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19話 朝

 仮眠をとって迎えた朝。


 まだもう少し……二度寝の誘惑には勝てないの……そう思って寝返りを打とうとして――足に柔らかい何かがくっついていた。


 体を起こして足元を確かめると、そこには私の足に抱きつくようにして、小さく丸まったのの子ちゃんがいた。すやすやと愛らしい寝息を立てている。

 

 

 ……何でここ?

 私が寝るまではちゃんと隣のベッドで寝ていたはずなんだけど。寝相かしら。私が寝てる間に蹴落とさないで良かった。


 起こさないよう優しく引き剥がし、静かに体を起こす。

 グレーシアが寝ていたはずのベッドの上には、綺麗に畳まれた毛布が置いてある。

 どうやらグレーシアは先に起きたのね。起こしてくれてもよかったのに。


 とはいえ、今が何時なのかは分からない。

 この世界に時計は無く、時間は鐘の音で知らせるのが一般的だ。つまりは、今が朝なのか昼なのかも分からない。

 時間に縛られにくい分、気楽でもあり不便な世界よね。

 

 そんな事を窓の外を見ながら考えていると。

 背後のベッドから、もぞもぞとシーツが擦れる音が聞こえた。

「おはよう……ござる……ますぅ……」

 振り返ると、のの子ちゃんが小さなお手手で眠そうに目を擦りながら、のそりと体を起こしていた。

 ……ござるござる。

 どこの忍者さんかしら?

 それともどこぞの流浪の剣客かしら?

 

 大きな欠伸をして涙目になっている彼女の頭を、可愛さのあまり思わずわちゃわちゃと撫で回してしまう。

「ふぇ? 覇音ちゃん……?」

「おはよう。起こしちゃったかしら?」

「ううん……ちょうど起きたとこ……」

 目を閉じながらもにへらっと締まりのない笑みを浮かべるのの子ちゃん。うん、全然起きてない顔ね。



 昨日は一度着替えたものの寝にくい格好で寝るしかなかった。やっぱり寝る時は可愛い寝間着くらいは早急に用意したいわね。

 そんな事を考えながら、私は先に仕事着である侍女服へ着替える。袖に手を通しながら思ったのは、この服の強化について。破けたり汚れたりしないようにしたい。腕の良い職人を紹介してもらえるよう、後でラーゼトに聞いてみようかしら。


「のの子ちゃん、こっちにいらっしゃい。お着替えしましょうね」

「はーい……」

 まだあちこちにピーコピコッと寝癖のついた亜麻色の髪を揺らしながら、トコトコとやって来る。

 可愛い。


 結構手慣れたもんで、のの子ちゃんの装備を着せていく。胸当てや腕や足の防具、ベルトなど一人で着るには手間取る物を手伝っている。

 そして、最後の仕上げに大切な髪を整えてあげる。

 

「今日は少し雰囲気を変えてみましょうか」

 細く柔らかい亜麻色の髪をすくい上げ、左右に三つ編みを作っていく。それを後ろでくるりとまとめて、上品なハーフアップに仕上げた。

「はい、できたわよ」

 アイテムボックスから小さな手鏡を渡してあげる。

 

 のの子ちゃんは鏡を覗き込み――

「わぁ……!」

 と、その大きな目をさらに丸くした。

 

「とっても可愛いわよ」

「あ、ありがとうございます……」

 鏡の中の自分を見つめながら、頬を赤くして、照れ臭そうに笑う。

「へへっ……こっちにきてから髪型なんて気にしてなかったから、こういうの照れちゃいますね」

 その純粋な笑顔を見ていると、なんだか私まで胸の奥がじんわりと温かくなって、嬉しくなってしまった。

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