面倒な男たち
「俺、その時まだ家庭教師の経験浅かったし、どこまでプライベートな部分守ればいいのかわかってなくてさ、つい春のこととか話しちゃったんだよね」
「はい」
「俺が全然麗ちゃんに興味示さないから、春の方から近づこうとでも思ったのかな。
春のこと調べて近づいたんだよ」
「そんなにすぐ調べられるものですか?」
「あいつモテるからさ、名前で調べるとどこの中学かなんてわかっちゃうんだよ」
こっわ!
「俺もバカだからどこの区に住んでるかは話しちゃってたし」
「なるほど」
「で、春に『龍臣くんに家庭教師してもらってます』とかなんとか言って近づいてね。
春も春で『ああ、そうですか』みたいな感じだし」
「なんとなく想像できます」
「麗ちゃん、上手いんだよね。
『私のこと、龍臣くんは麗ちゃんって呼んでくれてます、春くんも私のこと麗ちゃんって呼んでね』とか『受かったら彼女になります』とか言ってて……春も『わかりました』って……
なにがわかったんだよって話だよ、丸め込まれちゃってさ」
あいつは疑念が欠落してるのか?
「俺に『兄ちゃん、彼女できたんだね。おめでとう』なんて言うもんだから、どういうことだ?って聞いたら麗ちゃんがそう言ってたって……目の前が真っ暗になったよ」
イケメンも苦労が絶えないな。
「春に近づいたのも腹立ったし、それまでもきっぱり断ってたつもりなんだけど、これはもうダメだと思って、高校生になっても続けて欲しいと言われてた家庭教師を降りることにしたんだ。
そうしたら泣かれちゃってね。
でも親御さんにお話して理解してもらって家庭教師は辞めることになった」
「良かったですね」
「良くないんだよ」
「え?」
「続きがあってさ、家庭教師最後の日に泣きながら『龍臣くんの好きなもの教えて』って言われて、あんまり泣くもんだから、ゲームって言ったら、それやってみたいって。
その時戦バニはアプリでできたから、スマホで少しやらせたんだよ。
でも戦バニってちょっと操作難しいでしょ? アプリ時代なんて特に」
「はい、そうですよね」
「ゲームなんか全然興味ない子だから案の定全くできない。イライラしたのか、『こんなの全然面白くない』って言ったんだよ。
俺、戦バニすげえ好きだからその言葉が許せなくてね。これまでのことも重なって大人げなく、『俺は君とは絶対付き合わない』って捨て台詞みたいなこと言っちゃった」
わかる、わかります、龍臣さん。
俺も同じこと言われたらブチ切れると思う。
でも相手が美人なら話は別だ、多分許す。
「麗ちゃんとはそれっきり」
「え?」
「ん?」
「それならどうして今だに吉沢先輩が龍臣さんを好きだってわかるんですか?」
おかしいよな?
「それは麗ちゃんが同じ高校に入学した春を通して、手紙渡してきたりするから……
春には受け取らなくていいって言ってるんだけど、頼まれたからって持って帰ってくるんだよ」
春臣らしいと言えば春臣らしい。
「『まだ好き?』は俺がまだ戦バニとかゲームを好きか?ってこと。
だから春は『(兄ちゃんはまだ戦バニもゲームも)好きだよ』って答えただけ」
出たよ、また盛大な言葉足らず。
カッコの中をちゃんと言語化しろ。
「そういうことだから、春と麗ちゃんは付き合ってないよ」
うーむ。
「龍臣さん」
「ん?」
「それ、作り話ってことないですよね?」
「は?」
「春臣に頼まれて作り話してません?」
「こんな作り話すらすらできるかよ」
「本当かなあ」
「お前、意外とめんどくせえな」
うんざり顔で龍臣さんがぼやく。
「ちょっと待ってろ」
そう言ってどこかへ電話をしてる。
電話を切ると、
「海凪、まだ少し時間大丈夫?」
「大丈夫です」
「悪いけど少し待ってくれ」
なんだ?
待ってる間、この前MIOとやったライフルの練習の話になった。
「面白いことやってたよな」
「MIOが協力してくれて楽しかったけど、負けて悔しかったです」
「MIOの喜び方がすごかったなw」
「春臣のしてやったり顔もすごかったですよ」
「春は戦バニになると人格変わるからな」
「春臣は普段絶対猫被ってる」
「いつもボーッとしてるのに戦バニだとキレキレ」
「それですw」
「ところで春が俺のID使いたいって言ってたけどなにしてたんだ?」
「え?」
まずいぞ、誤魔化さないと……
「えーと、あのー……」
「なんだよ、なんか悪だくみしてんのか? 悪用したのか?」
「違います!」
「じゃあ、なんだよ」
やばい、こっちで殺される……
保身は考えるな。
「春臣がJINさんの賞金額がすごいって話してて、バニーコインの残高、どのくらいあるのかなって……」
「そんなこと?」
「はい……」
「俺に聞けばいいのに」
「いやあ……なんかバーチャルとは言え、金のことは聞きづらいじゃないですか…」
誤魔化せたか?
「まあ、そうか。結構貯まっちゃったんだよな」
「すごいですよね、ビビりました」
「バニーストアの甲冑買いたかったんだけど、春がMIOに似合わないからダメって」
「そんなに欲しかったんですか?」
「うん、ずっと狙ってる。売り切れたらどうしようってずっとヒヤヒヤしてる」
「じゃあ 春臣を説得するしかないですね」
「いやあ、あいつ頑固だからなあ」
「わかります、めっちゃ頑固」
「だよな」
やっぱり甲冑欲しかったんだな。
春臣、お前の判断は正しかったよ。
さすが弟。




