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「葉山ー! 神野来てるぞ」

「春臣、こっち!」


数日後の昼休み、春臣が俺の教室に来た。 

一緒に昼飯食おうと誘ったんだ。


なになに? 神野くん来たんだけど!

と女子たちが色めき立つ。


友成が、

「え? 神野と付き合うことにしたの?」

と聞く。

「違う、いろいろあって友達になった」

「マジか」


「こいつは俺の友達の近田友成(ちかだともなり)、で、このイケメンが神野春臣」

「こんにちは」

「あ、どうも」

友成と春臣がぎこちなく挨拶しあう。

「変なところもあるけど話しにくい感じはないから」

と友成に言うと、

「俺、変じゃないよ」

と春臣が反論する。

「いやいやいや、海凪に告ってる時点で変だからね」

友成が遠慮なく言う。

「変かな」

「変だよ」

友成と春臣が笑ってる。

もう打ち解けてるじゃん、大丈夫そう。


昼休みが終わると春臣は教室へ戻っていった。

友成が、

「神野、話しやすいんだな」

「意外と話せる」

「だな、いい奴かも」

「うん」

「でもやっぱり腹立つくらいのイケメンだった」

「それな」

春臣が教室に戻った後の女子たちの追及が怖かった。



放課後、友成はバイトに遅れると速攻帰った。春臣は門のところで待ってた。

約束はしてない。

「待ってたの?」

「うん、ダメだった?」

「いや」

「ちょっと海凪に聞きたいことあって」

「なんか話あるの? マックで話す?」

「うん」

「なんの話かわからないけどクラスに友達いるだろ? そいつらに聞けばいいんじゃないの?」

「聞こうと思ったら『葉山に聞いてこい』って言われた」

その友達は俺らのことを面白がってるだけなことにイケメンくんは気づいてないんだろうなあ。


マックに移動する。


「この前連絡先全部消したのに、元に戻ってる」

「は?」

「これ」

スマホを見せられる。

LINEの友達を全員把握しているわけではないが、確かに消したはずなのにズラリと友達の名前が並んでいる。

「なんで?」

また春臣のなんで? が始まった。


これはあれだな。

「ちょっと見せて」

設定を見てみるとやっぱりだった。

『友だち自動追加』がオンになっている。


「ここがオンになってると電話番号がわかれば勝手に登録できちゃうんだよ」

「そうなんだ」

「自分でオンにしたんだろ?」

「俺なにもしてない。随分前、女の子に『LINEのアプリ、ダウンロードしておくね』って言われてそのまま使ってた」


怖すぎる……


「あのさ、春臣、世間知らず過ぎるというか、警戒心なさ過ぎて危ないよ」

「そうなの?」

「そうだよ、少しは人を疑ったりとかしないと危ない目に遭うよ」

「うーん……『俺の女取っただろ!』って男に殴られそうになったことは何度かある。そういうやつのこと?」

もっと治安悪かった……


「殴られたの?」

「ううん。女の子が逆にその男を殴ってた」

強い……


「兄ちゃんにもよく言われる。春は危なっかしいって」

「お兄さんいるんだ」

「うん、5歳歳上」

身内にも世間知らずも危なっかしいのも認知されてるんだな。


それにしても消したはずの友達がほぼ元に戻ってるのは怖すぎるだろう。

「これどうすればいい?」

「さっき設定はオフにしたけど、LINEのIDも電話番号も知られちゃってるからなあ。LINEがダメならメッセージとかに連絡来るかも」

「どうすればいい?」

「一番手っ取り早いのはスマホを新規で買い直して電話番号変えることだけど、金かかるし、今までの番号使えなくなっちゃうよ?」

「全然平気」

平気なんかい。

「新しい番号を家族や友達に伝えればいいだけだし」

「スマホって結構高いよ?」

「でもこんなにたくさん連絡先いらないし、必要な人のだけでいい」

ほぼ全員女の子の連絡先を全部要らないと言える人生を俺も送ってみたかったよ。

「金が問題ないなら買い換えた方がいいと思う」

「わかった、教えてくれてありがとう」

とにっこり笑う。


眩しい!

イケメン、眩し過ぎる!



翌日、昼休みに春臣から聞いた話によると、スマホを買い替えたいと家族に相談したらしい。

壊れてもないのにどうしてだと理由を聞かれ、

「連絡先を知られて消しても消しても消えないから」

とわかりにく過ぎる説明をしたら問い詰められ、歴代彼女やファンに電話番号が知れ渡り、とんでもないことになっていることを家族が把握。

「すぐに買い替えろ!」

と父親に怒られて、今日お兄さんと買いに行くそうだ。


「すごく怒られた」

「だろうね」

俺と友成は呆れつつそう言った。

春臣が悪いわけではないけど無知すぎる。

お兄さんには、

「家では俺や父さんや母さんがカバーしてやれるけど、家から出たらそうもいかないんだから、しっかりしろって言われた」

「だろうね」

それしか言葉が出てこない。

「それで学校に俺のことを危なっかしいって心配してくれる友達がいるって海凪のこと話したら、面倒見てもらえって」

は?

友成が爆笑してる。

「面倒見てやれよ、海凪w」

お前、面白がってるだろ。

「いや、確かに危なっかしいけど、それは春臣が気をつければいいことなんだから頑張れよ」

「無理無理! 神野の世間知らずはやばいレベルだから面倒見る人が必要だって」

「よろしくお願いします」

よろしくお願いしますじゃないんだわ。

なんか厄介なことに巻き込まれた気分……


春臣のスマホは新しいものになった。

LINEの設定もオフにしてある。

LINEは元のIDを削除して、新規で取り直した。

その辺りはお兄さんが隅から隅までチェックしてくれたとのこと。

子どもか。

連絡先は必要最低限の家族と友達等に絞ったら20人くらいになったらしい。

削除する前200人くらいいたよな?

怖っ!

「静かになった」

と春臣は喜んでる。

一度繋がった人を切るってなかなかできないよなあ。

全然連絡なんて取らなくなっても連絡先を削除するなんてできない。

春臣みたいに必要最低限に絞ったら俺20人もいるかな?

だってLINEの友達の大半は企業とか店だもん。

なんか悲しくなってきた。


「改めて連絡先教えてもらえる?」

「はいよ」

この前は『葉山海凪』と登録してたが、今回は『海凪』と登録してた。

またまたこそばゆい。

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