11話 ギルド
今はのの子ちゃんと並びながら、クレープもどきを片手にギルドへ向かっている最中。
のの子ちゃんの気持ちも少し楽になったのか、クレープを見たり、周りの人や建物を見たり、美味しそうな屋台に寄り道してみたりと、周りに興味を示しはじめている。
なんだかんだ私も王都を歩くのは楽しくてつい色んな所に目移りしている。
弓を担ぎ、冒険者の格好をしている美男子エルフ。
その隣を一緒に歩くお髭ムキムキドワーフ。
獣耳と尻尾を揺らしながら仲良く日向ぼっこしている獣人の親子。
日本では絶対に見ることの出来ないファンタジーな光景はそこはかとなく懐かしさを漂わせる。私にとっての故郷は日本ではなく……ここなのかもしれない。
そして、ついに大きくて頑丈そうな建物――冒険者ギルドに到着した。
外観はコンクリートみたいな壁や大きな石が多く使われており、要所々々で大きな木材も使われている三階建ての建物だった。
時刻はもう間も無く昼になる頃。
ギルドに着くまでに予想以上の時間が経っていた。
まだまだ甘いものを食べたいと、甘味を惜しみつつもギルドの扉を開くと中は人は少なく、受付もひと段落しているのか、閑散としている。
「まずは冒険者登録と、近場の依頼で良いのがないか見て、また今度パーティメンバーの斡旋をして貰いましょうか」
「えっと……聖都に向かわないの……?」
「そんなのあとで大丈夫よ。こういう時はまず、のの子ちゃんが冒険者に慣れる事の方が肝心だと思うの。旅だって初めてだし、色々足りてないものがあるわ。特にお金」
「はぅっ……そうだよね……稼がないと、だもんね」
そう、私たちはここに辿り着くまでの間に、様々な甘い誘惑を見つけては買い漁り、その結果、大銀貨九枚を使ってしまった。
絶対に後悔はしないにしても、王都に滞在するなら宿屋だって見つけなきゃいけない。旅の支度だってしなきゃ道中で野垂れ死ぬかもしれない。
兎にも角にも金策が急務である……!
「さぁ、明日のご飯とふかふかベットの為、頑張りましょー!」
「おぉーっ!」
一緒になって握りしめた拳を天に掲げ、二人盛り上がっていると――
「はいはーい、そこのお二人さーん。用が有るならこっち来てねー」
一番近くの受付に立っているアンニュイ滲む受付嬢が手招きしている。
机の上に肘をつき顎を乗せ、大きな玉二つを体重で潰しながら呼びかけている。透明感のある銀色のセミロング。眠たげに少し垂れた目元が印象的なとても綺麗な女性だった。
「「はい、今行きます」」
声を合わせて返事をする異色コンビ。亜麻色髪の冒険者風な少女のの子と真っ赤な髪のメイド服をきた私は言われるがままに受付へと向かった。
「で、二人とも冒険者になりたいと……まずあなたは駄目ね。年齢が足りていないわ。考え直しなさい」
羽ペンをのの子ちゃんに向けて却下する。
「コレを」
私は懐から取り出した王様からの封書をスススっと頭を下げながら渡す。
少し頭を上げ、見上げる様に受付嬢を覗き見ると……冷たい視線を感じつい目を逸らしてしまった。この人手強い。
「こういう大切な物は早く出しなさい」
そう言いながらも書面に目を通すと、すぐにギルドマスターへ丸投げされる事が決まった。
「貴女たちだったのね。今日はもう来ないかと思いました。今からギルドマスターと会って頂きます。別室へ案内しますから着いてきてください」
「えっと、今じゃなきゃ……?」
「ダメです」
こちらの希望をバッサリと切り捨て、同僚に伝言を頼むとすぐに歩きはじめてしまった。置いていかれない様に私とのの子ちゃんは黙ってドナドナされて行く。
階段を上った先の客間らしき部屋で二人きり。
一応、従者っていう扱いで来ているのでのの子ちゃんだけをソファに座らせ、私は斜め後ろで待機する事にした。忘れがちだけど侍女ですし。
あまり待たずして、このギルドを束ねるギルマスがやってきた。
「ごめんねぇ、待たせて。最近悩みの種が多すぎて……コレでも急いで来たんだけどね……」
細身ながらも筋肉質。きっと戦闘になれば八面六臂な活躍をしてくれそうな雰囲気はあるものの、目の下のクマとヨレたシャツ、ボサボサな髪が毎日苦労してるんだと物語っている。
「こ、こちらこそごめんなさい! 待ってるって知らなくて……」
「いやいや、いいんだよ。こっちが勝手に待ってただけだから!」
勇者とはいえ、子供ののの子ちゃん相手にギルマスとは思えないぐらい腰が低く、温厚な人だった。
ラーゼトと名乗った彼とのの子ちゃんが簡単な自己紹介を済ませる。
するとラーゼトは一度、猫背を伸ばし表情を引き締めた。
「じゃあ、時間も限られてる事だし本題から話そうか」




