自白・中
「SNSで募集をかけて、話を聞いて『中絶をしたい若い女』を探しました。色々な事情があるんですね……仕事の為に子供が出来ると邪魔、不倫相手の子供を処分したい、援助交際で出来た子供をどうしていいか分からない、仕事での性行為で子供が出来た……こうなると、親を選べない子供が可哀想ですね。でも、最後の子は……塾で遅くなった時に乱暴されて子供が出来たって、不憫ですよね」
一番最後に殺したと思われる、京都の乾和香子の事だろう。彼は、アヤナを殺すために彼女の血を持っていた。
「匿名で……大丈夫、だから……無料で子供を処分してあげる、と言ったらのこのこ……って来ましたよ。『本人も殺す』、……は言ってないからでしょうね……ただほど怖いものはないのに……ファストフード店や喫茶店……睡眠薬、入り……飲み、物飲ませて、簡単……に、連れていけました……」
景光は、うっすらと笑っている。彼にとって、彼女たちは『家畜』と同じ感覚なのだろう。食べたいから、屠殺した。『同じ人間を食べてはいけない』という常識は、彼にとって無意味なのだ。桐生の言葉が蘇る。
――どの基準が『命』だと考えているのだろう? 牛や豚を他人に任せて屠殺させた肉を、食べてるじゃないか。工程を、自分で行っただけ――
「アヤナさんも、貴方が殺したのよね? アヤナさんは妊娠していないから、食べなかったのね? 彼女を殺したのは何故?」
桐生の言葉が頭を占めようとしたが、櫻子は無理やりそれを追い払う。
「あの……女、金……を落とし……流星さんに貢献したけ……追い詰めて、彼……美貌を台無し、にすると……た。それに、僕……『血を飲んでる』事……感、付いたみたい……、『ばらされたくなかったら、分けろ』と言って……です、よ…目ざわり……だったので……あ、んな醜い女……食べる、無駄……で……」
話す景光の様子が、おかしくなってきた。顔色は、もう青いどころではない。喋るのも大変そうに切れ切れになり、椅子を握り締めてようやく立っているように見える。
その時、スマホの電話のコール音が部屋に響いた。それは竜崎のものだったようで、慌てて取り出すが画面を見て切ってしまう。しかし何度もかかってくるので、彼はスマホの電源を落とした。
「お前は自分の身勝手で、妊婦八人もの女性を殺したんやぞ! へらへらしてる場合やないやろ!」
宮城が怒鳴るも、彼は宮城を見ない。櫻子と竜崎だけを見ていた。
「姫の血、……のん、だら……もっと……後ろの男……羨まし……なぁ……」
そこまで言ったところで、不意に景光は出刃包丁を持ったままバタンと大きな音を立てて後ろに倒れ
た。その隙に、篠原が流星に駆け寄り彼を抱き寄せて景光から離して、櫻子達の傍に戻って来た。流星は、驚きの表情を浮かべて微かに震えている。その流星を、櫻子が抱き締めた。流星もしがみつくように、櫻子に抱き着く。
「何で? 八人殺したって……なんでや、景光! それに、アヤナ殺したって……お前、ホンマに何言ってるんや……!?」
流星は理解出来ないと、櫻子に抱き着いたまま倒れた景光に向けて声を荒げた。宮城と竜崎は用心しながら、倒れている景光へと足を向けた。まだ彼は笑みを浮かべたまま、天井を見ていた。
「宮城課長!」
竜崎は、景光の下半身を見て思わず声を上げた。彼の股間から、血が滲み始めていた。それをを見た宮城も、驚いた表情になった。足で彼が握る出刃包丁を蹴り、離れた所に飛ばすと景光のズボンを降ろした。
「お前……! 篠原、救急車と応援呼べ!!」
宮城が、大きな声で篠原に怒鳴る。指示された篠原は、反射的に救急と曽根崎警察捜査課に電話をした。
「……まさか、自分の陰茎を切ってたの?」
流星を抱き締めたまま、櫻子は尋ねた。景光は下着の下に女性が月経時に着ける生理用ナプキンを挟んでいた。その下に陰茎の盛り上がりが見られない上に血の多さで、宮城は眉を顰めた。
「……多分、切ってます」
「……最後、の……流星……為に……もう、妊婦の……血、……たいば……ん……なくなった……か、ら……」
その言葉に、全員が凍り付いた。そうして、先ほどまで流星が口にしていたカレーの皿に視線を向けた。




