Rati 25. 弱さのその先へ……!
俺はよええ。
面を付けた男に惨敗して、それに気付くことができた。
ここからが、俺が本当の強さを見つけ出す第一歩なんだ。
「じーちゃん、頼みがあるんだ」
「……」
「俺は……よええ。 だから……」
「心を入れ替えたようじゃな」
――――――
Rati 25. 弱さのその先へ……!
――――――
「ヤマト、最近どうしたの?」
授業を終えて放課後。
勇気を振り絞って咲夜は大和に尋ねた。
ここ2週間ほど、大和は公園の皆との遊びに顔を出していなかったからだ。
かといって大和はレヴルナをやめたわけではなく、稽古の日にはレヴルナをやっている子達と稽古の前と後に遊んでいる。
咲夜も大和の相手の一人だった。
しかし、大和はあんなに好きだったレヴルナの集まりに顔を出さなくなっていた。
そして、そんな彼の横顔には日々を追うごとに軽い生傷の痕が増えていく。
咲夜はそのことが少し心配で悲しかったのだ。
「用事があんだよ、用事が」
「どんな用事なの? 怪我ばっかして……」
「それは秘密だ。 モナカも、また明日な!」
「あ、待ってよ」
咲夜の想いも緩やかな川のように流され、ヤマトは走り去っていく。
「もう……」
「サクちゃんにも話さないんだね。 いったい何してるんだろ」
一縷の望みである景光にも尋ねるが
「ウララくんは、何か知ってる?」
「僕も知らないよ」
ささやかな希望も打ち砕かれ、心の疑念を深く沈みこませるだけだった。
しかし、その日々曇天模様の心とは今日でおさらばだと咲夜は気を取り直した。
「じゃ、予定通りね。 行くよモナちゃん」
「モモちゃんには僕が連絡しとくね」
「お願い」
そして、もう一人の大事な友人へと咲夜は声をかけた。
「ウララくんも来なよ」
「僕は……残念だけど用事があるんだ」
「ふーん。 今度、その用事も教えてね!」
お互いに意識の片隅で気遣い合い、咲夜は大和の隠し事を暴くためモナカと共に飛び出した。
咲夜達は、これから大和の跡をつけ、彼が何をしているか確かめようしていたのである。
しばらく行き大和の後ろ姿を見つけた咲夜と最中は、慎重に後ろをついていく。
「ここって……」
辿り着いた場所は、大和の家から少し歩いた場所に在る信仰の厚い霊山だった。
そこでは、今でも修験者や神職が時折、修行や自己改革のために訪れる事がある。
後に大和はメインルートの道なりから逸れて、奥地へと入っていく。
「行くよ、モナちゃん」
「え~、危ないよ~」
山道で咲夜を一人にすることもできずに、小声でやいのやいの言いながらも最中もあとについていく。
「ついた。 ここって……」
咲夜たちが息を切らしながらやっとの思いで辿り着いた場所には、少し開けた場所に素朴な小屋が一棟立っていた。
その地に足を踏み入れた途端、心地よい空気に身を包まれるのを感じそれと同時に小屋の扉が開く。
小屋から出てきた存在は、大和の祖父だった。
「ヤマト。 跡をつけられたようじゃな」
――――――
「え? お前ら! なんでこんなとこにいんだよ!」
テーブル代わりの平たい板にお茶を並べ、俺は二人の事情を聞くことに決めた。
「……つまり、俺が心配でわざわざこんなとこまで来たってのか」
「だってヤマト、なんにも話してくれないから……」
この山道は通いなれた俺にとってもやっぱりまだきつい。
なのに二人は休みなくついてきたのか。
ったくやるじゃねーか!
「……それにしても疲れちゃった。 ここで何してるの?」
咲夜はまだ少し心身ともにゆとりが見えるけど、モナカに関しては今にも魂が口から出そうなほど呼吸を荒くし意気消沈している。
モナカは運動タイプじゃないから仕方ないか。
さて、ここまで来た二人に免じて俺の秘密を教えてやるか。
「修行だよ。 修行」
面を付けたカードギャングの男に負けてから、俺は修行をしていたんだ。
何をするにも実力を発揮するには、心・技・体が重要だという事。
それは多くの武道やスポーツにも通じていて、レヴルナも例外じゃないと俺はミスターTに気づかされた。
どんな展開にも動じないで、冷静に状況を見極める心。
痛みや精神的苦痛、それに負けないためガッツやスタミナを付けるための体。
この二つはじーちゃんの稽古を通して鍛える事ができると俺は考えたんだ。
そして、最強となった俺を見せて驚かせようと思ったんだけど、こんな形でバレちゃうなんてな。
俺の考えを聞いて、二人は心のモヤモヤが晴れたかのような顔をしていた。
「そうだったんだ。 でもレヴルナにそんなのが本当に必要なの?」
咲夜の疑問に対し、疲労困憊していたモナカの顔に生気が戻った。
まるで水を得た魚だ。
「あながち間違いでもないよ。 レヴルナの学園【朱鳥ノ宮】では、心・技・体も重点的に鍛えていて、多くのスポーツや武道にも力を入れてるんだ」
モナカは疑問に答えたことに満足したのか再び息が荒くなった。
お前は中山きんにくんか。
「あぁ、だから咲夜がレヴルナを強かったのもそれが理由かもな」
「ふーん」
分かってもらえたか。
「それじゃ、休んだら帰れよ」
「ねぇ! 私も修行したい!」
「は?」
「私だって、せっかくレヴルナをはじめたんだから強くなりたいもん。 ね、モナちゃん」
サクヤはそう言ってモナカに振り返る。
けど、モナカの表情は呆然としそれは正気の沙汰じゃないといっているかのような表情だ。
「さ、サクちゃん本気?」
「3人でコソコソしてると思ったら、カードギャングと戦ってたなんて信じらんない。 私だって強くなって皆の力になるんだから!」
「う、うそでしょ~。 よく考えたら危ないし、それはもうやめたほうがいいよ~」
サクヤは、カードギャングとの戦いまでするつもりか。
そこまで仲間外れになった事を根に持っていたのか。
「そうだぜ。 モナカの言う通りだ。 俺達ももう戦うつもりはないし……」
「でも、もし目の前でカードを取られた子がいたらヤマトは無視できないでしょ?」
「そ、それはな……。 じーちゃんも何か言ってくれよ!!」
俺はじーちゃんに援護射撃を頼んだ。
腕を組んでいたじーちゃんは、ニンマリとして口を開いた。
「よいではないか。 そのおかしな窃盗集団と戦うかは別として、心身を鍛え真の強さを目指す事を拒否する権利は誰にもないからのう」
「う、うそだろぉ~」 「うそでょ~」
俺とモナカの声が重ね合わさるが、その呟きは女の子一人の覇気に蹴散らされていく。
「よーし! 私だって更に強くなって、学園を目指すんだから!」
そういえば……。
「なぁ、モモちゃんはきてないのか?」
「「あっーーー! 忘れてた!」」
――――――
「ハァハァハァ。 あいつら、どこにいんだよー!!」




