Rati 59. 孤独な蝙蝠
9月9日。
今日はイシガミ先輩が集めたカードを渡すために、儀式の組織である【G.D.】と接触する機会が設けられている日だ。
もちろんカードを渡すわけではない。
ヨシュアさん達と接触し、協力してユリネさんを生贄にする儀式を止めるんだ。
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Rati 59. 孤独な蝙蝠
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改めて状況を整理しておくか。
八咫烏とG.D.は今まで協定の元に儀式を執り行ってきた。
だけど今日はG.D.によって協定外の儀式が秘密裏に行われる。
その情報をイシガミさんによこした人物がいて、俺たちは情報を掴む事が出来たんだ。
「予定地はこの山の先だ。 行くぞ」
車に乗り辿り着いた場所は、ユリネさんがお茶を淹れてくれた朱鳥ノ宮の旧校舎の裏にある山……。
そして現在俺達がいるのは、朱鳥ノ宮から別方面の麓って事か。
これからヨシュアさん達と落ち合うための場所に向かうんだ。
気を引き締めねーと。
まずは少数精鋭で俺とカゲミツがイシガミ先輩の後に続き、周りにハジメさんなどの大人たちが儀式の担い手である俺達を護衛するために潜んでいる。
そして、この先にある山の中に、G.D.に属するヨシュアさん達と接触するための予定地があるって作戦会議で言っていたな。
「この山って朱鳥ノ宮の裏山……。 確か修験部でタカヒコ部長が管理している神社が……」
「お前ら。 潜入した時に修験部にいたんだったな。 タカヒコのヤツ、得体が知れねぇとは思っていたが……八咫烏に属していたとは夢にも思わなかったぜ」
今、俺達の周囲にはその鷹彦部長も護衛についてくれている。
この山を知る者として今回の任務に抜擢されたんだ。
「イシガミ先輩、タカヒコ部長を知っていたんですか?」
「少しな。 以前は俺も修験部にいたんだ。 途中でやめちまったけどな」
「俺、聞きたいです。 イシガミ先輩は……なんでわざわざRenatusに?」
この人は態度は粗暴だけど、悪い人じゃない。
もともとは生徒を儀式に近づけさせないために、カード狩りを行い。
それもユリネさんを救うためのモノだ。
きっと何か、理由がある。
「くだらねぇ半端モンの話だ。 聞いても面白くねぇぞ」
「僕も興味があります。 貴方はこの学園における姉さん……ライラとの面識があった。 姉さんがどんな人だったかを教えてください」
「……」
イシガミ先輩はその言葉に逆らえなかったのか溜息を形にするように息を吐いていた。
話してくれる気になったみたいだ。
「素行の悪かった俺は心身ともに鍛えろと促され、この学園に編入してから修験部に入ったんだ。 けど、やる事成す事全て上手くいかなくてな」
元々修験部にいたイシガミ先輩は、優等生のヨシュアさんに敵対心を燃やし始めたころに修験部を退部。
何も上手くいかず色々あって朱鳥ノ宮をやめようとしてた頃に、ユリネさんと出会ったらしい。
ユリネさんは孤立していた学園で孤立していたイシガミ先輩へと声をかけ、その優しさに何かしら感じるものがあったみたいだ。
「あの人は、こんな出来損ないの俺を気遣ってくれた。 けど、後になって俺は思ったんだ。 あれは、誰かに向けた無意識のSOSだったんじゃないかってな」
ユリネさんが怪しい活動をしていると噂で聞きつけたイシガミ先輩は、その影を追うようにRenatusに入ったんだそうだ。
そしてそこにはヨシュアさんがいて、そこでも二人はよくいがみ合い、器用なヨシュアさんとは違いまたもや孤立していったそうだ。
そうやってイシガミ先輩はRenatusに紛れながらも裏にある何かを感じ取り一人で探っていたらしい。
「ずっと何の手掛かりも見つからなかったが、ある時G.D.へと一気に近づいたんだ。 お前と出会ったあの日だ。 ヤマト」
そしてある時、一年前だ。
俺達が肝試しで廃墟マンションにいった時、魔法陣の片づけを命じられたイシガミさんと出会った。
あの時、ヨシュアさんとイシガミさんはRenatusとしてカード狩りのために、俺達の地元へと来ていたんだそうだ。
「俺達があの地へときていた理由は……Renatusとしては、カード狩り。 だがそれを操るG.D.の目的は……カゲミツ、お前の観察だった」
「……」
儀式の担い手であり強大な力を持つカゲミツ。
その対抗策を練るために、大会を開きカゲミツの弱点を暴こうとしていたのか。
「そしてG.D.はその大会で思わぬ収穫を得る。 神の供物である巫女と、強力な魂を持つ適正者を見つけた」
「まさか、俺と……サクヤ……」
「そうだ。 未完成だが適正者として申し分のない素質を持つヤマト、そして純粋な魂を持つお前の幼馴染をターゲットにしたんだ。 あの時は当然、俺はそんな事全く知らなかった」
そうして、俺とサクヤはおびき出された……。
Renatusの代表を兼任する、G.D.の幹部……Lupinusに……。
「おびき出されたお前は、力を覚醒させ奇跡的に勝利を掴んだ……」
こうして、あの地でのG.D.の作戦は一旦終了となった。
そしてRenatusの背後にあるG.D.の存在をイシガミ先輩は確信した。
後にG.D.にも属していたヨシュアさんから組織の正体とユリネさんの行く末を知らされて、今に繋がるって事か。
「これが、俺がRenatusに入り儀式の行方を追っていた経緯と、ヨシュアに聞かされたG.D.の話だ」
「ありがとうございます……」
山の中に掠れたカゲミツの声が風と共に溶けていった。
「別にお前のためじゃねぇよ」
「姉さんのため、ですよね……? だからこそです……」
「……」
「姉さんは……きっと誰にも助けを求められず苦しかったはずだ。 貴方が姉さんのためを思い今も動いている事は、きっと姉さんにとっても救いになっていたはずです」
「そーいう事は全て終わってから言いやがれ……」
カゲミツは……優しいやつだ。
カゲミツとして初めて会った時は、生意気で血も涙もねぇやつだと思ったけど……。
対抗戦で人知れずモモちゃんを助けに行ってくれたり、俺を儀式から遠ざけようとしてくれたり。
そして、ユリネさんを想い一人で戦ってきた。
幼い頃から、心に通った一本の芯は何も変わってねーんだ。
孤独にユリネさんを救おうとしていたイシガミ先輩にも、似たような何かを感じたのかもな。
「とにかく、先へ進むぞ。 くれーから気を付けろや」
「イシガミ先輩! 照れてやんの!」
「うるせぇ。 注意しねーとズッコケんぞ」
俺達なら、必ずユリネさんを救い出せる……!
この件を解決すればきっと……カゲミツの冷たい目も……。
いつものメンバーに、ユリネさんやイシガミ先輩。
ヨシュアさんやタカヒコ部長にレッド達も加えて……。
皆で笑ってレヴルナをするのが今から楽しみだ。
「ついたぞ。 ここだ」
山を登り神社を超えて、辿り着いた鬱蒼とした場所……。
ここが、ヨシュアさんたちとの接触地点……。
「きたか、イシガミ」
「ヨシュア。 お前だけか?」
やっぱり、あのお面がヨシュアさん……!
カードギャングをおびき出そうとしたとき、公園で戦ったお面の男。
そしてカードショップに潜入した時に戦ったお面の男。
カゲミツの言った通り、ヨシュアさんだったんだ……!




