Rati 14. 視えざるモノ
カゲミツは……カゲミツじゃない……?
立ち込める湯気に包まれて、熱い湯の中で記憶を掘り返していく。
俺が幼い頃……道場に通っていた子供……。
……。
その数人の子供たちの中の一人が、カゲミツなのか?
そして、その子供は名を変えている?
『カゲミツくんは、カゲミツって名前じゃないのかもしれないとしたら……?』
『そんな事あるかぁ? 大体、なんで名前なんか変えるんだよ』
『うーん……私も分かんないけど……』
昨日のサクヤとの話が頭に浮かび、更に混乱してきた。
あーもう、分かんねぇ!!!
息を止め湯に潜り、頭がオーバーヒートしそうな瞬間。
俺は名案を思い付いた。
「そうだぁ!」
――――――
Rati 14. 視えざるモノ
――――――
「じーちゃん!」
そうだ、分からなかったらじーちゃんに聞けばいい。
あの日にカゲミツと何を話していたのか、そして……。
本当にカゲミツはウチの道場にいたのか。
「どうした、ヤマト」
「この前、カゲミツと何を話していたんだ?」
「なに、他愛もない話じゃ。 お世話になっていますと挨拶にきてな」
「え? カゲミツはやっぱり……ここの道場にいたのか!?」
「お世話とはその事じゃない。 少し外であの子を指導した時期があったんじゃ」
「そう、だったんだ……」
カゲミツは、ここにいたわけじゃないのか……。
次の日、俺は公園でレヴルナを楽しんでいる途中、サクヤにそのことを話していた。
じーちゃんは、道場外でカゲミツの指導をしていた事を。
「……そっか、おじーさんはウララくんと面識があったんだね」
「あぁ、そうみたいだな」
じーちゃんは外部指導員として外で武術を教える事も多い。
その中の一人にカゲミツがいたってだけの話だ。
「それじゃ、これもたまたまかぁ……」
「あ、それ……!」
サクヤは道場生が写る集合写真を、夕日へと翳した。
俺の部屋の片隅にも同じ写真が飾ってある。
「この写真の子、ウララくんに似てない?」
「え……? そいつって、ウララ……」
俺達と一緒に笑顔で写真に映る少年。
そいつの名前は【ウララ】。
幼い頃、俺とサクヤとウララは年が全く同じな事もあって仲が良かったんだ。
そして、カゲミツの本名は、宇良々 景光。
「確かに、でも名前と苗字が逆だしあんま似てないんじゃねーか?」
「そうかなぁ……」
「それによ、ほら……ウララには姉貴がいたろ?」
写真にはウララの姉ちゃんも映ってる。
見た目からして、ちょうどこの時は俺達と同じくらいの年なんじゃねーかな?
ウララの姉ちゃんは3人並んで映る俺達を後ろから抱きしめてくれている。
今こうしてみると少し照れくさいな。
「カゲミツくんは一人っ子って言ってたし。 やっぱ偶然かなぁ……」
「そうだろ、きっと」
でも懐かしいよなぁ、こうしてちゃんと見るのはいつ以来だろう。
「ははっ。 ハクも映ってらぁ!」
「………………」
神社に住み着いていたらしいハクは、ウララとも仲が良かったんだっけ……。
俺がハクと友達になって、ウララに紹介したんだ。
それくらいから、段々ウララは姿を見せなくなって……。
……道場に、こなくなったんだ。
「ヤマト! 大ニュースだよ!!」
「どうした、モナカ!」
サクヤと共に夕日の空に思い出を馳せていると、近くの駄菓子屋に買い物に行っていたモナカ達が帰ってきた。
そしてもってきたチラシを広げ、声を上げた。
「これ見てよ!!!」
「レヴルナのジュニア大会だって!?」
「全国大会と比べたら小規模な大会だけど、優勝者特典を見てよ!」
「優勝者には、Lupinusとの特別エキシビションマッチだとぉ!?」
Lupinusさんと言えば、この前の全国大会エキシビションマッチで全国大会初代王者のスペシャルTと対戦していたレヴルナ公式プロプレイヤーだ。
そして、様々な公式大会の実況、イベントのゲストなどとして参加している俺たちの憧れの存在の一人。
「それに、年齢制限もほら」
「15歳以下限定大会……! 俺達も参加できるってことか!」
それに、これなら充分チャンスもある……!
「レヴルナの学園、朱鳥ノ宮を目指すなら実績作りにもなるんじゃないかな」
「なるほどな……こりゃ楽しみになってきたぜ!」
俺達の声を聞きつけて、続々と周りの友人達が集まってきた。
皆大会に興味津々な様子だ。
新たな楽しみができて盛り上がる皆は、モモちゃんの掛け声で一まとめになった。
「ようし、お前ら。 今日から特訓だぁ!!!」
「「おー!!!」」
Lupinusさんとのエキシビションマッチ。
この切符を掴めれば、憧れのスペシャルTに近づけるかもしれない……!
そして、カゲミツ……この大会で、お前にリベンジしてやるぜ!!




