12話 冒険者
「まず、君たちにパーティを紹介したい。二人だと何かと危険だろうから、旅の仲間は多い方がいい。もちろん無理強いはしないけど、顔合わせだけでも……出来ればしてほしい。じゃないと僕が怒られちゃうから……ほんと、助けると思って……」
「だ、大丈夫です。その、ちょっとすぐは決められないと思いますが……会うだけなら」
「おぉー! ありがとう! いやぁ良かった。とりあえずリーダーだけ呼んでるからもう少ししたら来ると思う。会って話してみて決めてくれれば大丈夫、大丈夫」
良かったよかったとニコニコ話す姿に、まんまと思惑通りに進められてしまった感が否めないが仕方ない。
流石にギルドが紹介するパーティに変なのは……いないよね?
「とりあえず今、二人の冒険者登録をしてるよ。この後はもう、聖都に向かうで良いのかな?」
「えーっと……」
のの子ちゃんが困った様に後ろを振り返り、私に助けを求めてきた。なら私から要望を話させて頂こうかしら。
「今後の予定ですが、当面はここのギルドで依頼をこなしつつ実力を付け、旅支度をしたいと思います。差し当たり、当面の間は討伐任務を融通して頂きたいのです」
「あらー……すぐには出ないのか。まぁそれならそれでこっちはお願いしたい討伐依頼があるから、どんどん回させて貰えると、とっても助かるよ。それに、その討伐任務を使ってパーティメンバーとの相性を確かめるってのも理にかなってるかもしれないしねぇ」
なかなかの良案だといいたげな表情でうんうんと頷いている。
「そうですね、それがいいかと思いますわ」
「じゃあこういう事で進めていこうか。そうそう、それともう一つ大事なお話ね」
ラーゼトは真面目な顔になる。
「勇者召喚の件は公表されていない」
のの子ちゃんが驚いた顔をする。
「えっ?」
「国王陛下から聞いてない?」
のの子ちゃんは慌てて首を横に振った。
「理由は簡単だよ。魔王軍に勇者の居場所を教えたくないからだ。それにあっちにはあっちの事情もある。勇者様が現れたなんて話が広まれば、面倒事が山ほど湧いてくる」
「えーと、忙しくなるから秘密なんですか……?」
「そういうこと」
ラーゼトは頷いた。
「少なくとも王族や一部の貴族以外には知られていない。もちろん冒険者ギルドでもごく僅かの人だけ」
そこで視線がのの子ちゃんへ向く。
「だから自分から勇者だなんて名乗らない方が身の為だよ」
「は、はい」
「うんうん。素直で良い子だ。君は今から勇者じゃない。ただの新人冒険者として頑張ってね」
「が、頑張りまひゅ」
(あらやだ、可愛い)
王族の思惑とギルマスの思惑が私たちのためになるかどうかは怪しいところではあると思うけど、ひとまず言われた通りにしておきましょうか。勇者の看板背負って活動するには弱すぎる現状、今は強くなることを優先するべきね。最悪は高飛びする事も……。
――コンコンッ。
「来たようだね」
どうぞと扉の向こうに声を掛けると、一人の青年が入ってきた。
草原で魔族に襲われたあの日、王都まで護衛してくれた優しい青年――ランレイ・アーサーとの再会だった。
今日は依頼の件でギルドに呼ばれ、全員で向かった所、まだ護衛対象が来ていないとの事で、改めて呼ぶのでリーダーの俺だけが待機する事になった。
秘密厳守の指名依頼で誰を護衛するかすらまだ教えてもらえていない。こうも振り回される感じからしてきっと何処かのお貴族様の子守りな気がして胃がキリキリしてくる……。面倒臭い事にならなきゃ良いが……やっぱり断ればよかったか……。
ひとまず、仲間たちは日頃の疲れを癒す為、一日休みにした。俺はギルドでひとり寂しく飯を食う事にした。
安くて腹持ちのいい鶏肉か。
高くて食べ応えのある猪肉か。
今日は珍しく独り……こんな時ぐらい良いもん食ってもいいよな……。
普段食べないエレファントボアのステーキを口いっぱいに頬張り、溢れる肉汁、鼻から抜ける香ばしい肉の香りを堪能していた。歯応えがありながらも柔らかく崩れるこの肉は一体どうやって調理しているんだ。あまりの美味しさに感動していた時――ギルマスからお呼び出しが掛かった。
今、目の前にいる二人に対して、複雑な感情が渦巻いている。
ひとつ、草原で倒れてた二人が元気そうでよかった。今も改めてお礼を言われた。
ふたつ、この二人が俺たちを振り回したお貴族様か。
みっつ、あんな美味いものを急いで食べさせた罪は重い。もっとゆっくり味わいたかった。
結果、どう対応していいか分からなくなってしまった。




