Rati 58. 分けあった温もり
幼き日の夢。
その夢から目覚めたミナシゴが見つめていたのは見知らぬ天井だった。
(ここは……?)
上体を起こし周囲を見回せば、部屋の窓からは校庭が見え放課後は過ぎていたのか生徒達の遊ぶはしゃぎ声が室内にまで届いていた。
そして、椅子に座り眠りこけている少年がミナシゴの手を握っていた。
(側に……いてくれたんだ……)
――――――
Rati 58. 分けあった温もり
――――――
……俺、寝てた?
「やぁ、おはよう」
「カゲミツ、起きたのか」
「お互いにね」
俺が眠る前、カゲミツはうなされていた。
起こすかどうか迷って……心配になってベッドに手を付いたら、カゲミツの手と触れたんだ。
そして誰かに助けを求めるように手を握ってくるカゲミツがいたたまれなくなって、俺も手を握った。
ユリネさんが消えた日の事、一人で戦っていた事を思い出して苦しくなったのかなって思って。
「俺達、気を張りつめすぎていたみたいだ」
「僕も思った。 倒れてしまえば姉さんを取り戻せないのに、愚かだったよ」
そこそこ眠っていたのか、もう日は傾き始めている。
……手を握ってきたことは、言わないでおいてやるか。
「今日は、じーちゃんにも休むって言ってあるよ。 体調はへーきか?」
「……うん。 迷惑をかけたね」
「そんなの……俺の方が……」
いつも迷惑かけてるのは俺の方だ。
カゲミツは一人でならもっと動けるんじゃねーか。
俺が足を引っ張ってるんじゃねーかって……朱鳥ノ宮でも思った。
けど、カゲミツは毎回何も言わず、俺のフォローをしてくれる。
だから、俺はそんなすげーカゲミツに追い付きたくて、俺も努力しなくちゃって……。
追い付こうとするのに夢中で、カゲミツの事をちゃんと見れていなかったんだ。
まだ俺と同じ小学生なのに、カゲミツは大木のようにでかいものを一人で背負ってユリネさんを救いだそうと戦ってきた。
ホントはつらいはずなのに、隠していたんだ。
俺が弱い自分を追い出そうと必死だった時みたいに、カゲミツも必死だったんだって……。
さっき眠っている時にうなされてる姿を見て、初めて本当のカゲミツの弱さを見た気がしたんだ。
そして、やっと分かった。
俺がカゲミツに追い付きたい理由。
それは、俺より強いからじゃない。
同じステージに立って隣で戦いたかったから、それだけじゃない。
俺がカゲミツに楽しいレヴルナを教えたかった理由……。
あの日、初めてバトルした時に冷たい目をしていたカゲミツを、暗いトンネルの中にいたような瞳のカゲミツを連れ出したい。
孤独に戦い続けるカゲミツにレヴルナの楽しさを教えて、一緒に過ごしたいって思ったからだったんだ。
だから隣で戦うだけじゃだめなんだ。
カゲミツの心に生まれていた孤独を祓うには、今まで俺をフォローしてくれたように、俺が……。
もしカゲミツが挫けそうになった時は、俺が前に出て戦えるようにならないといけねーんだ。
「俺、ぜってー今より強くなるから。 ほんで、ユリネさんを必ず取り戻そうぜ! そん時は皆で楽しくレヴルナをやろう」
「ヤマト……」
「なんだよ」
「側にいてくれて、ありがとう……」
「珍しいじゃねーか、あのカゲミツくんがこんなに素直なんてな」
幼い頃のウララじゃなくて、カゲミツが初めて俺へとお礼を言ってくれたあの日……。
まるで、あの時のような表情だ。
「あ、ウララくん起きたんだ」
サクヤにモナカ、二人もまだ残ってたのか。
「体調は平気なの?」
「もうすっかり元氣だよ。 ありがとう、二人とも」
そして、俺達は忘れていた日常に帰ったかのようにして過ごした。
今日は皆で楽市楽座に行って修行を忘れレヴルナを楽しんで、久々に普通の小学生のような日常だった。
ハメを外しすぎたとも思ったけど。
けど、楽しかったな……。
大規模な儀式が行われる9月9日まであと少し。
それまでに、必ずもっと強くなるんだ。




