13話 明日に生きるため
「――という事で、ランレイくんたち――四つ風には新人の二人と共にしばらく依頼をこなしてほしい。報酬はギルドから出す」
「分かりました。受けるにあたり、条件の確認を――」
ランレイとラーゼトは書面を見ながら条件を一つずつ確認していく。
四つ風とギルドとの契約期間は一週間とする。
それ以降については、私たちが対価を払って雇うのか。
勇者のパーティメンバーとして四人を誘うのか。
今回は縁がなかったということで別れるのか。
後のことは私たち次第ということらしい。
明日から討伐任務に同行してくれる事になり、良さそうな依頼はギルドが見繕ってくれる事になった。
話がまとまり、その場で解散となった私たちは部屋を後にした。
「んじゃ明日の朝、ギルドで待ち合わせな」
「お願いします!」
元気に返事をするのの子ちゃんに合わせて私もお辞儀をする。私も慎ましくも仕事が出来る雰囲気の侍女を目指したい所だけど……そもそも普通の侍女ってどう振る舞えばいいのかしら? 早くも侍女になりきれるか、私の前途に暗雲が垂れ込めている気がする。
そんな割とどうでもいい事を考えながら受付へと戻り、先ほどのアンニュイな銀髪のお姉さんさんから冒険者カードを受け取った。
「はい、二人ともEランクからのスタートになります。Eランクからは郊外の討伐任務を受けられますが、ちゃんと対策や人数を揃えてから向かわれるようにお願いしますね」
受付嬢からも注意事項を受け、ついに私は2度目の冒険者になった。
「のの子ちゃん……いいわね?」
「はい……覇音ちゃん!」
そう、今の私たちには帰ってゆっくり休む宿がない。
今日と明日を生き抜くため仕事を探すのよ……。
「早速ですが、今から日帰りで行って帰ってこれそうな討伐任務はありませんか?」
今晩のご飯がかかっている。なるべく稼げるやつが欲しい。出来ればおやつ代も稼げるやつお願いします。
「これからだとねぇ……常設の討伐依頼があるから、外行って倒して、証明部位を持ってきてくれたら報奨金を出せるわよ? これが討伐対象なんだけど、どうかしら?」
渡された紙には、ホーンラビット、ファットボア、ブルースネーク、ゴブリンなどの名前と一緒に賞金額が書かれていた。
「のの子ちゃん、ここら辺は行けそう?」
「た、多分大丈夫だと思います、ゴブリンなら何度か倒した事あります」
「いいわね……。そしたら、これにしますね」
「はーい。遅くならないように気をつけていってらっしゃいね」
無事金策の目処がたち、お礼を言ってから外へ向かおうとすると、入り口付近にいたランレイが声を掛けてきた。
「討伐票持ってるみたいだけど、もしかしてこれから出掛けるの?」
「ええ、少し外に出て討伐依頼をこなそうと思ってます」
「まじか……うーん……」
考える素振りをするランレイ。
するとすぐに同行したいと提案してきた。
「それ、俺も着いてっていいですか? せっかくだから二人の実力知りたいです」
「構いませんよ。といっても、私はただの非力な侍女ですのでほとんど戦えませんが」
いや待てよ、全く戦えないって言うといざって時に困るかしら。もしくは普段実力を隠している万能メイドって事にするのがいいか。そこらへんの方針をしっかり決めないとすぐにでもボロが出そう。王都から離れたらのの子ちゃんだけにはある程度話したほうがいいのか……迷う。
「え、そしたら……えーっと、のの子様だけが戦うの?」
ランレイの『様』呼びに、のの子ちゃんが少し頬を赤くして慌てて手を振っていた。
「あぅ……様はちょっと……恥ずかしいので、できればのの子って呼んでもらえると嬉しいです……」
「そうなの? もしかして……貴族じゃ無かったりする?」
のの子ちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「私たち……ですか? 多分平民なんだと思いますが」
「あー……まじか、ずっとお偉いお貴族様だとばっかり思ってたわ。ほら、後ろにやたら存在感ある侍女連れてるし」
「失礼ですね。慎ましくて凛々しいと仰ってくださいません?」
「いやいやいや……それは無理あんだろうよ……」
カッ!と大きく目を見開き真顔で見つめてあげると、そっと目を逸らすランレイ青年。
ふっ、目を逸させた私の勝ちね。
勝利の余韻を楽しむ私を無視して敗者ランレイくんはのの子ちゃんと話を進めている。
「んー、そしたら、ノノコって呼ばせて貰うね? そんで、凛々しい侍女様はなんて呼べばいい?」
「あら……それでは、特別にハノンと呼ぶことを許しましょう」
「ははぁー! ありがとーございますー」
ひれ伏しもせず、無表情かつ棒読みで返すだなんて……ふふ、そういうノリは結構好きよ?
そんな感じで戯れあっていたらあっという間に門へと辿り着いた。
門番にピカピカのギルドガードを見せ、私たちは初めての出稼ぎにと旅立つのであった。




