Rati 20. 宝探しの始まり
俺は、負けた……。
「くっそー!!!」
「ヤマト!」
はぁはぁはぁ……。
また、負けた。
また、何もできないで負けた……。
道を走れば走るほどに、息が切れていく。
カゲミツや皆が俺をバカにするような振る舞いが思い起こされて、鉛のように足が動かなくなっていく。
でも、今はどれだけ動かなくなっても、この足を無理矢理にでも動かさないと。
自分の中の心が、今までレヴルナを楽しんでた想いまでもが潰されてしまう気がして、とにかくあの場から逃げたかったんだ。
気が付いて辺りを見回せば、自分の家の近所まで一心不乱に走っていたみたいだ。
「ハク……迎えに来てくれたのか……」
「コーン」
……カゲミツはなんで、あの時、俺のところへ来たんだろう。
わざわざ俺の事をバカにしにきて。
皆に言われたのか?
そんなに俺に負けて欲しかったのか?
……くそ、きっとまた皆で俺をバカにしてるんだ。
(ヤマト……)
え?
「ヤマト選手。 良い勝負だったぞ」
「……あなたは!」
――――――
Rati 20. 宝探しの始まり
――――――
「あなたは、公式MCの【スペシャルT】……」
「違う。 【ミスターT】だ!」
「……ほ、ホンモノ?」
初代全国大会王者のスペシャルT。
そして、公式MCのミスターTはスペシャルTと同じ人と言われている。
話すときはボイスチェンジャーを使用していて……同じかどうか真実は不明だ。
たしか、公式からも同一人物かどうかの明言はないんだ。
でも俺達の間では、同一人物と信じ込んでいるプレイヤーが多い。
スペシャルTはミスターTと同様、ヒーロースーツで身を包み頭には仮面をつけている。
真の姿だけではなく、その素性も謎に包まれた存在。
そして、俺の一番の憧れのソウルキャスター……。
「俺がホンモノかはどうでもいい。 さきほどの試合見ていたぞ」
「え? まさか、公式MCとして……」
気付かなかった……。
あんなバトルをスペシャルTに見られていたのか……。
「観客も何とか食らいつこうとする君の姿に胸を打たれていた」
「そんな……お世辞なんて……」
「世辞じゃない。 君は、バトルにおいて大事なモノを持っている」
世辞じゃない。
彼の言葉は偽りのない澄んだ槍のように、まっすぐに俺の胸にささった。
けど、それが痛い。
なら、俺はなんで負けたんだ?
「大事な、モノ?」
「最後まで戦い抜く、諦めない心だ」
「でもそれなら、俺はなんで……なんで何もできずに負けたんですか?」
「それは勝つことに重要なものじゃないからだ」
……。
「心・技・体、勝負に勝つにはこれらをコントロールしなければならない」
「バトルに一番大事なモノは諦めない心。 しかし、勝利のためには強い心だけに振り回されず、全ての感情をコントロールする心が重要なんだ」
コントロールする心……。
俺はカゲミツの時だけじゃない、今回も……。
負けるかもしれないと思ってゲームに臨んでいた。
「大事なモノを胸に秘めつつ、どんな状況にも左右されない精神力。 それを身に着けて初めて自分の実力を、心・技・体を活かせるんだ」
心・技・体。
スポーツでよく聞く言葉。
それはウチの道場でも重要視されている言葉だ。
「そして……今回のバトルで君が出せなかったモノ。 バトルより、勝利より、最も重要なものは、既に君は持っているはずだ……」
最も重要なもの……?
「それって、なんですか!?」
彼は、その宝の在りかを示すように俺の胸に人差し指を突き立てた。
「恐れるな、その答えは既に君の中に在るはずだ」
「俺の、中に……」
「ヤマト。 それを探し、再び見つけた時は握りしめて絶対に離すな」
……。
「俺はもう行こう。 なんせまだイベントの予定があるからな、このままでは遅刻してしまう!」
「ありがとう、ございました……」
「アデュー!」
……俺の中に在る、最も大事なもの。
俺は、これからそれを探そう。
そして、見つけた時にはスペシャルTの言う通り、絶対に離さないんだ。
「ママー! ヒーローが走ってる!」
「見ちゃいけません!」
……やっぱりスペシャルTはかっこいいぜ。
その日の夕方。
俺は、風呂に入り寝床に着けば、すぐに眠気が襲ってきた。
早いけど、もう寝よう。
今日はぐっすり眠れそうだ。
スペシャルTは俺を認めてくれている。
憧れの人が、俺を認めて期待してくれてるんだ……。
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「遅くなりました。 義父さん」
「真夜中までご苦労じゃ。 牽制は上手くいったか。 念を入れて監視を強めて良かったわい」
「ですが、油断なりませんね。 あいつは隙あらば、という感じでした。 俺やカゲミツくん、周囲の監視員を見て、考えを変えたんでしょう」
「そうか……カゲミツくんとは顔を合わせたのか?」
「いえ。 彼とは直接会っていませんが……俺の正体に気付いているのかどうかは、彼のみぞ知るといったところでしょうね」
「それにしても、ヤマトは散々だったようじゃな。 あの子の顔を見ればわかるわい」
「確かに惨敗でした、でもヤマトはまだここからです」
「……今日からが、ヤマトの本当の旅の始まりかもしれんな」
「ええ。 俺達が、ヤマトを。 若人たちを守れば必ず、計画は達成されるでしょう」
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2章‼ ~七転八起!! 新たな旅の始まり……?~:終幕
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