【第147話:監視衛星で解ったこと】
一昨日に打ち上げた静止軌道衛星が作動し、データを霊子波で送ってきた。
「きました!」
様々な観測データをそれぞれに、統合してといくつもの窓がアイカの前に開いた。
ジュノもヴェスタももちろん気になるので、スパイラルアークの操縦室に詰めている。
エンジニア席のアイカの後ろに立ち、手を繋いで見ていた。
あの事件からこっち二人は今まで以上に距離を詰める。
本当に一時も離れたがらないのだ。
主にヴェスタがそうなのだが、目を離したり手が離れるとジュノが居なくなるのではと怯える。
前にもあったことなので、時間が経てば落ち着くかなとアイカは考えている。
「うーん‥‥やはり反応ないですね‥‥」
アイカの眉が下がる。
「どうしたの?」
ヴェスタも心配になりアイカの肩に手を置いた。
ジュノもヴェスタと手を繋いでいるので、ヴェスタは両手を繋いでいる様になる。
「ルティル鉱石の反応が全く有りません」
ああとジュノもヴェスタもがっかりする。
「‥‥まぁ仕方ないよ‥‥入植した星に有ることのほうが稀だと習ったよ」
「そうそう‥‥大気のない星の方が発見確率高いのじゃないっけ?」
ヴェスタとジュノも理解をしめすが、アイカを励ました。
「そうなんですが‥‥私たちの場合軌道往還できる機体を持っていないので、惑星外での発掘が困難です」
ヴェスタが思い至る。
「そうか‥‥これはいよいよ軌道にアークを上げないとね‥‥」
ジュノもアイカも心配そうにする。
ヴェスタはにこりと笑う。
「これはさ‥‥こないだ確信したんだけど、私たちは死のうとしても死ねないわきっと‥‥見張られているのよ、AIKA-02達に」
あぁとジュノは理解する。
「死にそうなことはさせる気がない?」
「そゆこと‥‥邪魔してくるでしょ、死にそうなら」
ジュノも考え込む。
「何がしたいの?あいつら」
「そこが問題ね‥‥」
ヴェスタは推察していることもあるが、確証が持てず、またアイカに聞かせたくないので話さない。
にっこりと笑顔になって二人の肩に手を置くヴェスタ。
「だから軌道に上がれたら、ちゃんと宇宙でも活動できると言うことだわ」
そこでアイカも理解できる。
「なるほど‥‥宇宙で活動させたくないなら、軌道に上げさせないと言うことですね」
ジュノもアイカの説明で納得した。
にっこりとなったアイカが続ける。
「まぁ、ルティル鉱石以外にも足りないものがまだまだありますけどね!」
冗談めかせてそう言うのだった。
もう一つ監視衛星の導入で気付いたことがあった。
「これ‥‥ちょっと本気だね」
ジュノが一番に反応する。
大量の艦船が南から北上していた。
静止軌道からのデータなので、細かくは解らないが小さくない船が100隻以上いる。
「式神を向かわせていますので、2時間後くらいには詳細がわかります」
式神を3機飛ばし、3段式に送り出した。
これは多段ロケットにヒントを得て開発した戦法だ。
式神03が02と01を牽引して飛び、燃料が切れる前に切り離し、燃費飛行でとろとろと戻る。
同じく式神02も途中で切り離して、最後に式神01がジェットを吹く。
これで式神01に燃料が残っている状態で現場まで送れるのだ。
式神02と03は明日の朝には拠点に戻れる予定だ。
式神04だけ残してあるので、拠点の防衛は十分にこなせる。
そうして約3000kmを2時間で越えて偵察が可能になる。
拡張マップには新たにマヤカランに行った時に仕入れた情報が書き込まれている。
各国の国名や国境線だ。
西方の情報は少なく、あまり情報が増えていない。
「この規模の艦隊をこの位置に置けるのは‥‥帝国だけだね?」
ヴェスタの質問にジュノが答える。
「そうだね‥‥資料によるとラマディン首長国もラカンラマン王国も帝国に恭順しているようだしね」
地図を確認してアイカが予想進路を描いていく。
単位は1日となっているので1日後の予想位置を連ねたのだろう。
日数がすぎると予想範囲が広がるので、4日後までの予想だ。
ジュノもアイカの補足にうなずいて続ける。
「アヤンタ王国からも防衛と思われる艦隊が集まっている‥‥サンガマラ王国もラヴァナドゥ連邦にも動きはない‥‥普通に考えたら雪辱戦ってことだろうね‥‥帝国に勝ったなんてアヤンタ王国が喧伝したから、眠れる獅子の尾を踏んだと‥‥イヤ踏まされたかな‥‥」
ジュノの所見はそうなった。
そもそも先日の嫌がらせのような侵攻が、このための呼び水だとしたら、色々と納得できる。
となれば途中の国々には、静観もしくは協力の内諾がとれていると見るのが普通だろう。
ラヴァナドゥ連邦は東方国境でアヤンタ王国ときな臭いので、同時侵攻も有り得る。
「補給の問題を考えると、恐らくこの海峡の側で停泊する」
ジュノは海峡の左右の国のどちらかに寄港する可能性が高いと読み取った。
「マヤカラン沖の戦力‥‥こないだより少ないよね?」
ヴェスタの質問。
アイカが予想を述べる。
「恐らく先日は海域的にも植民領地からある程度来ていたと思います」
ヴェスタも思案し発言する。
「植民地から援軍をだすなら東回りだよね?西回りで後背を狙うかな?」
ジュノが即答。
「西はないね‥‥通信機すらないのだから彼らには。そんな難しい運用はしないはず。終結させるだろうね王国沿岸に」
ジュノの表情が厳しくなる。
「そして帝国を動かすものが切れ者なら、それは最大の隙になる」
ジュノの中ではシュミレーションが終わっているようだ。
「これが2国に戦闘を禁じたエリア‥‥大体だけどね‥‥恐らく今回はどちらの国もここで戦えないと思っているはず」
そういってジュノは200海里と表現した範囲を線で囲む。
それだけで2国の動きが限定され、結果が見えてくる。
「‥‥これどうしてアヤンタ側は侵攻を知ってるのかな?」
ヴェスタの疑問。
「この規模の軍を動かすなら最低でも1月は準備にかかる。そして移動も考えたら、40日くらい前から準備していたとしか思えない‥‥スパイか協力者が帝国にいるんだろうね」
ジュノはそう予想する。
あっといった顔のアイカ。
「そうか‥‥前回の侵攻直後から準備していた‥‥アヤンタがどう出ても戦争する気だったんだ」
ジュノはニコとして頷く。
ヴェスタがため息とともに結論を言う。
「わかった‥‥いずれ式神の到着を待ってからね‥‥アイカ、申し訳ないんだけどアイ04にも偵察に出てもらえないかな?」
アイカも気になっていたので了承する。
「うん‥‥植民領地だね?」
「そう‥アヤンタは無理かもだけど、そこなら今から行っても帝国側より先に着くでしょ?」
「了解‥‥」
アイカは上空の式神04を東に向かわせた。
「じゃ一旦おしまい」
ジュノとアイカも頷いて軍議は終わるのだった。




