気はないね‥‥それが可能な戦力を持っているんだわ‥‥この船なんてスケープゴートねきっと」
ジュノの深読みはリステルを追い越してしまう。
そして追い詰められたらおそらくマナミがそれをするので、正解と言ってもいい。
「普通に考えたら、大分無理があるタイミングだけど、仕掛けていた‥‥年数をかけた自然な侵略と、一気に仕掛ける今回の戦略‥‥両方考えてあって帝国の動きをみて一気に舵をきった‥‥そう見て取れる」
ジュノの顔色が悪くなる。
リステルの戦略眼に恐れをいだいたのだ。
ヴェスタも感想をのべた。
「私達とちがって、何か解ってから考えているのじゃないってこと?」
「そゆこと‥‥1手も2手も先を考えてなきゃ、動けないタイミングだ」
そして後手後手なのは解っていても、ヴェスタ達は今から相談して考えるのだ。
方針が決まる前にリステルは南方を取りまとめてしまうだろう。
「‥‥まるで戦略向けのAIみたいな人ですね‥‥リステルは」
アイカの冗談に、笑いは生まれず真剣にうなずかれてしまい、アイカも青ざめることとなった。
ヴェスタも恐ろしげにマップを動かし確認する。
「リステルは‥戦略だけでなく外交も得意なのだわ‥‥南側の3街は無血で取っているのだもの」
ヴェスタの気付きで、ジュノもアイカも改めて恐れた。
気になって確認に行ってもらった式神の映像が出る。
ウルヴァシャク近郊の上空からの映像だ。
そこには風車が並ぶ広大な農地と、治水され水車まで動く灌漑計画された河川と湖。
街の区画整理や拡張方向にも、すでに近世か近代に近い都市計画が見て取れた。
ぞっとする3人は映像から目が離せない。
「わずか一月半程度の期間で‥こいつ‥‥本当に人間かな?」
ジュノも冗談のようなことを真剣に話すのだった。
リステルは政治家としても行政官としても優秀すぎた。
いったん休憩だよとヴェスタが決めて、おのおのくつろいだ。
アイカは戻っていたアイ02と図鑑を一緒に見ている。
ジュノは少し走ってくるといって、外に行った。
ヴェスタはスパイラルアークの操縦室に来ていた。
パイロットシートに座ると、すっと気持ちが落ち着いた。
(そこまで‥‥考えておかなければいけない物なのだ‥‥街を治める‥‥国を治めると言うことは‥‥)
ヴェスタにはもちろんそんな義務はなく、3人だけのスタッフでプロジェクトを勧めるための責任者だ。
リステルのしていることは、貴族や行政官、国王や大統領の仕事なのだ。
それでも歳も変わらない少女の力を見せられて愕然とした。
同じリーダーとして格の違いを見せつけられた気分だった。
ふぅとため息をついたヴェスタはにっこりと下手くそに笑う。
「何をいまさら。私にはジュノとアイカがいる‥‥私なんてオマケみたいなものよ!」
いつもジュノとアイカに助けられてここまで来たじゃないかと。
そう腑に落ちて、納得する。
「すすもう‥‥」
ただそれだけがヴェスタが決めたこと。
どんなに間違っても、迷っても進むと決めてここまで来たのだと。
その瞳にはもう惑いはないのだった。
タイトルは本当に、ただただ読めないものをつけたかったのです!ごめんなさい




