戦闘訓練、その後
本日一話目です。
「いや~、まさか大型アンドロイドがこんな事になるなんて」
見た目が十字架の墓標のようになってしまったロボットを見て、南雲は関心しているのか呆れているのかと言った声を出す。
「手持ちの武技で倒そうと思うと、これしか思いつかなかった。」
経験不足の穴を埋めるにしても、もう少し戦闘らしくやりたかったって言うのは本音だ。
「衣川さん、武術家としての戦いを意識しすぎて、力押しに出ちゃったでしょ?」
グウの音も出ない。まさにその通りだからだ。
「人を超える戦闘力、継続戦闘力があっても、楽な方向に走ってしまう。まぁ、技自体は全然楽ではないんでしょうけど。外部カメラを潰すとか、他の弱点を探すとか。そういった工夫が無かったですね。結果としてはド派手に勝ってますが、内容があまりにも薄かったかなというのが、私の所感です。」
やっぱりそうだよな~、人に言われると反省点が浮かんでくる。しかもそれが的を得ているもんだから、何も言えないよ。
「ただ、初めてとして考えれば、悪くはなかったと思いますよ。武術と戦闘は意味がちがいますし、オーダーによっては速やかな制圧が必要になってきます。それを行える能力はある事がわかっただけ、このテストは意味がありますからね~」
そういって南雲は笑い出した。
「いや、本当、あの十字架にしちゃったロボットとか本当に申し訳ない。ちょっと戦闘となると余裕が無くなってしまったからさ、本当ごめん。」
「いやいや、ちゃんと反省できているならいいんですよ。あのアンドロイド一体で3億はしますけど、気にしないでください。」
な!3億!?気にするなってほうが無茶だろ!?
「やめてくれよ!まさかそんな値段するなんてさ??」
「いや~、衣川さんのその顔はいいですね!ゾクゾクします。」
こいつ、とんでもないドSだな!?
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シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・
ノズルから流れ出る温水を浴びて、かいた汗を流す。私の体は義骸ではあるものの、構造は生物とほぼ同じで、汗もかけば食事も取る。肌も髪の毛もオリハルコン合金製なのだが、生物的な温かさがあって、それが安心する。
長い髪がおゆを伝え、私の体に張り付く。手術直後とは違い、幾らか丸みを帯びた体は、それでも痩せていると言える。右手首にはシルバーのリストバンドがついていて、そこから私のデータが逐一バックアップされている。内臓も強靭になり、多少難がある食べ物でも大丈夫らしい。筋肉はオリハルコン合金で編み込まれ、精神に感応し、理論上は上限がないらしい。
恵まれている。最初は死ぬかもしれなかった、というか、死ぬ未来しか見えなかった。それが今では新しい体を与えられ、仕事に必要とはいえど学ぶ場を与えられ、充実した生活を謳歌している。
あの白い天井、幾つも繋げられたコード類を思い出すと忘れかけていた恐怖が襲ってくる。泣く事も出来なかった、怒る事も出来なかった。わたしは知らないうちに自分の両肩を抱いて座り込んでいた。
次は、実戦だったはず。ブリーフィングを行い、対象を守る。今日のような独りよがりな戦い方ではダメだ。私は立ち上がると、全面に張られたガラスを手で拭き取る。
そこには、美しい顔立ちの私がいる。自信を持て、前を向け!これからは失敗は許されない。
私はシャワーのノブを回し、お湯を止めると個室を出てリストバンドを操作し、体を乾かしてナノマシンの服を瞬間で着替える。そして胸に掛けてある伊達眼鏡を付けて、広い廊下に歩みを進めた。
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