城門
「で、どこから入ればいいんだ?」
白い息を吐きながら、ノアは言った。
「さあ?地図にも入り口までは書いてなかったし、分からないな。とりあえず城壁に沿って歩いてみよう」
アーサーは招待状をコートのポケットに仕舞い、歩き出した。
「……早く屋内に入りたいぜ」
肩に積もった雪を払い落としながら、ノアも後に続いた。
少し歩いたところで、大きな門が見えた。高さは三メートルくらいはあるだろうか。横幅はそれ以上に大きい。黒い鉄でできた城門はところどころ彫刻があしらわれていて一見優美に見えるのだが、決して外敵を許さないという威圧感をも感じた。
「でかいな…」
思わずノアは漏らした。
「ああ。想像以上だ。……どうやって入るんだろう」
アーサーは招待状をもう一度引っぱり出して読んでみたが、城に入るための方法は書かれてはいなかった。
「ノア?」
「呼び鈴とかどっかにあるだろ」
アーサーが立ち止まっている間に、ノアは門に向かって歩きだしていた。
アーサーもそれに続く。
カツン、と雪に塗れた二人の靴が、城門前の石畳を踏んだ。
「お!」
「え?」
キイイイイイ。
目の前で城門の扉が急に開かれてゆき、二人は息を呑んだ。
門は自らの意思で客を招き入れるかのように口を開き、やがてガチャン、という重たい音がして止まった。ノアとアーサーは顔を見合わせる。
「呼び鈴は必要なかったな」
「そうみたいだね」
少しの沈黙の後、二人は開かれた城門をくぐっていった。
まるで何かに導かれているかのようだ。これは自分自身の意志なのか。それとも、単に体が冷え切っていて早く暖かい場所に行きたいだけなのか。何か他の要因で動いているのか。彼ら自身もよく分かっていなかった。
二人が歩き出すと、背後で門が閉じる音がした。
ノアとアーサーは振り返らずに先へと進んだ。
どのみち引き返す気はもうなかった。
城が彼らを待っていた。
近くで見る城は感嘆の溜息が出るほど美しく、圧倒されるほどの威厳に満ちている。
前方には城内に続くであろうアーチ状の両開きの扉があり、二人は迷わずそこに向かって進んで行った。
「さて。アーサー、準備はできたか?」
凝った意匠の扉の前に立ち、ノアは隣の男に向かって言った。
「何の準備だい?」
「そりゃもちろん、もう後戻りはできない。その覚悟ができたかってことさ」
ノアはにやりと笑った。
「心の準備ならとっくに済ませているよ」
「そりゃ頼もしいな」
二人は立派な扉に手を掛けて、押し開いた。
ギイイイイイイイ。
伝統ある扉が軋み、悲鳴のような声を上げる。
「あ!」
「え?」
瞬間、二人の声が重なる。
「あ…また来たよ」
城内のどこからか澄んだ声が聞こえた。




