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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第14章
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【閑話:動き出す世界と二人】

リステルとマナミは積極的にウルヴァシャックを開発していく。

段々と支援する技術のレベルを上げていき、今では中世後半から近世に入りつつ有る。

広がった農地の中には風車が回り、河川にも手を入れ氾濫を未然に防ぎつつ水車も活用し灌漑を広げていく。

街の南側の部族達ともリステルは懇意でパイプが有るので、そちらにも農地を広げ、島の西岸の土地をたっぷり移転先として与えた。

山裾の天然ダム湖にも手を入れて、本格的な治水をし終えていた。

島の南側ではサトウキビやバナナなどの南側の島の特産品を大量に作付けている。

砂糖の精錬にも技術を与えたので、かなり高品質なものを作り商品化もしている。

買付にくる商人もぼちぼち増えているので、仕入れも楽になっていた。


領主の館も大分整ってきていた。

メイドは今見習いも含めて15名になり、その他に5名はマヤカランの男爵邸に修行に出している。

いずれあちこちの貴族に就職させ、地道な情報集めをしてもらう予定で育てている。

他にも将来家宰として家を任せる予定で家人も3人雇い勉強させている。

これには元からいた文官の中から教育係を抜擢していた。

晩御飯の時間はわりとリステルとマナミの二人で食べることが多い。

メイドもつかないので、マナミが主に料理をする。

リステルも一通り料理ができるので二人で作ったりもしていた。

今夜もそうして二人きりでご飯を食べながら密談を交わす。

なにしろ秘密の多い二人なので、余人を挟まず内緒話がしたいのだ。

決してマナミの希望だけではない。

「リステル‥‥もし可能なら軍をもっと大きくしてほしいの姉さんから要望があったのよ」

マナミは前回の依頼で役に立てなかったので、AIKA-02に負い目がある。

AIKA-02は気にしていないが、マナミが気にするのだ。

「そうなんだ?‥‥じゃあいよいよリステル軍を立ち上げますか‥‥水兵はそれなりに育ってると艦長から言われてたよ」

「前に言ってたフリゲートの増産ね‥‥現行の船体も砲塔だけ改修すればまだまだ行けるしね」

現在3隻分の船体を作らせていた。

何分技術レベルが100年も違うので、船大工は苦労しているようだ。

ただお手本がすでにあり、一度作っているので3隻はすぐ完成の予定だ。

今までと違い、金属装甲されるし、回転砲塔を備えた艦艇になる。

3連装24センチ砲を3機9門積み、今度は正面にも全砲塔で一斉射撃できる。

一発あたりの威力が4-5倍になっているので、砲数はあまり変わらないが、火力は倍に上がっている。

これが3隻新造され、現行機にも改修で同じ性能をもたせる。

帆船のフリはもう辞めて、蒸気機関で航行する。

燃料はチートの天然ガスだ。

火山の南側で採掘されている。

「でも‥‥また帝国が攻めてくるの?」

「そう仕向けるようね‥‥今回は軍の主導になるから、もっと強いのが行くよと言われたわ」

事前に攻めてくる陣容もわかるというチートなので、リステルに緊張感はない。

「ヴェスタ達はどうするんだろう‥‥」

リステルが警戒するのはむしろ、そっちだ。

「北岸をせめて王都まで攻め上るらしいから、場合によっては関わらない可能性もあるわ」

「ラウメン神聖国だっけか?に近づかず攻める気なんだ‥‥」

マナミはさらに重ねて情報を補足する。

「それに軍部が立案するから、こないだのような適当な攻め方はしないと。占領政策まで視点にいれた攻め方だろうと」

リステルにとっては対岸の火事くらいに思える話だった。

先日マナミに救出されて、リステルは考え方を変えた。

マナミの気持ちに答えて、自分も大事にする方針に切り替えた。

自分が緩衝材になり、緩やかに認めさせていく考えは捨てて、2年後を目処に独立するつもりで準備を進めていた。

今のアヤンタ王国にもヴァルサール帝国にも膝を屈する気はなかった。

リステルが思考を進める。

「場合によっては南方植民領地を取りまとめてしまうチャンスになるかも?」

独立の第1段階にして必須条件がそれだ。

こちらの大陸に王国を残していては独立などと言えない。

プランの中で最速のものは1年後には動き出すものもある。

「先日の帝国の侵攻でカルサリクとサラディク以外の都市はダメージが大きい。ウチが復興支援を出しているので、今は協力を引き出しやすい‥‥」

リステルの頭脳が最適を目指し回転し始める。

マナミも気付いて続ける。

「そうか‥‥アヤンタ王国が攻められるという情報だけで、バランスが変わる‥‥」

にんまりするリステルがうなずいた。

「これは‥‥チャンスなのかもね‥‥私たちの国を作っちゃう」

すっと表情を正すリステル。

「今もアヤンタ王国から派遣されている領主は、マナミがわたしを救い出してくれたような事を、当たり前にしている。この植民領地で笑顔なのはあいつらだけなんだよ‥‥」

マナミは先日の悲しい話を思い出し、ぴとっとリステルに肩を寄せる。

「‥‥私はリステルの味方だよ‥‥誰にももう奪わせない」

言っておいて恥ずかしいのか、リステルの目が見れなくなるマナミ。

そんな態度すらかわいいなと思えるリステルは優しい微笑みになる。

「ダルパシェとミルザーンはもうわたしの領地みたいなものだし、アズラミールも声をかければひっくり返せる‥‥サラディクは戦力的に問題ないし、首街区カルサリクだって力技でも抑えられる‥‥可能なら交渉でなんとかしたいけど」

リステルは一気に具体的な話しを出した。

マナミは脳内の拡張マップを操作して、情報整理し精査のうえ補足。

「十分実現可能だよ。もしアヤンタ王国が負けそうなら、認めるなら加勢すると言える」

リステルの声に皮肉そうな響きがたされる。

「もし帝国が不利になるなら‥‥そちらを後押ししたっていい‥‥後々にも恩義をかさに色々たのみやすい‥‥」

マナミはぞくりとする。

どこまで考えるのかと。

これと同じ様にリステル自身や家族もさらしたのだなと、二重にぞくりとするのだ。

言葉を継げず、ただ肩に当たるあたたかなリステルの温度だけを信じたマナミ。

(どうなったとしても‥‥私がそばにいるよ‥‥)

マナミはもうAIKA-02の指示でもリステルを見捨てられない自分に驚き、安堵する。

(ずっと一緒‥‥)

頬もリステルにつけて、顔を隠すマナミ。

思っていたよりもずっと真っ赤になってしまったから。


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