Rati 43. 潜入!朱鳥ノ宮!
「どうぞ、お入りください」
「「失礼します!」」
お高そうな木材で作られたハイグレードな扉。
シンプルながらも一目で高級と分かる洗練されたその扉にカゲミツは緊張感を感じさせずに手をかけている。
「よくきてくれました。 さ、まずはこちらにお掛けになってください」
カゲミツと共に部屋へと入り俺達を出迎えてくれたのは、態度の柔らかい、それでいて芯が強そうな雰囲気のおじさんだ。
来客用のソファに腰掛けるように促され、俺たちは自然と横並びに座った。
無意識的に言う事を聞いてしまいそうな風格を漂わせた人だ。
なんだか、緊張するぜ。
「私は播磨 丸邇彦と言います。 この朱鳥ノ宮学園で校長を務めているよ」
この人が、朱鳥ノ宮の校長せんせー……。
優しくて和やかな雰囲気なのに、どこか恐れ多い懐の深さを感じるぜ……。
「宇良々 景光です。 本日は、ご依頼を下さりありがとうございます」
「あ、天村 大和。 11歳です! カゲミツの補佐として同行しました! よろしくお願いします! 夢は世界の皆とレヴルナを楽しむことです!」
自己紹介を終えるとカゲミツに肩肘でつつかれてしまった。
俺、何かいけない事をしちまったのか?
「ははは! 面白い子だ。 君達の噂は聞いているよ。 八咫烏の若きホープと、ジュニアチャンピオンが来てくれるなんて光栄だ」
大らかそうな人で良かったぜ。
本当はじーちゃんみたいな頑固オヤジかと思って少しヒヤヒヤしちまった。
この事は胸の中にしまっておくとしよう。
「さて、話の本題に移るが……君たちには学園で暗躍するカードギャングを見つけてもらいたい……」
今回の任務は今までと違う。
学園に潜むカードギャングを調査し、発見する任務。
俺はこの前、オープンキャンパスでユリネさんらしき人と遭遇した。
その事情を知ったじーちゃんが、数日前に依頼を斡旋してくれたんだ。
――――――
Rati 43. 潜入!朱鳥ノ宮!
――――――
「朱鳥ノ宮に潜入したい」
いつもの修行の合間に、カゲミツはいきなりおかしなことを口走った。
オープンキャンパスに行かなかったのに、そんな事を言い出すって事は……。
「やっぱり、ユリネさんの手掛かりか?」
「あぁ。 このままモタモタしていれば、姉さんは学園から離れてしまうやもしれないからね」
カゲミツはこの前のオープンキャンパスに行かなかったことをひどく後悔していたもんな。
まさか、学園に入学しているかもしれないなんて夢にも思ってなかったみたいだし。
「潜入っつたって、どーすんだ? 特別講師としては実力が許されても、法律が許さなそうだぜ」
「それは……真夜中に侵入するとか……」
「お前はバットマンか!」
「ごめんね。 君に聞いた僕が間違っていたよ」
「拗ねんなよ~。 じーちゃんに話しを聞いてみようぜ」
修行を終えて、俺たちはユリネさんの行方を捜すために道場でじーちゃんへと朱鳥ノ宮へと入り込む方法を尋ねた。
「うむ。 ちょうどカゲミツくんにうってつけの話があるぞ」
じーちゃんの話によれば……。
この前モモちゃんが言っていたように、朱鳥ノ宮にRenatusが暗躍し生徒からカードを奪い取ってるという噂があるという。
しかし被害にあった生徒が実際にいたと確定したわけではなく噂のようなもの、となっているらしい。
「被害者がいない……?」
そこで、じーちゃんは本題を話し始めるかのように神妙な表情へと変わった。
「そうじゃ。 新学期が始まってから、友人が以前持っていたカードを次の日には失くしているという報告が生徒からちらほら合ってな」
「脅されているのか分からんが、被害者らしき生徒も何故か口が堅いのじゃ」
「おかしな事に、夏休みになってもその報告がいくつか上がっている」
「そこで何が起こってるか手掛かりを掴むべく監視の目を強めようという話が出ていたんじゃ」
そして、高等部で頻発していたその報告に対して中等部の生徒側から監視をすればカードを奪い取る実行犯を見つけやすくなるかもって事みたいだ。
カードを奪い取る実行犯が高等部にいたとして警戒の薄い中等部からなら正体や情報を掴みやすい、という考えらしい。
つまりは……
「中等部に入り込むって事か!」
「うむ。 その話が出た時にカゲミツくんを既に儂から推薦している」
「ありがとうございます。 なんてお礼を言えばいいか……」
「気にする必要はない。 これは学園からの正式な依頼として処理している。 実行犯を探すついでに、ユリネちゃんの手掛かりも探すといい」
……よし、これで朱鳥ノ宮に入り込める口実ができたな!
「よっしゃ、カゲミツ! 絶対にユリネさんを見つけ出そうぜ!」
「何を言っておる。 ヤマトは推薦されておらんぞ?」
「え?」
「ヤマトは推薦されておらん」
「エッッー!?」
――――――
なんて事があって俺は朱鳥ノ宮に入れなかったはずだけど……楽市楽座のハジメさんに加えて、あのスペシャルTが俺を新たにこの任務へと推薦してくれていたんだ。
スペシャルTは八咫烏に属し、じーちゃんやハジメさんとも面識があるという。
そこで、カゲミツの補佐として俺も朱鳥ノ宮に潜入できるようになったんだ。
「君達を見てると、なんだか昔を思い出すなぁ」
「昔ですか?」
校長先生は少し遠い目をして呟いた。
「あぁ。 私も君たちのように髄継さんの下で修業をしていたんだよ」
「校長先生もじーちゃんのところで!?」
「そうさ……そして、君の憧れているスペシャルTやハジメと一緒にね」
校長先生は若き頃、スペシャルTやハジメさんと共に修行を積んでいたんだ。
日々切磋琢磨し、俺たちみたいに心・技・体を鍛えていったという。
3人でじーちゃんの厳しい修行を抜け出す事もあったらしい。
そして、一人は最強のプロに、一人は世間に紛れて情報収集を行い、一人は学園長となったって事か。
「すげー……! って事は校長先生も相当強いんですね! どのくらい強いんですか!?」
不思議な縁に感激していると、カゲミツは声を潜めて注意してくる。
「ヤマト……。 失礼だよ」
「ははは。 構わないさ、どうか君たちも楽にして欲しい」
「恐縮です……」
う……。
思わずテンション上がっちまったぜ。
俺だって下っ端だけど組織の一員なんだ……。
カゲミツやじーちゃんの顔に泥を塗らねーようにしないと。
「君たちは若いんだ。 青臭いくらいがちょうどいい。 話の続きと行こうか」
これから、俺たちは転校生という扱いで部活動に入る事になる。
そして、全寮制であるこの学園に身を置いてRenatusの尻尾を掴む事が依頼の目的だ。
それとは別に俺たちは……ユリネさんの情報も探したい。
先生たちはこの事情を知っているけど、生徒達には一切知られていない……。
というのが、これまでの話のまとめだ。
「暗躍している存在は尻尾を隠すのが上手くてね。 顔が知れてる高等部の子より中等部……それも一年生の子なら、警戒が薄まるかもしれない」
カゲミツと相談した結果、今回の犯人は手口が巧妙だ。
下請け組織のRenatusの可能性が高いとはいえ、Lupinusのように本部の人間かもしれない。
そいつを割り出して捕まえれば裏に隠れて活動している儀式の組織の事も何かわかるかもしれない。
そして……あの儀式の日に俺やサクヤを気にかけてくれた仮面をつけた女の人……。
ユリネさんもその組織に属しているはずだ。
学園に潜むRenatus。
ぜってー見つけ出してやるぜ!
「これからよろしく頼むよ。 中等部一年、宇良々 景光くん、天村 大和くん」




