Rati 46. 6年越しの友情
「ヤマト……ちょっと……」
「なんだよ」
歓迎の宴も終わり、夜も更けて静かになったころ。
カゲミツは人目につかない寮の裏へと、俺を呼び出した。
「僕らの目的は、忘れてないよね?」
「あ、あぁ! もちろんさ!」
俺たちは本来、学園内に潜んでいるかもしれないRenatusを探るために。
そして、百合音さんの行方を掴むためにここに来たんだよな。
歓迎会が楽しくて忘れるところだった。
「捜査は明日から開始するよ。 今日はゆっくり休もう」
「ユリネさん、絶対見つけ出そうぜ」
「うん……」
伝えたかったことはそれだけじゃないはずだ。
カゲミツは何か俺に伝えたそうに、その場から動かずにいる。
「まだ何かあるのか?」
「僕はちょっと事情があって、別で用意された部屋に泊るから……」
「え? なんでだよ」
「……」
――――――
Rati 46. 6年越しの友情
――――――
俺の問いにカゲミツは押し黙ってしまった。
寮では集団生活を学ぶため個人部屋が無い。
モモちゃんが言うには、今は寮生のほとんどが帰省していて部屋を広く使えるはずなのに。
それに、皆で泊まるのなんて合宿みたいで絶対に楽しいのにな。
もったいないぜ。
まさか、一人で……?
「おい、まさか一人でRenatusを探る気か?」
「違うさ……」
カゲミツは何かを考えこむようにしている。
何かの作戦か?
「ソウルキャスターが一人でいれば、Renatusも目をつけやすいだろうからね」
ここは全寮制。
生徒が一人になる事はほぼなく、個人で行動すればヤツらから狙われやすくなるかもしれないという。
「つまりは、囮ってやつか!」
「まぁね。 上手くいけばすぐにRenatusの行方も掴めるかもしれないってワケさ」
いつの間にそんな事を考えていたんだ。
でも、当然か。
カゲミツにとってこの任務は姉貴の、ユリネさんの行方を掴む大チャンスなんだ。
普段からカゲミツは真面目だけど、きっといつも以上に真剣に取り組む気だろうな。
「僕が狙われたら君に連絡をするから。 それじゃ、よろしく頼むよ」
「あぁ。 ハク、カゲミツの側にいてやってくれ」
俺の声掛けに霊体となっていたハクが姿を現した。
ハクも元々その気だったようだ。
「言われるまでもない。 携帯が使えない状況なら、妾がすぐにヤマトへ言伝をしよう」
「助かるぜ」
「僕の事は心配しないでいいさ。 柚鬼もいるし……」
確かに、カゲミツには超強い相棒の鬼がいる。
だけど……この前ショップで対面した面をつけた男。
あいつにも適正者としての相棒がいて……魔術も使えるヤツだ。
もしああいったヤツが相手なら、カゲミツも危ないはずだ。
「バカヤロウ。 相手は得体が知れないんだ。 もしもの事があったら……ユリネさんとも会えなくなるかもしれないだろ」
「……うん。 それも、そうだね」
「この件の事は、サクヤにも頼まれてっからな。 お前をちゃんと守ってやれって」
俺がそう言うと、カゲミツは軽く吹き出した。
なにかおかしかったか?
「なに笑ってんだよ」
「ごめんね。 レヴルナは言うまでもなく、体術もまだ僕の方が強いのにさ、おかしいなって思っただけさ」
「……それもそうだな」
なんか変な空気になっちまったけど、ともかく明日から捜査開始だ!
「じゃ、今日はゆっくり休むんだよ。 明日から頼むよ、ヤマト」
「もちろんだぜ! 絶対ユリネさんを見つけて取り戻そうぜ!」
「……ありがとう」
俺はカゲミツと別れて大広間へと戻った。
皆が寝静まっている中で、一人の友人が俺を待って起きてくれていたようだ。
「モモちゃん。 起きてたのか」
「ヤマト。 カゲミツの兄貴は?」
「カゲミツは別の部屋に泊るってよ。 囮をするつもりらしい」
「ったく兄貴らしいな」
それより、寝ているとはいえ皆がいる前でヤマトって呼ぶのはやめてほしいぜ。
もしかしたら起きて聞かれてるかもしれないしな。
そう伝えると、モモちゃんは軽く平謝りして、縁側に腰掛けた。
「わりぃ、タケル」
「いいって」
何か用事があるのかと思って、俺もモモちゃんの隣へと腰掛ける事にした。
今日は星が良く輝いてるなぁ。
「なぁ。 Renatusを見つけるの、俺も協力すんぜ」
「それは、流石にあぶねーって」
何を言い出すかと思えば、モモちゃんは俺達の任務に協力すると言い出した。
「カゲミツの兄貴にはお姉さまを探すっていう別の目的があるよな。 だったら早くRenatusの件を解決した方がいいんじゃねぇかって思うんだ。 そうすりゃお姉さまを探すのに時間が充てられるだろ?」
「確かに、それはモモちゃんの言う通りだけど……」
Renatusの件。
それを追えば俺たちは自然とユリネさんに近づくと思い込んでいたけど、よく考えればそんな保証はどこにもないわけで……。
学園を賑わしているRenatusの件を解決すれば、夏休みの間はユリネさんを探す事にベットできるって事か。
でも、流石にモモちゃん達に手伝わせるのは……。
「タケル。 俺はよ、お前に負けて、隣地区のレッドに負けてカゲミツの兄貴に助けてもらってから、お前らには特別な何かがあるんじゃねぇかって思ったんだ」
……。
「そして、お前にリベンジするためにレヴルナの腕を磨いてきた……けど、今はそれだけじゃねぇんだ」
「お前がおかしな儀式に巻き込まれたって聞いて、下手をすれば廃墟の肝試しでも死にかけてたかもしれないって思うとよ……」
「俺ぁ……すげぇ悔しかったんだ……」
モモちゃんは、俺達が魂を賭けた戦いに臨んでいたことを知った時。
年長者として何もできず俺達を守れなかったことを悔やんでいたらしい。
そして、あの日からモモちゃんがレヴルナや体術の腕を磨いていた理由……。
「お前のじーちゃんが言ってたろ? 目的を持てって。 俺は、友達のために戦いたい。 2人の力になりてぇんだ。 頼むぜ……!」
「モモちゃん……」
ずっと、俺達の事をそこまで考えてくれてたのか。
そこまで漢を見せられたら、俺は……俺は……。
「くぅ~、泣けるぜ……! モモちゃん、ありがとうな。 明日カゲミツに掛け合ってみようぜ」
「あぁ。 その涙は兄貴のお姉さまが見つかった時にとっておけ。 この一年、俺だって寝てたわけじゃねえのを見せてやるぜ」
――――――
(ったく、聞こえてんだよ。 三バカトリオ……)




