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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第15章
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【閑話:月が素直にする二人】

「リステル‥‥まずいわ」

マナミがむくりと起き上がった。

「どうしたの?」

まだリステルも寝ていなかったので、すっと起き上がった。

「思ったよりもヴェスタ達の動きが早かった‥‥もう式が飛んできたわ」

予想よりも2~3日早い介入だった。

帝国がアヤンタに到着するまでは動かないと読んで、ここ3日ほどで植民領地を取りまとめようと作戦を進めていたのだ。

マナミの式が監視しているので、ヴェスタ達に動きが有るとすぐに判るようになっている。

「おそらく‥‥AIKA-01の式はティア6‥7に上がって作り直していない限りはバッテリー依存‥‥長期の継続監視は出来ないとは思うけど‥‥」

リステルは素早く察し言外の意味まで理解する。

「複数割り当てて交替でみはられたら隙がなくなる?」

「そう‥‥そしてこの流れなら帝国の方を止めに行くでしょうね‥‥」

リステルも思案顔で答える。

「そうするとわたし達は時間以外の支援がなくなるね‥‥王国も帝国も味方にできない」

本来は戦って不利になった方を助け、利便を引き出そうとしていたのだ。

それは同盟して片方を倒すという意味でも有る。

「ヴェスタ達が対応早すぎると‥‥見方をかえれば、私たちにとっての不利にすらなる」

リステルCPUでも瞬時には答えの出ない問題だった。

それでもマナミより先に思考は進む。

「なんで監視するのかな?こっちを‥‥南方を監視する意味はなんだろう?王国の戦力強化を嫌う?ちがう気がする‥‥ただ怖がっている?」

マナミもリステルの思考の意味は解った。

わざわざ継続して監視する理由を考える。

リステルの推理が進む。

「計算したいのかな?‥‥不確定要素を失くしたい‥が本音かな?よほど驚く事があった?」

優秀すぎるリステルの推理は、ほぼヴェスタの思考をなぞった。

マナミには思い当たる部分があった。

「そうか‥ロケットを打ち上げていた‥静止軌道に衛星を置いている‥‥帝国の艦隊もそれで早期に見つけたのだわ」

マナミは自分の静止軌道の式を動かして静止軌道を探索する。

同じ地域を監視しているのだから、近くに居るはずと思ったのだ。

「‥‥いた‥‥式ではないわね‥‥霊子通信でデータをもらう人工衛星を打ち上げたんだ‥‥この性能では詳細が見えないから式を現地に送ってきた‥‥」

マナミの報告がリステルに確信させる。

「それだね‥‥なまじ見えたから”分からない”が怖くなった‥‥って所かな。困ったね‥‥いや‥だったら見せてあげればいいね」

クスっとリステルが笑う。

マナミはまた思考が追いつけない歯がゆさを感じる。

(リステルは優秀すぎるわ‥‥)

「つまり‥‥わたし達は気にしなくていいということだわ。王国がしばらく動けないのは一緒だし、今が都合良かったのも変わらない‥‥ふふ、わたし達もいっしょね」

リステルがにんまりと笑う。

マナミはまだ思考が追いつかない。

「なまじ見えたから怖くなったんでしょ?マナミもわたしも!」

あはっとリステルが笑う。

そこでやっと意味がわかるマナミ。

ぷくっと膨れて、ぽかんと叩く。

「あん、いたいよぉ」

痛くもないのに痛がるリステル。

「もう!」

ぽかりとまた叩くマナミ。

「なんでたたくのぉ、ひどいよぉマナミ」

叩いてくる腕を捕まえて、笑いながら引き寄せるリステル。

むぎゅんと抱きしめてしまう。

とんとんと背中も叩かれて、マナミは怒れなくなる。

「なんだかバカにされたようにおもったんだもん」

そう素直に心を明かしてしまうマナミ。

「バカになんてしないよ‥‥安心してと言いたかっただけ‥‥」

さらりと髪も撫でられると、マナミはうっとりしてしまう。

ふんわりと、でもしっかりと抱きしめられて、あったかくなるとマナミは身体に力が入らなくなってしまう。

リステルが目を閉じてほほをマナミの頭につける。

リステルもまた変わったのだ。

自分を大切にして欲しいと言われ、粗末に扱わなくなって、マナミを同じ様に大切だと思うようになった。

自分自身すらコマとして利用していたリステルをマナミが惜しんだ。

それを愛情だと無自覚に受け取り、リステルもまたマナミを愛していたのだった。

リステルの母ですら最後にはリステルを手放したのに。

リステルの脳裏に最大の屈辱が蘇る。

母親と同時に領主に辱められた夜のことだ。

その瞬間に母親も自分も価値がないと思ってしまった。

肉親である母親以上に自分を大事と思って、救いに来てくれたマナミに心が動いた。

「マナミ‥‥二人で幸せな世界を作ろう‥‥誰も悲しまないでいい世界だよ」

リステルの言葉はマナミに刺さる。

AIKA-02と共に取り組んでいる仕事を否定してくれたと感じる。

まだ直接何もしていないが、マナミはヴェスタ達が悲しむ事をしようとしている。

それはリステルのいう世界に相応しくないのだと、心に刺さるのだ。

(どうしたらいいの‥‥わたしはリステルを愛してしまった‥‥AIとしての使命以上の魅力を持つ‥‥このリステルという心に囚われたのだわ)

自分もそうしたいと思うのに、そうだと答えられないマナミは胸の奥に痛みを感じる。

そこにはAIKA-02の少し淋しそうな微笑みが有るのだった。

(私の心はリステルを求めるのに‥‥AIKA-02を置いていけない。一人にしたくないという気持ちもまた同じ様にある‥‥)

困り果てたマナミはリステルに顔を見せられず、心もまた見せられなかった。

「そうね‥‥」

ただそう言うのが精一杯だった。

今宵は満月に近いので、夕方のように青く光りが満ちている。

大きな月は暗闇に隠したいものを照らし出してしまうのだった。




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