Rati 53. それぞれの思惑
「ヤマト! カゲミツくん! おかえり!」
「よぉ、モナカ!」
俺とカゲミツは任務達成の休暇を貰い、楽市楽座に顔を出せば懐かしの声が聞こえてきた。
そしてサクヤと共に暖かく俺達を出迎えてくれた。
「ハジメさんから聞いたよ。 見事に犯人を捕まえたって」
「俺達にかかればお茶の子さいさいだぜ」
俺の言葉を聞いたカゲミツは無事任務を終えた事にリラックスするように軽く息を吐いた。
「それに関しては、レッド達のファインプレーが大きかったけどね」
「そうそう、聞いてくれよ」
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Rati 53. それぞれの思惑
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校長先生がじーちゃんの教え子だった事。
鷹彦部長が素性を隠し学園生活を送っている秘密エージェントのような立場でカッコ良く感じたこと。
そして、対抗戦でバトルしたレッド達と再会して仲良くなったこと。
強くなっていたモモちゃんがカード狩りの犯人とバトルして引き分けた事。
カゲミツと共に朱鳥ノ宮で起きたことを話すと、モナカとサクヤは興味深そうに聞き入ってくれた。
まるで自分が活躍した夏休みの冒険譚を話しているようで最初は心地よかったけど、この話が終わりに近づくにつれて二人とも名残惜しそうな反応をして一夏の刹那を感じさせてくる。
そっか、夏休みももう終わりなんだよな。
話を終えたあと、モナカはある方向へと顔を向けた。
「そして、現在に至るって事なんだね。 寮のアパートにいる人が……そのイシガミって人なの?」
「そうさ。 僕たちは今日、彼に会いに来たんだ」
少し食い気味に、カゲミツはモナカの問いへと応えていた。
カード狩りの犯人だったイシガミさん。
本来は組織が硬く管理しようとしていたけれど……。
カゲミツを大事に想ってくれているじーちゃんやハジメさんの協力もあって、組織の隠れ蓑である楽市楽座がケツを持つことで軟禁状態となっている。
今日はイシガミさんにユリネさんの行方を聞こうと思ってここに来たんだ。
彼の方も俺達に伝えたいことがあるという。
「そろそろ約束の時間だ。 ハジメさんに会いに行こう」
気付けば空はほんの少し紅みがかり、雲間からかすかな夕日が指していた。
もう夕方か。
俺達はプレイスペースから離れ、楽市楽座の寮の管理人でもあるハジメさんの元へと歩みを進める。
いつもはレジの近辺でまったり過ごしているハジメさんだけど、今日はイシガミさんを見張るために寮にいるんだよな。
俺達が行くと、寮の前でハジメさんが待っていた。
暑いのにわざわざ外で待ってくれていたみたいだ。
「ハジメさん。 お手間をお掛けして申し訳ありません……」
「堅苦しい挨拶はナシだよ。 僕とカゲミツくんの仲じゃないか」
「ありがとうございます……!」
頭を下げたカゲミツの顔は、心から安堵したかのような表情だった。
「さ、こっちさ」
ハジメさんの案内で俺たちは寮の敷地にある広場へと通された。
「バーベキューセット!?」
その広場にはパラソルやビーチベッドが並び、バーベキューセット一式が並んでいる!
「ハジメさん、これって!」
「頑張った君達へのご褒美も兼ねてね。 ヤマトくんとカゲミツくんの祝勝会さ。 言うなって言われたんだけど、費用はスネツグさんモチだよ」
これは、じーちゃんからのプレゼントでもあるって事か。
「よっしゃー!!」
素直に心の雄たけびを上げていると、ビーチベッドで寝転がっていたアロハシャツ全開の少し色黒のお兄さんが立ち上がった。
空気に溶け込みすぎていて気付かなかった……。
「よう、チビ共。 待ってたぜ」
そしてジュースを一飲み。
満喫してるなぁ!
「貴方は。 い、イシガミさん……!?」
廃墟マンションでバトルをした、そして朱鳥ノ宮で再開したお面のお兄さんが素顔を晒していた。
あの人は……オープンキャンパスで出会った少しイカついお兄さんだったのか……。
「……」
緩やかな空気が流れていたけど、そんな雰囲気はもはやどうでもいいと言ったようにカゲミツはイシガミさんの隣にあるビーチベッドに座った。
そ、そうだよな。
俺達は本来、ユリネさんの行方を聞きに来たんだった……。
「教えてください。 ライラという女性に心当たりはありませんか?」
「お前があの人の……ハジメさんから俺も事情は聞いた。 確かに、言われてみれば少し似てるかもな」
「……!」
イシガミさんの言葉で、カゲミツの横顔から見える瞳の奥が輝いたように見えた。
やっぱり、ライラというお姉さんは……ユリネさんだったんだ。
「単刀直入に言うぞ。 俺はあの人を、ライラを知っている」
「姉さんは、どこにいるんですか!?」
「気持ちは分かるけどな。 とりあえず落ち着け、焦ったって今は何も変わらねぇ」
「……はい」
焦っていたカゲミツを冷静に落ち着かせ、イシガミさんは一呼吸入れた。
まるで重大な話をするように。
「俺がなぜカード狩りをしていたか。 それはもう聞いているな?」
「はい……」
Renatusに属していた彼は、儀式に近づかせないため同胞のカード狩りを行っていた。
そして、俺達が属する八咫烏と接触するため、というのがもう一つの理由だったよな。
「ライラの身が危ない……あの人は、時期に生贄とされる」
「ね、姉さんが!? 居場所は分かるんですか!?」
見たことのないような焦りぶりだ。
いつもは冷静なカゲミツだけど、ユリネさんの手掛かりを見つけられるかもしれないと分かった日から冷静さを損なう事があるな。
こんな時は俺がフォローしてやらねぇと。
「落ち着けカゲミツ。 一旦、話を聞こう」
「あぁ、チビの言う通り落ち付け。 一先ず時間はある」
「すみません、続きを聞かせてください……」
一先ず時間はある。
その言葉でなんとか落ち着きを取り戻したカゲミツは深呼吸し、この先の情報を聞き逃すまいと身構えていた。
俺も聞き逃さねーようにしねーとな。
「生贄とされると言ったがその情報源は、朱鳥ノ宮で最強の称号を欲しいままにしている男。 ヨシュアだ」
ヨシュア……。
やっぱりあの人は、儀式にも関わっているのか!?
「あいつと俺は、あの人を……ライラを儀式から逃れさせるために動いていた。 それがカード狩りの件の発端だ」
イシガミさんはユリネさんを救うために動いていたのか。
「ライラと共にヨシュアも属している儀式の組織【G(Golden).D(Dawn).】。 ヤツらは神と接触できる【巫女】の一人であるライラの魂を供物にする腹積もりだ」
巫女……。
神聖な力を宿し、神と対話できる存在。
そして供物として、適正者の数十人にも及ぶ霊的エネルギーを保持している。
巫女を生贄に指定する事で儀式を行い、巫女の魂を高純度の供物として捧げる事ができる。
それが……あの日、俺とサクヤがおびき出された真の理由だったと、じーちゃんやハジメさんが教えてくれた。
ユリネさんは……サクヤと同じ巫女だったんだ……。
「そこで、俺はヨシュアに加えある人から儀式の真実を持ち掛けられ、ライラを生贄から逃れさせるため朱鳥ノ宮でカード狩りを行っていた」
「Renatusに入っていた俺を利用する事でカードを集めさせる目的をこなさせ、そしてとある情報を八咫烏に明け渡す伝令役としての務めを請け負ったんだ」
イシガミさんは、話を続け自分の役割を話してくれた。
朱鳥ノ宮でカード狩りを行っていたのは、八咫烏と接触して伝令役をこなすためだったのか。
あの日、捕まらないように逃げたのはまさか警備員から直接、八咫烏に連行されるとは思ってなかったかららしい。
そして、あの時にヨシュアさんに魔術で動けなくされて、捕縛され……。
今に至るって事か。
「ヨシュアの野郎は俺が捕まるのも織り込み済みだったんだろうな。 あれが金縛りってやつか? まんまとハメられた気分だぜ」
「それで、その情報とは……?」
「あぁ。 俺は集めたカードを明け渡すため【G(Golden).D(Dawn).】と接触する日が設けられている」
「……!? つまり! そこで姉さんを取り戻せるかもしれないという事ですか!?」
「その日は、ヨシュアを伝い俺へと情報をくれた人と会う事になってんだ。 その日は八咫烏とは関係のない儀式が秘密裏に行われるらしい。 それも大規模のな」
ユリネさんを生贄とする儀式が行われる……!?
本来の儀式の形式は、八咫烏から儀式を止めるための戦力が送り込まれ、【G.D.】はその送り込まれた戦力を生贄として扱い儀式を行う協定だ。
だけど、時期にユリネさんを生贄とする大きな儀式が秘密裏に行われるってのか……。
「焦る気持ちも分かる。 だが言ったろ? まだ時間はある、次の接触日は9月9日だ」
9月9日。
その日に大規模な儀式が行われる。
日程が決められているなら、確かにまだ猶予はある。
だが、それは……本当なのか?
「それが真実と裏付ける、信用に足る証拠は何かあるんですか?」
そう。
カゲミツの言う通り、これはまやかしの情報源だという可能性もあるんだ。
「まず一つ目は、これは証拠というよりお前らの組織の怪しい点だが……八咫烏は俺のこの情報をお前たちに伝えないようにしたらしい」
カゲミツもこの接触日の情報は伝えられていなくて初めて知ったらしい。
信じていたモノが崩れ去っていくようなその表情から、驚きが俺にも伝わってくる。
「俺が厳重に管理されそうになったところを、ハジメさんが引き取り軟禁する形で場を納めてくれたんだ」
そうだったのか……。
じーちゃんもイシガミさんの処置に意見を出したと言っていたな。
ハジメさんやじーちゃんはきっと、カゲミツにこれを知らせるために……。
「そして、俺に儀式の真実や今回の情報を教えてくれた人は一人じゃないとさっき言ったな」
……。
「ヨシュアと共に行動していた存在……その人の表の顔についてはお前らも良く知っているはずだ」
俺達も知っている人間が……?




