デートとキス
春臣と友達になって何ヶ月か経ち、学校以外でも遊ぼうかという話になった。
そういえば一緒に遊んだことなかったな。
「どこか行きたいところとかある?」
「俺、そういうのわからなくて……」
「今までの彼女とどこでデートしてたんだよ?」
イケメンデート、興味ある。
「したことない」
「え?」
「ネズミー行ったりとか水族館行ったりとかそういうのがデートでしょ?」
「まあ、そうだね」
「ない」
「は?」
「ない」
「なに言ってんの? あれだけ彼女いたじゃん」
「でもないよ」
言ってることがわからんよ。
「待ってよ、デートしたことないの?」
「誘われはするよ、でも行きたくないから断る」
お前が断ってるだけじゃないかよ。
デート行けよ、しろよデート!
そもそもそれなら付き合うな。
「それならなにしてたの?」
「家に来る」
怖っ!
段階踏んで!
「それは約束したから来るんだろ?」
「してない」
どういうこと?
「家教えてないのに『明日行くね』とか連絡きて次の日本当に来る」
怖いんですけど。
「家に上げるの?」
「嫌だよ、俺、家に人上げるのあんまり好きじゃない」
そういう問題じゃない気がする。
「でも来ちゃったのはどうするんだよ」
「兄ちゃんが帰れって言う」
セコムかよ。
「お兄さんいなかったら?」
「自分で言う」
言えるんかい。
そんなバカなことってあるのか?
あれだけ彼女いてデートしたことないってそんなことあるか?
「デートしたいって思わないの?」
「好きじゃないし」
あーそうでしたね、全サしてただけでしたね。
ちょっと好奇心が湧いたので聞いてみる。
「じゃあさ、俺とデートしたいって思う?」
「一緒に遊ぶのがデートなら遊びたい」
微妙にわかりにくいけど、なんか恥ずかしくなってきたからこれ以上はやめておく。
待てよ?
ちょっと待って。
春臣はデートしたことないと言ってる。
ということはだよ、もしかして……
「春臣?」
「なに?」
「春臣ってもしかしてキスしたことない?」
本当はもっと深いところを突きたかったけど、デリカシー無さすぎるかなと思ってこの質問にした。
「されそうになったことはしょっちゅうあるけど、『二度と顔も見たくない』っていうと大体やめる」
春臣にそれ言われたら絶望するだろうな。
「『やめて』ぐらいじゃやめようとしないから」
こんなイケメンとキスするチャンスが巡ってきたら是が非でも! と思うのはわからなくもない。
「それでもやめてくれない時は、『俺にキスしたら全てに於いて抹殺する』って言うとやめてくれる」
あなた何人殺したのよ?
本当に俺と同じ時空で生きてんの?
なんでそんなに物騒なの?
「キスをそこまで拒否できるのに、どうして好きって言われたら断らずに付き合っちゃうんだよ。付き合わなければいいだけじゃん」
「あ、そっか。こうやって断れば良かったのか。誰も教えてくれないから……」
いや、学べよ。
好きって言われたら殺すとか言いそうだ。
イケメンって大変なんだな。
自己評価、並、中の中で良かった。
まあ、要するに春臣はキスしたことないんだね。
貴重なイケメンの唇だ、大切にしてくれ。
なんだ、春臣も俺たち並人間の仲間じゃないか。
急に親しみが湧いたよ。
「海凪はあるの?」
そこ聞いちゃう? 聞いちゃうの?
「聞かない方がいいと思うよ」
俺のために。
「ないんだね」
こいつ、笑いやがった!
同じ経験値ゼロなのに、負けた気がするのはなぜだ。
イケメンの経験の無さは自らそう選択してる感じで寧ろ神々しいまであるけど、並人間の経験の無さは選ばれなかっただけって感じするじゃん。
泣くよ?




