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25話 マジックバッグの作り方

 ラーゼトの部屋で二人。


「本当はマジックバッグを売ってもらえないかって相談だったんだけど、資料もとい設計図を作ってくれるなら作る方を優先した方が良さそうだね」

「ええ、材料が揃えばそれほど時間は掛からないわ。買うより安上がりだろうし良いんじゃないかしら」


 そういうとラーゼトは悩み始めてしまった。

 そうね、昨日はざっくりとしか説明してないもの、判断材料が少ないのかしらね。


「昨日は職人と材料があれば作れるって言ってたけど、実際にはどうやって作るんだい?」


「そう難しくないわよ。軽く説明しましょうか」


 私は指を一本立てた。


「まず錬金術師ね。ビッグフロッグの皮を加工して貰うの。それと同時に素材に合った特殊インクも作る。それが終わったら魔法陣……いえ、魔法回路を書き込んで貰うわ」


「特殊インクって?」

「皮素材と同じモンスターの魔石を粉末にするの。それを同じモンスターの血で溶かして混ぜるのよ」

「なるほど……同じ魔石を使うのか」

「ええ。魔法回路と素材の馴染みがよくなるわ」

 ラーゼトは真面目な顔で頷く。


「でも、魔石って溶けるものなの?」

「そうよ、同じ魔物の血と術師の血も混ぜれば溶けるの」

「えっ、血で!? みんな知らないんじゃないかな……」

「溶かさずに粉末になった魔石を使うと、乾いた後がざらついて馴染みが悪いし、ポロポロ剥がれやすいのよね。それに魔石と同じモンスターの血で溶かす事で親和性も抜群よ! 術師の血は一滴がちょうど良いわ。モンスターの血と喧嘩しないようにちょっとだけにしとくの。そうすると書きやすさがかなり違ってくるわね」

「これだけでも大発見だよ……」

「これで特殊インクは完成ね。あとは回路を書き込んだ皮を細工師に渡すの」

「なるほどね、得意な部分で補い合うって事かい」

「ええ、みんなの得意な事を繋げば良いものってのはすぐ出来るものよ」

「今まではみんな個々だったからね……。ちなみに次の工程は?」

「次は細工師ね、魔石を入れる器を作って貰うわ」

「あぁ、あれかマジックバッグに着いているパーツ。あれなら作れる細工師は多そうだ」

「あら、良かったわ。あれ、いつも一個じゃない? せっかくだから、二個や四個ってつけれるようにしましょうか。器の繋ぎ方次第で長時間化や短期間大容量化に組み替えられるようにしたいわね」

 

 乾電池の繋ぎ方で直列回路や並列回路みたいなものね。言っても伝わらないかもだけれども。


「あー、その時の状況に応じて変えられるのはありがたいね。長期間の旅や、討伐した素材を一時的にたくさん持って帰りたい時なんかに組み替えられると良さそうだ」

「そうなのよ! 組替式のメリットは大きいわ」

 三百年前の時は一個しか付けなかったから、今回は改良版ね。きっと使い勝手が良くなるわ。

 


「次は裁縫師ね。完全に見た目の問題だから、好みの鞄作って貰いましょう」

「ここは普通の職人仕事だね、既存の鞄を買うでも良さそうだね」

「それでもいいわ。そこは人それぞれって事で」

 こだわりたい人にはこだわって貰えればいいかしら。元々大きい鞄に付与すればその分、入る量も増える。そこだけは注意ね。


「最後は付与術師ね。鞄と回路を一つの魔道具として定着させるの」

「それで完成か」

「ええ、完成よ。ちなみに鞄だけじゃなくて服のポケットに付与しても良いわね。色々と持ち運び便利になるわよ」


「あー、うん、そうだね……それが貴族で流行ったら大変な事になりそうだよ」

「あら、それいいわね、ドレスとかに付与したら扇子とかと持ち運びが楽になりそうよ」

「暗器の持ち運びも出来るようになって規制されるだろうね」

「……それはだめね、忘れましょう」


「やることはまだまだ多そうだけど、終わりが見えそうだよ、ありがとう」

「いいえ、明日には説明書を渡せそうよ。そしたら担当者をあつめて説明しようかしら」

「そうしようか、明日の午後集めるからその時に改めて説明をお願い」

「ええ、任せてちょうだい。ひとまず今日はもう寝るわ」

「うん、遅くまでありがとう。お疲れ様」

「ラーゼトも早く寝た方が良いわよ。お疲れ様」



 そう言って私は部屋を後にし、のの子ちゃんが寝ている部屋へと戻った。

 そっと鍵を開けて中に入ると、ベッドの上ではのの子ちゃんが毛布にくるまって無防備な寝息を立てていた。

 この可愛い寝顔を見ただけで一気に吹き飛んでいくわね。なんだか満たされた気持ちになる。

 私はのの子ちゃんを起こさないようにベッドへ潜り込み、そっと目を閉じるのだった。

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