Rati 11. 「Newbie」
「おりゃぁ! シュートォォオ!!」
「ぶへぇっ!!」
「わ、わりぃモナカ! 大丈夫か!?」
「敵チームとはいえ、少しは手加減してよ~」
「あぶねー!」 「モナカ! ナイスキーパー!」
晴天の空へと木霊した鮮やかな衝突音が鼓膜へと響いてくる。
俺が放ったウルトラミラクルシュートがモナカの顔面にクリーンヒットしちまった。
「試合終了! 引き分けだ! 次チームに交代~」
「くそ~、チャンスだったのに引き分けか」
夏の盛りが徐々に近づいてくる中、俺たちは健康的な汗を流し体育のサッカーで奔走していた。
休憩中、見学してるカゲミツを眺めぼーっとしていると、サクヤが隣に座ってきた。
「カゲミツくんが気になるの?」
「べ、別にそんなんじゃねーよ」
「ふふ、嘘下手すぎ」
……幼い頃から、俺はサクヤに頭が上がらない。
学校では良く宿題を見せてもらって、俺が夏休みの宿題に困ったときは手伝ってくれる。
自由研究も協力してくれることもあった。
それに……小さい頃だって……。
「ねぇ、ヤマト。 小さい頃にさ……小学校に上がる前に……」
「なんだよ」
「カゲミツくんって……ウチらの道場にいたっけ?」
「え? いるワケないだろ?」
そんな古風な名前の道場生は、ウチにいなかったはずだ。
「……そうだよね。 なんでもないっ」
カゲミツが、ウチの道場に……?
「休憩終わりだって! サクヤ早く~!」
「今、行く!」
グラウンドへ走っていくサクヤの背中を眺め、俺はカゲミツがじーちゃんと話していた日の事を思い出していた。
――――――
Rati 11. 「Newbie」
――――――
「さて、今日も公園に行くか」
「待って、ヤマト。 私も行きたい……!」
「え? サクヤも? どうしたんだよ急に、まさかレヴルナはじめたいのか?」
サクヤは可愛いキーホルダーのついた鞄に手を突っ込み漁っている。
「始めたいんじゃなくて……じゃじゃーん!」
それは、レヴルナのカードデッキ!
「マジかよ! 早速行こうぜ!」
「ちょっと引っ張らないでよ!」
「モナカも急げ!」
俺はサクヤの手を引いて教室の外へと向かう。
っと、嬉しさの余り忘れていたけど……。
「カゲミツも来いよ!」
「悪いけど、僕は君達みたいに暇じゃないんだ」
「とかいって、ホントはきたいくせによ。 待ってっからいつでも来いよー!」
公園に着くと、珍しい顔に興味が沸いたのか、皆集まってくる。
「実は、私もレヴルナ始めたんだ。 皆、仲良くしてね!」
「サクヤさん! 俺とデュエルしようぜ!」「私もサクちゃんとやりたい!」
なんつー人気だ。
人当たりが良く優しいサクヤは学内で皆からの信頼が厚い。
そう言われていた理由が今理解できたぜ。
「まぁまて、諸君。 サクヤが対戦するのは、まず【最強】の俺が特別コーチをしてからだな」
「えーヤマト独り占めする気かよ」「幼馴染だからってずるいんじゃないの?」
「ええい! うるさい! サクヤがレヴルナを始めたら、俺がコーチしてやるって前から言ってたんだよ!」
俺の言葉を聞いたサクヤは、いたずらっ子のように笑って皆を宥めた。
「へーきへーき。 じゃ、腕試しにモナちゃん付き合ってよ」
「ぼ、僕?」
いきなりモナカをご使命とは、大胆だな。
「おいおい、今のモナカはめちゃくちゃつええんだぜ?」
「まぁいいから、1回見ててよ」
……。
「えっと、ここでこれを召喚して……バトル!」
「僕の、負けだ……!」
うそだろ。
サクヤがモナカに勝った……。
ニュービーが対抗戦の3英傑を下した光景に、皆は大盛り上がりだ。
「めちゃ熱いバトルだったな!」「サクちゃんつよーい!」
サクヤとモナカは激戦の末、お互いを称え合い握手を交わしていた。
その光景をよそに、俺は自分が生唾を飲み込んでいたことに気づいた。
へっ、次のリーグ戦も、面白くなりそうじゃねーの。
「サクちゃん、強いんだね。 びっくりしたよ!」
「モナちゃんこそ、私もギリギリだったよ」
そうして、俺たちはサクヤという新たな顔を交えて今日もレヴルナを楽しんだ。
サクヤは習い事があるから途中で帰ったけど、テンション上がっていつもより遅くなっちまったな。
気付けば、夏なのにもう空は暗くなりかけ街灯が瞬き辺りを照らし始めていた。
手を振って仲間たちと別れ、その背中を見送っているともう一人の新顔が歩いてきた。
「やっぱきたか、カゲミツ」
「本当は、来るつもりはなかったんだけどね。 一足遅かったみたいだ」
……。
「俺と勝負しようぜ……!」
「僕は君と勝負するために来たわけじゃないよ」
いつも俺たちの申し出をのらりくらりと躱し、いきなりひょっこりと現れる。
そんな神出鬼没で、掴みどころのない少年。
でも、そいつの実力は誰も知らない……。
……今日こそ、カゲミツの実力を暴いてやる。
「なんだよ、逃げるのか?」
「……」
「怖いんだろ? 俺に負けるのがよ!」
「僕は……」
「次の日、学校で言いふらすからな! 俺に負けるのが怖くて逃げたんだって!」
「……分かった、教えてあげる。 君たちがどれほど甘くて楽観的なのか、その鼻っ柱をへし折ってね」
「よっしゃ! 望むところだ!」
よし、食いついた!
……カゲミツは、きっと強い。
モナカやモモちゃんよりも、そして……。
けど、ここで勝てば。
俺が真の校内最強プレイヤーだ!!!
「セッション……ゴー!」




