Rati 28. 予行演習……?
「なんだぁ? このガキんちょ共はぁ」
おそらく先に広間にいたであろう面の男が、俺達を2階から見下げていた。
「カード、ギャング……?」
「人をギャング呼ばわりたぁご挨拶な奴だな。 俺たちは【Renatus】。 大義のためにカードを選別してんだ」
「Renatus……? 選別って……?」
「お前らに話す義理はねぇ。 それより、お前らみてーなチビ共が、なんでこんなとこにいんだ?」
――――――
Rati 28. 予行演習……?
――――――
俺たちの間に、公園であの面の男と対峙した時のような緊張感がひた走る。
目の前のあいつは、あの公園でソウルゲームをした男とは違う……?
「俺達はただ、噂になってるこの魔法陣を見るために探検しに来ただけなんだ」
「こんなとこまでご苦労なこったな。 魔法陣はこれから消すんだ、最後に拝めてよかったじゃねえか。 早く帰りやがれ」
「はい、もう帰ります!」
「ったく、なんで俺が後片付けなんざ……」
呟く男を背にして俺は皆へ帰ろうと促し、踵を返した。
その時、モモちゃんがあの日の事を口走った。
「あの日の男とは別人だったのか、今日はソウルゲームをやらなくてすんだな」
「何……? 待て、お前ら」
「は、はい。 なんでしょう?」
「お前ら、ソウルキャスターか?」
俺たちは呼び止められて、男は俺達へと尋ねてくる。
「ち、違いまぁす」
「嘘つくんじゃねぇ、正直に答えろ」
さ、流石にバレたか。
「俺の仲間達と戦ったのか? ここにきたのはカードを取り返しに来たってところか?」
「違いますって。 ただ探検に……」
「これより……仮契約の義を始める」
な、なんだ!?
扉が勢いよく閉められ、急な打撃音に思わず背中を震わせてしまった。
男がおかしなことを口走った瞬間、開いていた扉が全て閉じられた……?
いったい……なんなんだ。
「お前ら【適性者】とかいうヤツか?」
「ただ、公園で面の男と戦っただけだ」
モモちゃんは皆を守る様に一歩前に出て答えた。
「戦ったのはお前か? 祭壇の前に立て」
「違う。 俺だ!」
俺は一番前に出た。
俺は絶対にカゲミツに追い付く。
そして、見つけるんだ。
俺だけの目的、俺だけの強さ。
そして……。
「なんだ、お前か。 見たところお前はデッキを取られていないな。 勝ったんだろう? 相手はどんなデッキを使っていた?」
「負けた……相手は、最強格の聖騎士デッキだ」
「ちっ……てっきりあいつに勝ち星をあげた相手を潰せるかと思ったがしゃあねえな。 お前の相手は俺がしてくれんのか?」
……。
「心配すんじゃねえ、チビ共。 これは普通のソウルゲームだ」
これは、ただのゲーム。
扉は締まり逃げる事もできない。
なら……!
「ヤマト、お前やれるのか? ここは俺が……」
「モモちゃん頼む。 俺、あの一味にリベンジしたいんだ」
「ったく、仕方ねーな。 負けたままじゃ終われねぇもんな」
「……よし、やってやるぜ!」
俺は男に指示されて、祭壇のようなテーブルの前に立った。
相手はカードギャング……さっきは【Renatus】と言っていたっけ。
そのメンバーの一人だ。
修行の成果を試すのにもってこいだぜ……!
「安心しろ。 負けてもお前には何の影響もない。 ただ実験に付き合ってもらうだけだ」
(ヤマト、気を抜くなよ)
「ヤマト、気を付けて」
また声が……サクヤの声なのか?
とにかく今は集中だ。
今度は、俺が勝つ!
「セッション!」「Deo sacrum……」
頼んだ、俺のデッキの一番槍。
「【伝令走狐・疾風】を召喚する」 パワー1000 タイプ:地
「俺は【リトルバット】を召喚」 パワー1000 タイプ:天
コウモリのファーストパートナー。
相手は吸血鬼デッキか?
「リトルバットは、相性が有利な場合パワーが2000となる」
「俺は、スペルコストが−1された疾風ノ舞を発動する」
「コスト無しで発動か。 やるじゃねえか」
これで相打ちだ。
勝負はこれからだ。
――――――
サクヤ「モナちゃん、どうして相打ちになったの?」
モナカ「言葉通り、リトルバットは効果で2000になった。 ヤマトは疾風ノ舞を使って相手のパワーを1000下げたんだ」
サクヤ「でも、相性が有利だからパワーが10%高くなってリトルバットが勝つんじゃないの?」
モナカ「そこに気付くとは流石だね。 サクちゃんの言う通り【地】の属性には【天】が有利なんだ」
「けれど、疾風ノ舞は疾風が使うと、相性効果を無効化する事もできるんだ」
「よってカード効果でパワー2000となったリトルバットは、バトルの相性効果をなくして、最終的なパワーは疾風と同じ1000になったんだ」
サクヤ「そうだったんだ!」
モモミチ「この状況で即座にこの判断をするなんて、修行の成果が出てる証だぜ!」
――――――
バトルも終盤に差し掛かる頃だ、パートナーデッキの残存数は俺が少し不利か。
しかし、その分ソウルコストは潤沢。
仕掛けるなら、今だ。
「仙狐ノ術法師・春風!!」 パワー3000
「なんだ? そんなアイドルカードなんかいれてやがんのか。 なめやがって」
人の姿をした女の子の妖狐のカード。
効果が扱いづらくデッキに入れる人は少ない。
けれど、この仙人の力を有した妖狐が俺の切り札へと繋ぐ架け橋となる。
「バトルだ!」
春風はパワーは低いけど、パワーダウンしている相手の吸血鬼になら勝てる!
「俺は【神器・八重垣ノ剣】を発動。 【春風】に装備させる!」 パワー+2000 相手が天の場合更に+2000
「ここは負けてやるか、次でお前は終わりだ」
……吸血鬼の最終パートナーを出す気か。
俺は防衛の準備だ。
「春風の効果を発動するぜ」
バトル終了時、俺のスペルデッキから任意のスペルカードを供物へと送る事ができる。
次のファーストラウンドを耐え凌ぐんだ。
相手の切り札は……一体何が来るんだ……?
「俺は【紅夜ノ影に潜む支配者 (ドミナトル・ウムブラールム)】を召喚。 バトルだ」 パワー5000
黒のマントを羽織った、不気味に眼光を光らせる吸血鬼のパートナー……!
「あれは……!」
相手の切り札を見て、モナカが狼狽えている。
そんなにやばいカードなのか……!?
「【紅夜ノ影に潜む支配者 (ドミナトル・ウムブラールム)】……究極のパワーを誇るカードと言われている、超強力なカードだよ」
「自分の魂……つまり、ソウルコストを対価に、相手のパワーを5000下げてその分を吸収するんだ!」
そんな効果が?
今は手札を回すしかない……!
「俺は手札から可能な限りのスペルカードを発動する……! パワーは俺の方が上だ!」 パワー10000
「無駄だ。 紅夜ノ影に潜む支配者 (ドミナトル・ウムブラールム)の効果を発動すんぜ。 自らのソウルコストを供物へ送り、お前のパワーを奪い吸収する!」 パワー10000
「春風の効果。 供物にあるカードを発動させる。 空間法術・身代わり!」
「忘れていたぜ、お前が扱うのは地属性のマイナーデッキだったな」
そう、俺のデッキなら春風は強力なキーマンとなる。
身代わりの効果で俺のパートナーデッキは削られない……!
そしてもう一度、春風の効果でスペルデッキから強力な【神器】を供物へ!!
「エンドラウンドを終えて、ファーストラウンドへ!」
「ファーストラウンドか。 俺の紅夜ノ影に潜む支配者 (ドミナトル・ウムブラールム)のパワーは10000。 それに、対価のソウルコストはまだ充分にある。 お前の負けだ」
……。




