【16 あるんの里へ】
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・【16 あるんの里へ】
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車内。
大場先輩が、
「次は、道の駅の、あるんの里、という、ところだ」
即座に来栖先輩が、
「ミチノエキだとっ! 大丈夫か、そんなビチャビチャなところへ行って!」
と言ったわけだけども、何だか台詞とイントネーションがおかしい。
台詞はいつもおかしいが、特にイントネーションがおかしかった。
僕は一応おかしなところにツッコむとにした。
「道の駅は別にビチャビチャじゃないです! 暑さ対策のミストがあったとしてもです!」
すると理人くんが、
「もしかするとぉん、駅を液体の液と勘違ぃしてぃるんじゃないのぉん」
来栖先輩はハッキリと、
「理人! そりゃそうだろ!」
僕はすかさず、
「いやその液じゃないです! 電車とかの駅です! リキッドじゃなくてステーションのほうです!」
来栖先輩も負けじと、といった感じにテンポ良く、
「イチロー! 難しい漢字は大学生になってからだろ!」
僕は即座に、
「英語です! リキッドやステーションはめっちゃ英語でした!」
すると菅沼先輩は呆れるように、
「英語で言っても、こんな馬鹿は分からないだろう。これはイチローの落ち度だな」
僕は焦りながら、
「いや菅沼先輩! 落ち度こっちなんですかっ!」
菅沼先輩は溜息交じりに、
「百パーセント。イチローの落ち度だな。普通に電車とかの駅だけで良かったのに。話が長くなった」
理人くんは不満そうに、
「ちょっとぉん! 菅沼先輩、イチローを責めないでくださぃっ! イチローを責めていいのは私だけぇん!」
そう言ってから、僕の頬をつんつん指で突いてきた。
いや、
「意味無く僕を責めることもダメだから!」
でもつんつんを止めない理人くん。
ちょっと、くすぐったいなぁ。
それを振り返って見ていた菅沼先輩は、
「仲が良いな」
と言って、またお菓子を食べ始めた。いや結構お菓子食べるなぁ。
と、流れが一段落したかと思ったら、来栖先輩が、
「いやじゃあ謎のビチャビチャじゃないんだな! いやでも本当にそうなのかっ?」
と、ぶり返してきた。ぶり返しがちだなぁ。
というか謎のって何だ? ……そうか、未知の液か。
道の駅を未知の液だと思っていたのか。何だ、未知の液に行くって。
そこが”あるんの里”という名前ってどういうことだ。
えっと、
「道路とかの道に、電車とかの駅で、道の駅です!」
来栖先輩は明らかに疑問符が浮かんでいる声で、
「道に、駅……いやどういうことだよ!」
僕は矢継ぎ早に、
「とにかくそういう施設があるんですよ! 商業施設です!」
すると菅沼先輩が、
「イチローはまたミスを招いたな。商業施設じゃなくて買い物するところだ」
それならと思って、
「いやもうそれなら菅沼先輩がツッコんでくださいよ!」
菅沼先輩が語気を強めながら、
「面倒なんだ」
すると理人くんが、
「とぃうかぁん! イチローを招いていいのは私だけぇん!」
そう言って僕の耳にふぅっと息を吹きかけてきて、ゾクゾクした。
というか、
「ちょっと! 招いていいが息を吹きかけることになるって何で!」
と僕が慌ててツッコむと、理人くんは笑顔で、
「言葉も体も私が開発してぃくからねぇん!」
来栖先輩も言葉が分からないほうだけども、理人くんの言葉が分からない時もあるなぁ。
勉強しなきゃ。
「まあ招くとかそんな日本語よりも、イチロー、俺たちにはお菓子だろ」
そう言って菅沼先輩は茎わかめの袋を僕にくれた。
僕は菅沼先輩に会釈しながら、
「ありがとうございます。そうですね、僕もお菓子派ですね」
理人くんは嬉しそうに、
「もぅ! イチローはキャンディーボーイなんだからぁん! 可愛ぃ!」
僕は即、
「いやこれキャンディーじゃなくて茎わかめ!」
理人くんはフフッと笑ってから、
「私はイチローの下半身の茎をペロペロしたいなぁん!」
「僕の下半身に茎なんてないよ! 人間だから!」
そんな会話をしつつ僕たちは、道の駅である”あるんの里”に着いた。
ラッシーさんは快活に、
「いいぜ! いいぜ! 食と農のテーマパークだぜ! しっかり買い物していくぜ!」
来栖先輩は目を光らせながら、
「ラッシー! その前に顔ハメ看板だ! ここの顔ハメ看板は……ゆるキャラ! の! 子供!」
来栖先輩が言った通り、確かにゆるキャラの子供、というか赤ちゃんだった。
ゆるキャラが負ぶい紐で赤ちゃんを背負っているのだが、その赤ちゃんの顔に穴が空いていた。
大場先輩が冷静に、
「決して、ゆるキャラには、なれない」
理人くんが小首を傾げながら、
「そうぃぇば、何でゆるキャラの顔ハメ看板ってぇ、ゆるキャラ自体には穴が空ぃてぃなぃのぉん?」
僕はう~んと考えてから、
「多分ゆるキャラになりたいという願望を叶えるよりも、ゆるキャラと一緒に写真を撮りたいという願望を優先しているんじゃないかな」
大場先輩も同調するように、
「オレも、イチローが、言った、通りだと、思う」
理人くんはウフウフ笑ってから、
「でも赤ちゃんってぇ、ちょっとぉ業が深いねぇん。とぃうわけで赤ちゃんはイチローがなるとぃぃのぉん」
僕は焦りながら、
「えっ! それ何らかの悪口じゃないよねっ!」
理人くんは首をブンブン横に振ってから、
「赤ちゃんみたいに可愛ぃってことよぉん、猫顔で可愛ぃもん! イチローはぁん!」
僕はそれなら、と、
「まあ、別に僕は可愛くないけども、悪い意味じゃないならいいや」
僕は顔をハメて、デジタルカメラを持った理人くんから写真を撮ってもらうことに。
理人くんから、
「赤ちゃんだから笑ってぇん! 笑ってぇん!」
僕は精一杯笑うと、
「ちょっとぉん! イチローぉ! 可愛ぃすぎぃん!」
と言って、理人くんがむしろ僕より笑っちゃって、全然写真を撮ってくれない。
さすがに、この看板でずっといるのは恥ずかしいなぁ、と思ったその時にシャッターを押した。
理人くんは撮った写真を確認しながら、
「ちょっ、マジでイチロー可愛ぃ……この少し恥ずかしそうな顔が最高ぉん……」
僕はツッコむように、
「いや笑っている時に撮ってよ! ちょっと顔がズレた時に撮らないでよ!」
理人くんは僕のデジタルカメラを奪おうとする手をかわして、
「うぅん、これは永久保存版ん……」
僕はちょっと大きな声で、
「面白い顔だからって残さないでよ!」
理人くんは優しい微笑みで、
「違う違うぅん、面白いとかじゃなぃから残すねぇん、すぐに転送しちゃぉぅ!」
と言って、デジタルカメラから自分のスマホに写真を転送した。
まあ悪い意味じゃないのならばいいけども、ちょっと恥ずかしいなぁ。
大場先輩が指差しながら、
「まだまだ、顔ハメ看板は、あるぞ」
向こうにはハエトリソウの実写の看板があった。
大場先輩が続ける。
「ここは、植物園が、併設されて、いるから、ハエトリソウの、顔ハメ看板も、あるぞ」
でも、と思いながら、
「……大場先輩、ハエトリソウは看板なだけで、顔ハメ看板じゃないんじゃ……」
来栖先輩はデカ声で、
「いや! イチローよく見ろ! 穴が三つ空いているぞ!」
ハエトリソウの看板の真正面まで歩いていくと、なんと穴が三つ確かに空いてあったのだ!
これはもしかすると、大場先輩が前に言っていた、手も出せる顔ハメ看板では。
来栖先輩が走って看板の後ろ側に行って、そこで説明書を読んだのだろう、大声でこう言った。
「下の二つの穴は手を出す用の穴だ!」
僕は大場先輩のほうを見ながら、
「これ大場先輩が前に言っていたヤツですよね!」
大場先輩は頷きながら、
「そうだな、あとは、実際、他県には、ヘソを、出せる、顔ハメ看板も、あるからな」
すると理人くんが何故か嬉しそうに、
「やぁん! イチローのヘソを見たぁぃん!」
僕は本題へという気持ちで、
「ヘソはいいとして、手が出せるってすごいですね!」
理人くんが僕に顔を近付けて、
「私もイチローに手を出しそうっ」
僕は冷や汗が出ながら、
「いや殴らないでね! 理人くん!」
理人くんは何だかしょんぼりしながら、
「そっちの手じゃなぃんだけどなぁん……」
来栖先輩が挙手してから、
「じゃあ早速俺がハマるから写真を撮ってくれ! 連写で!」
理人くんからデジタルカメラを渡されたので、
「いやまあ連写では撮りませんが、撮りますよっ」
と僕が写真を撮るわけだけども、ハエトリソウから顔を出す来栖先輩……いやシュールだな!
ハエトリソウに捕まっているどころか、もはや顔と手以外、既に溶けている状態じゃないか!
そして来栖先輩の無表情! 無表情と相まって、もう死んでる顔じゃないか! まあそうなんだろうけども!
「はい、キウイ」
僕は写真を撮り、駆け寄ってきた来栖先輩に写真を見せると、来栖先輩はさらに上機嫌になった。
「こんな顔ハメ看板はあまり無いから楽しいなぁっ! こうやって看板が画じゃなくて写真というのも面白いな!」
「巨大資本が、成せる、技だな」
僕たちは一通り顔ハメ看板を撮り終え、あるんの里で買い物をした。
僕はハエトリソウのストラップをウキウキしながら買って。
理人くんは天然蜂蜜を買ってうっとりして。
来栖先輩は即決で野菜コロッケを買って一気食い。
大場先輩は旅館の部屋でつまむ用のミニトマトを買って。
菅沼先輩はポン菓子を買いだめして。
ラッシーさんは一番迷った挙句、結局何も買わなかった。
次は山から徐々に海のほうへ。昔ながらの街並みが見れるところだ。




