【12 ラッシーさんの元へ送る】
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・【12 ラッシーさんの元へ送る】
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完成した四枚の顔ハメ看板は、ラッシーさんが軽トラックで持っていくことになった。
僕たちは一旦校門の前で顔ハメ看板を立ててから、僕だけその校門で待っている。
僕以外の来栖先輩、大場先輩、理人くんは、同時に美術部の画も軽トラックで持っていくので、その持ち運びを手伝っている。
勿論顔ハメ看板は風に吹かれて倒れてしまうことはないし、いざ倒れ出しても僕はどうすることも出来ないのだが、顔ハメ看板の前で立って見張りをしていた。
みんなの努力の結晶。
僕は結局たいしたことはできなかったけども、それでも一緒に作ることができた。
誰かと一緒に何か作る……というか、誰かと一緒に何かをすることなんて今まで無かった。
すごく感慨深いし、正直、今、泣き出したいくらいに嬉しい。
でも一人で感極まってもしょうがないので、なんとか涙を抑え、みんなを待った。
すると来栖先輩の声が聞こえてきた。
「大体こんなもんか! 菅沼!」
それに対して菅沼先輩が、
「助かるわ。うちの部員。ボク以外、非力だから」
理人くんの声も、
「画ってこんなに包装するんですねぇん! 私たちの看板は剥き出しだからぁん!」
近くなってきたので、大場先輩の淡々とした声も聞こえる。
「まあ画は、売るし、看板は、元々、外に、置くモノ、だからな」
理人くんが持っていた画を校門に立てかけようとすると、菅沼先輩が、
「倒れると良くないから、いっそのこと地べたのアスファルトに置いて。画が上で」
と言い、理人くんも言われるがままにそうすると、僕に対して、
「イチローぅ! 疲れたぁん! チャージさせてぇん!」
と疲れるようなことをすると必ず僕に抱きついてくれる。もういつものお決まりだ。
僕は理人くんの頭を撫でながら、
「よく頑張ったね、偉い、偉い」
すると「ふわぁ~」と甘い声をあげて、微笑む理人くん。
毎日、可愛いなぁ。
それを見ていたのだろう来栖先輩が、
「陣! 俺も撫でろ!」
即座に大場先輩が、
「来栖は、可愛く、ないだろ。それに、今、オレは、手が、塞がっている」
と一番大きな段ボールをずっと持っている。
来栖先輩はすかさず、
「じゃあ菅沼! 頼む!」
「うるせぇ。黙れ」
「ケツを蹴るな! ケツをっ!」
菅沼先輩は来栖先輩を無視するように、
「というか陣。その段ボール。置けよ」
大場先輩は少し不安そうに、
「置いて、いいのか」
菅沼先輩はハッと笑ってから、
「知らねぇ。でもいいだろ。文芸部に限っては一人も来てねぇんだから」
文芸部とは言っていたけども、僕は気になったのでちゃんと聞くことにした。
「大場先輩! その段ボールは何ですかっ?」
「文芸部の、同人誌が、入っている」
そんな話をしていると、軽トラックと、もう一台大きめの自動車が入ってきた。
軽トラックからはラッシーさんが出てきて、
「いいぜ! いいぜ! 青春の塊を感じるぜ!」
菅沼先輩は溜息交じりに、
「相変わらず。声のデカいオジさんだな」
ラッシーさんは菅沼先輩にサムアップしながら、
「ケンチンもサンキューな!」
菅沼先輩は恥ずかしさと苛立ちが交りながら、
「ケンチンって言うなっ」
というわけで、その場にいる人たち総出で軽トラックの荷台に看板や画を置き、段ボールも置こうとすると、
「それ、ガムテープでフタ締めてないでしょ? 私の車に乗せてねっ」
と言って、もう一台やって来ていた自動車から、なんと和菓子屋さんの高橋さんが出てきたのだ。
僕は目を丸くしながら、
「高橋さん、どうしたんですかっ!」
高橋さんは微笑みながら、
「あっ、私ぃ? 今、ラッシーとお付き合いしてるのっ!」
その奥でニヤニヤして頬を赤くしているラッシーさん。
すると理人くんが嬉しそうに、
「なぁんだぁん! じゃあもうイチローはぁ! 大丈夫だぁん!」
何で僕がそれで大丈夫になるんだろうか。
たまに理人くんは何を言っているか分からないなぁ。まあいいか。多分良い話だろう。
高橋さんはそれぞれ指を差して指示をしながら、
「その段ボールを私の車に乗せて、そして来栖くん、陣くん、イチローくん、理人くん、そしてケンチンくんは私の車に乗りなさい! 他の美術部員さんは大丈夫!」
矢継ぎ早に菅沼先輩が、
「ちょっ。ラッシー。知らない人にケンチンと呼ばすなよ」
ラッシーさんはちょっとムッとしながら、
「知らない人って言うんじゃないぜ! ケンチン! 俺の妻になるかもしれない人だぜ!」
菅沼先輩は息をついてから、高橋さんに、
「じゃあ。ケンチン呼びやめさせてください。ボクは菅沼です」
「あらゴメンね! 菅沼くん!」
僕たちは車に乗って、ラッシーさんのお店まで行って、そこでまた搬入の手伝いをした。
全ての持ってきたモノがお店の中に入ったところで、ラッシーさんが、
「じゃあ一足先にオープン・パーティだ!」
と言うと、菅沼先輩が淡々と、
「他の美術部員も。文芸部もいないけど」
ラッシーさんは明るく、
「搬入を手伝うヤツには福が来るぜ!」
僕は即座にツッコむ。
「何ですかそのピンポイントなことわざはっ! 搬入係に指定したメンバー、そっちが選んだメンバーですし!」
大場先輩と理人くんが微笑むなか、来栖先輩がテーブルに置いてあるモノを指差し、
「うわっ! 高いジュースがある! これ俺好きなんだよなぁっ!」
そう言いながら、用意されていたコップに注ぎ始めた。
大場先輩は冷静に、
「勝手に、注いで、勝手に、飲むな」
みんなで大きなテーブルについたんだけども、理人くんだけはまだ立った姿勢で、
「私がみんなに注ぎますぅん! まずイチローぅは何飲むぅん?」
まさか注いでくれるためにずっと立っていたなんて。なんせ円形のテーブルで七名座れる分、大きいから。
僕は迷ってしまい、
「えっと、どうしようかなぁ……」
と言っていると、高橋さんがイスから立つと、
「とりま適当に注いじゃうわねっ!」
と言ってコップに、まずは来栖先輩が開けたジュースを全て注いでくださった。
ラッシーさんが大きな声で、
「というわけで、みんな! 言うぜ!」
「「「「「「「乾杯!」」」」」」」




