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顔ハメ看板部へようこそ!  作者: 伊藤テル


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12/19

【12 ラッシーさんの元へ送る】

・【12 ラッシーさんの元へ送る】


 完成した四枚の顔ハメ看板は、ラッシーさんが軽トラックで持っていくことになった。

 僕たちは一旦校門の前で顔ハメ看板を立ててから、僕だけその校門で待っている。

 僕以外の来栖先輩、大場先輩、理人くんは、同時に美術部の画も軽トラックで持っていくので、その持ち運びを手伝っている。

 勿論顔ハメ看板は風に吹かれて倒れてしまうことはないし、いざ倒れ出しても僕はどうすることも出来ないのだが、顔ハメ看板の前で立って見張りをしていた。

 みんなの努力の結晶。

 僕は結局たいしたことはできなかったけども、それでも一緒に作ることができた。

 誰かと一緒に何か作る……というか、誰かと一緒に何かをすることなんて今まで無かった。

 すごく感慨深いし、正直、今、泣き出したいくらいに嬉しい。

 でも一人で感極まってもしょうがないので、なんとか涙を抑え、みんなを待った。

 すると来栖先輩の声が聞こえてきた。

「大体こんなもんか! 菅沼!」

 それに対して菅沼先輩が、

「助かるわ。うちの部員。ボク以外、非力だから」

 理人くんの声も、

「画ってこんなに包装するんですねぇん! 私たちの看板は剥き出しだからぁん!」

 近くなってきたので、大場先輩の淡々とした声も聞こえる。

「まあ画は、売るし、看板は、元々、外に、置くモノ、だからな」

 理人くんが持っていた画を校門に立てかけようとすると、菅沼先輩が、

「倒れると良くないから、いっそのこと地べたのアスファルトに置いて。画が上で」

 と言い、理人くんも言われるがままにそうすると、僕に対して、

「イチローぅ! 疲れたぁん! チャージさせてぇん!」

 と疲れるようなことをすると必ず僕に抱きついてくれる。もういつものお決まりだ。

 僕は理人くんの頭を撫でながら、

「よく頑張ったね、偉い、偉い」

 すると「ふわぁ~」と甘い声をあげて、微笑む理人くん。

 毎日、可愛いなぁ。

 それを見ていたのだろう来栖先輩が、

「陣! 俺も撫でろ!」

 即座に大場先輩が、

「来栖は、可愛く、ないだろ。それに、今、オレは、手が、塞がっている」

 と一番大きな段ボールをずっと持っている。

 来栖先輩はすかさず、

「じゃあ菅沼! 頼む!」

「うるせぇ。黙れ」

「ケツを蹴るな! ケツをっ!」

 菅沼先輩は来栖先輩を無視するように、

「というか陣。その段ボール。置けよ」

 大場先輩は少し不安そうに、

「置いて、いいのか」

 菅沼先輩はハッと笑ってから、

「知らねぇ。でもいいだろ。文芸部に限っては一人も来てねぇんだから」

 文芸部とは言っていたけども、僕は気になったのでちゃんと聞くことにした。

「大場先輩! その段ボールは何ですかっ?」

「文芸部の、同人誌が、入っている」

 そんな話をしていると、軽トラックと、もう一台大きめの自動車が入ってきた。

 軽トラックからはラッシーさんが出てきて、

「いいぜ! いいぜ! 青春の塊を感じるぜ!」

 菅沼先輩は溜息交じりに、

「相変わらず。声のデカいオジさんだな」

 ラッシーさんは菅沼先輩にサムアップしながら、

「ケンチンもサンキューな!」

 菅沼先輩は恥ずかしさと苛立ちが交りながら、

「ケンチンって言うなっ」

 というわけで、その場にいる人たち総出で軽トラックの荷台に看板や画を置き、段ボールも置こうとすると、

「それ、ガムテープでフタ締めてないでしょ? 私の車に乗せてねっ」

 と言って、もう一台やって来ていた自動車から、なんと和菓子屋さんの高橋さんが出てきたのだ。

 僕は目を丸くしながら、

「高橋さん、どうしたんですかっ!」

 高橋さんは微笑みながら、

「あっ、私ぃ? 今、ラッシーとお付き合いしてるのっ!」

 その奥でニヤニヤして頬を赤くしているラッシーさん。

 すると理人くんが嬉しそうに、

「なぁんだぁん! じゃあもうイチローはぁ! 大丈夫だぁん!」

 何で僕がそれで大丈夫になるんだろうか。

 たまに理人くんは何を言っているか分からないなぁ。まあいいか。多分良い話だろう。

 高橋さんはそれぞれ指を差して指示をしながら、

「その段ボールを私の車に乗せて、そして来栖くん、陣くん、イチローくん、理人くん、そしてケンチンくんは私の車に乗りなさい! 他の美術部員さんは大丈夫!」

 矢継ぎ早に菅沼先輩が、

「ちょっ。ラッシー。知らない人にケンチンと呼ばすなよ」

 ラッシーさんはちょっとムッとしながら、

「知らない人って言うんじゃないぜ! ケンチン! 俺の妻になるかもしれない人だぜ!」

 菅沼先輩は息をついてから、高橋さんに、

「じゃあ。ケンチン呼びやめさせてください。ボクは菅沼です」

「あらゴメンね! 菅沼くん!」

 僕たちは車に乗って、ラッシーさんのお店まで行って、そこでまた搬入の手伝いをした。

 全ての持ってきたモノがお店の中に入ったところで、ラッシーさんが、

「じゃあ一足先にオープン・パーティだ!」

 と言うと、菅沼先輩が淡々と、

「他の美術部員も。文芸部もいないけど」

 ラッシーさんは明るく、

「搬入を手伝うヤツには福が来るぜ!」

 僕は即座にツッコむ。

「何ですかそのピンポイントなことわざはっ! 搬入係に指定したメンバー、そっちが選んだメンバーですし!」

 大場先輩と理人くんが微笑むなか、来栖先輩がテーブルに置いてあるモノを指差し、

「うわっ! 高いジュースがある! これ俺好きなんだよなぁっ!」

 そう言いながら、用意されていたコップに注ぎ始めた。

 大場先輩は冷静に、

「勝手に、注いで、勝手に、飲むな」

 みんなで大きなテーブルについたんだけども、理人くんだけはまだ立った姿勢で、

「私がみんなに注ぎますぅん! まずイチローぅは何飲むぅん?」

 まさか注いでくれるためにずっと立っていたなんて。なんせ円形のテーブルで七名座れる分、大きいから。

 僕は迷ってしまい、

「えっと、どうしようかなぁ……」

 と言っていると、高橋さんがイスから立つと、

「とりま適当に注いじゃうわねっ!」

 と言ってコップに、まずは来栖先輩が開けたジュースを全て注いでくださった。

 ラッシーさんが大きな声で、

「というわけで、みんな! 言うぜ!」

「「「「「「「乾杯!」」」」」」」


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