Rati 42. 姿を消した孤児
「久しぶりだな、ヤマト」
「モモちゃん! なんかでっかくなったな!」
「へへ。 中学生だからな、一番成長するんだぜ」
俺はモモちゃんと握手を交わし抱擁を経て、再会の喜びを分かち合う事が出来た。
リリムさんとのバトルは中断されちまって残念だけど、そんな気持ちも爽やかに吹き飛んだぜ。
「それより、ヤマト。 お前、こんなとこで何してんだ?」
「俺は……道に迷って上級生に誘われて……。 モモちゃん達こそどうしてここが分かったんだ?」
「あぁ、俺はな……お前が迷子になったかもってサクヤに聞いたんだよ」
どうやら、皆に心配かけちまったみてーだ。
「もう、心配したんだから!」
「ったく心配しすぎだって。 ここはあの朱鳥ノ宮だぜ」
この学園は、生贄の儀式に対抗するためにじーちゃんも属していた八咫烏が設立した学園。
この場所で悪事なんて働けないはずだ。
モモちゃんも一連の事情は把握しているから、ここが安全だと分かっているはずだ。
「それがな、近頃わりぃ噂が流れてんだ。 Renatusがこの学園に潜入してるかもしれねぇって噂がな」
「Renatusが……!?」
「あぁ。 事実はハッキリしてねぇ。 ただ……この旧校舎にRenatusが集まってるかも、ってな」
……リリムさんは、カードギャングのRenatusの一員だったのか?
でもRenatusは、生贄を推し進める勢力の下請け組織。
ほんでもって、その事情を知っている存在は、公式プロのLupinusくらいだろうという話だったんだよな。
Lupinusは、儀式の組織に幹部として属しながらも下請けであるRenatusのボスを務め直接管理している……って話だったはずだ。
「お前とバトルしていた人、こっちからはよく見えなかったが、名前は聞いたか?」
「リングネームは聞いたぜ。 リリムって名乗ってた」
「リリムか……」
モモちゃんは学園生が持ち歩ているパッドを取り出して登録名簿を確認していってるようだ。
「リリムなんてプレイヤーは……朱鳥ノ宮にはいねぇ……」
……。
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Rati 42. 姿を消した孤児
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あの後、部活動体験へと参加しそびれた俺は、サクヤ達と体験授業に参加して……オープンキャンパスを終えた。
その後、久しぶりにモモちゃんとレヴルナをやったり、部活の事を聞いたんだ。
「とまぁ、オープンキャンパスはこんな感じだったぜ」
「……」
修行の休憩中、俺はカゲミツへとオープンキャンパスの出来事を話し終えたら、考える銅像のようにして固まってしまった。
「どうした?」
「……」
「カゲミツさんやーい」
「……」
「いけユズキ、つのドリルだ」
「拙者はぽけもんではない」
……。
試しに、カゲミツの耳元に息を吹きかけてみよう。
「ひゃぅっ……!」
「ひゃぅっ?」
カゲミツは俯いて身をぷるぷる震わせていた。
普段はクールを気取るあのカゲミツくんもそんな声出すんだなぁ!!
「ははは!! ひゃぅっ……! だってよ!!!」
「何するんだ、バカ!!」
「いでっ!」
正気に戻ったカゲミツは勢いよく背中をはたいてきた。
なんだよ、全然元気じゃねーか。
「眠っちまったのかと思ったぜ。 なにを考えてたんだ?」
「あぁ……」
「なんだよ、もったいぶんなよ」
「君が戦った女性……もしかして……」
やけに真剣な表情をするカゲミツに飲まれて、俺もいつの間にか息を潜めて続きの言葉を待っていた。
「姉さん、かもしれない……」
「嘘だろ……? 朱鳥ノ宮に在籍してるって事か?」
「当然詳しい事は僕にも分からないけれど……可能性は高いと思う……」
出会いを歓迎してくれて、紅茶を入れてくれて……。
ソウルゲームで俺を試していたお姉さん……。
リリムさんは……カゲミツの姉貴、ユリネさんだったのか?
「でもよ! なんでそんな! もしユリネさんだったらなんでバトルした時に俺に教えてくれなかったんだよ!」
「それは……最初に僕がそうしたみたいに、君を儀式に関わらせるべきか悩んでいたのかもしれない……。 ただの推測でしかないけど……」
「それで俺を試したって事か? でも、なんで……なんでカゲミツにも教えてくれねえんだよ!」
カゲミツはユリネさんが生きてると信じて一人で戦ってきたんだ。
それなのに、あの人は……カゲミツとも会えるはずなのに……。
「分からない。 けど、確かな事は一つ。 彼女が姉さんと言える可能性……」
「可能性……?」
「リリムという呼び名……それは、ラテン語で百合……」
「百合……!」
百合の花はラテン語でリリウムというらしい。
それは百合音さんを模した名前だったんだ。
そして、紹介していないのにサクヤの事も知っていた……。
あの時、リリムと名乗った理由は……自分は生きているという事を、俺やサクヤ……そして一番にカゲミツへと知らせる事だったんだ。
「そ、そう言う事か……くそっ! 俺ってば全然気づかなかった……ごめん、カゲミツ……」
ユリネさんを取り戻せるチャンスだったのに……。
ちくしょー……。
拳を握り締めても何も変わらないのは分かってる。
けど、この行き場のない悔しさをどうすればいいのか、俺にも分からないんだ。
「ヤマトのせいじゃないよ。 姉さんが生きてるって分かった……絶対に姉さんだよ……本当に、生きていたんだ……」
「……」
俯いたカゲミツは、地を濡らし、鼻をすすっていた。
百合音さんを呼び戻せなかった自分の不甲斐なさと、本当に百合音さんが生きていたという可能性に喜ぶ思いが胸の中で混ざり合って、言葉では表せないような複雑な気持ちが胸の中に湧いてくる。
カゲミツが感情に翻弄される初めての姿に、その気持ちが痛みへと変わっていくのを感じて、俺は何も言葉が出ず……。
ただ隣でカゲミツの背中をさすってやることしかできなかった。
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5章‼ ~行くぜオープンキャンパス!そして、思わぬ再開……?~:終幕
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