Rati 12. 戦う理由
「ヤマト。 どうしたの? ボーっっとして」
「……」
「コラーッ!! 稽古の時間じゃぁ!!」
「おわッ! ごめんじーちゃん!」
って今は学校のグラウンドだ。
あの頑固オヤジが小学生達に混ざって遊んでるわけがない。
「なんだ、サクヤかよ」
「なにかあったの? 朝から元気ないけど」
我に帰れば、サクヤとモナカが俺の顔を覗き込んでいた。
「実は……」
――――――
Rati 12. 戦う理由
――――――
「俺、カゲミツとバトルした」
俺の言葉を聞いたモナカが、少し興奮し声のトーンが数段あがる。
「カゲミツくんと!? もちろんヤマトが勝ったんだよね!?」
「おい、聞こえたぜヤマト。 カゲミツの兄貴と戦ったのか?」
休み時間友人と遊んでいたモモちゃんまで、混ざってきた。
……今から結果を教えるのが億劫になる。
「ていうか、いつから兄貴になったんだよ」
「カゲミツはあんなリスキーなカード使いこなしてんだ。 それに対抗戦やその前に俺を助けてくれたからな、俺の兄貴に決めたんだ」
そういえば。
後から聞いたけど、あのカードショップで一人で立ち向かうモモちゃんを止めてくれてたって話だったっけ。
それで、ライカンスロープを捕られたモモちゃんに、カゲミツは自分の切り札の一枚を貸してくれていた。
カゲミツは楽市楽座で俺達と一緒にいたのに、知らない間にモモちゃんについていっていたらしい。
今回のソウルゲームも相まって、カゲミツの得体の知れなさは深まるばかりだ。
「んでどうだったんだよ。 早く結果を教えろよ」
皆の真剣なまなざしが、俺の心を射抜いてくる。
言わなきゃダメか。
「結果はもちろん……」
……。
「俺の、惨敗だった……」
「嘘、でしょ……?」 「そうか……」
カゲミツは強かった。
それは勘付いていたんだ。
でも、あいつは。
あいつは……俺の予想の遥か先を行っていた。
まるで、カゲミツとのソウルゲームは……挑戦者を容赦なくふるいにかけるでっけー山の頂に立ち向かっているような気分だった。
俺の戦法を悉く読まれて、中盤以降は何もできなかったんだ。
「ほとんど何にもさせてもらえなかったぜ。 あいつ世界一を本気で目指してるのかもな」
いつか言っていた。
あいつは世界一を目指している、だからお遊びでやってる俺たちは相手にならない。
……。
――――――
「君は、なぜレヴルナをプレイしているんだ?」
「そんなの、楽しいからだろ! それ以外に理由がいるのかよ」
「それじゃ、意味がない。 少なくとも、僕のいる場所では、何の目的も果たせないんだ」
~
「くそっ……負けた。 強かったぜ、カゲミツ。 ゴクラクさま……」
「……もう、レヴルナはやめろ。 ヤマト、君は甘い」
――――――
……あいつ、戦ってるときに全然楽しくなそうだった。
普段のあいつは、皮肉屋のいけ好かないやつ。
だけど……どこか優しいところもあって、俺達と変わらない年頃の少年。
でも、レヴルナをプレイしている時のあいつの表情は……まるで氷の中に閉じ込められているように冷たいモノだった。
それに、最後の言葉。
なんであんな事を言ってくる?
言われなきゃならねぇんだ!
「ンヌガァッーーーーー! 思い出したらむかむかしてきたぁ!!」
「けどよ、やっぱカゲミツの兄貴はただものじゃねぇな」
全くだ。
あいつは、どこであんなに強くなったんだろう。
「カゲミツくんはもしかして、全国大会の前に学園に入る事を目的としているんじゃないかな?」
「学園ってなぁに?」
疑問符を浮かべて問うサクヤに対し、モナカはメガネを中指で動かして説明していく。
「Lev・KarunaRati……レヴルナは、その人気ぶりから1年ほど前に学園が設立されたんだ」
「学園では、通常授業のカリキュラムに加えて、レヴルナを強くなるため、魅せるため、詳しくなるための授業が行われているんだ」
「実力者やエンタテイナーを何人も輩出していて、創設には全国大会初代王者の【スペシャルT】が関わっていると噂されてるんだよ」
スペシャルTが創設したとも噂される、ソウルキャスター養成学園【朱鳥ノ宮】。
小学校を卒業後、中等部へと入る事が可能で、多くのソウルキャスターがそこへの入学を目指している。
「つまりそこに行くために、遊びなんかやってる暇はないってことか」
「うん。 受験も大変で競争率が高いらしいよ。 通常科目とは別にレヴルナの実力も評価の対象で、遊びではなく真面目に取り組んでいる人たちも多いんだって」
なるほど、だからあいつはあんなに強いのか。
学園か……俺は今を楽しんで生きてきて、先の事なんて考えた事なかった。
「それより、ヤマト。 デッキを見せてよ、何かアドバイスできるかもしれないし」
「おう、頼むぜ!」
……モナカの知識があれば、何か突破口が開けるかもしれない。
「流石ヤマト、すごくバランスが良いよ。 僕の知識は必要ないかも」
俺のパートナーデッキを眺めていたモナカは、1枚のカードが目に入り手が止まった。
「なぁにこれぇ?」
モナカが手に取った1枚のカード。
それは、俺が幼い頃から大事にしているカード。
レヴルナが世間に出る前からお守りにしている、母さんの形見だ。
「父さんから貰ったんだ。 母さんの形見はお前が持ってろって」
仕事で世界を飛び回る父さん。
すごいたまにしか会えないけど、父さんはこれをお守りとして俺に託してくれた。
今よりずっと幼い頃……じーちゃんも忙しくて、よく一人で泣いていた俺を心配してくれていたんだ。
そして、その日……俺は新しく友達ができたんだっけ。
「そんなカードを入れていたんだね。 まさか、ずっと?」
「あぁ、レヴルナを始めたころからな」
だから、これは本当にお守り代わりだ
レヴルナの戦いでは使えないしデッキを圧迫してしまうカード。
でも俺は、このお守りのおかげで今までやってこれたんだって感じてる。
それに、今の俺にとってこれが父さんや母さんとの繋がりなんだ。
「うーん。 他のカードをいれれば逆転に繋がるだろうけど……」
「もちろん、そんなつもりはないぜ。 俺のお守りなんだ」
「だよね。 ヤマトにとってそれが良いなら、それが一番だよ」
俺とモナカのやり取りを見たサクヤは、儚い溜息をついていた。
「なんだか、ロマンチック。 その話は初めて聞いたかも」
サクヤは物心ついたころからの仲だけど、お守りの話はしてなかったみたいだ。
「あれ? 話してなかったっけ?」
「全然。 ヤマトはご両親の事、全然口にしないんだから」
そうだっけか。
自分では気づかなかったな。
「ともかく、カゲミツに追い付くために俺も学園を目指すぜ!!!」
「それなら、勉強もしないとね~」
……やっぱやめようかな。




