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龍臣さんの話

俺の命日となるであろうこの日、龍臣さんと待ち合わせをしたファミレスに入ると、

「海凪!」

と龍臣さんが手を振ってる。

にこやかではある。

ちょっとホッとする。

いや、あの顔は仮面かもしれない。


「悪いな、呼び出して」

「いえ……」

「どうした? 腹減ったか? 好きなもん食えよ、奢るから」

食べるだけ食べさせて殺す気だ……

こういう甘い誘いは大体後で殺されるパターンなんだ。


それなら食うだけ食って死のう。


「じゃあ遠慮なくご馳走になります」

「遠慮されるより、そっちの方が気持ちいいよ、どうぞ」

チーズと目玉焼き乗せハンバーグ200g、

ライスとサラダ、スープ、ドリンクバー付きにした。


「それじゃ俺もそれ食おうかな」

殺す側が力蓄えてどうすんだ。


ハンバーグ美味かった。

かなり腹一杯。


「結構量あったな」

「すみません、ご馳走になっちゃって」

「いいの、いいの」

笑ってる、怖い。


怖いからさっさと済ませよう。

ひと思いに死のう。


「あの……龍臣さん、話ってなんでしょうか?」

「ああ、忘れてた。そうだった」

殺すの忘れてたの?

コーヒーを飲むと、龍臣さんが切り出した。


「あのさ、春のことなんだけど」

え? 春臣?

JINさんをいじり倒したことじゃないの?

もしかして殺されずに済む?


「春臣のことってなんですか?」

「うん、海凪、吉沢麗ちゃんって知ってるか?」


え?

なんで龍臣さんから吉沢先輩の名前が出るんだよ。

麗ちゃんって言ってるし。

龍臣さんにも紹介済みってこと?

もうこれ確定じゃん……

違う方向から殺された……


「……同じ高校の先輩です。春臣の彼女ですよね?」

自分で口にしたくせに、自分でその言葉に傷ついてる。

「え?」

「俺、知ってます。春臣と吉沢先輩、付き合ってるんですよね」

絶望だ。


「あー、こういうことか、なるほどね」

なにがなるほどなんだ。

「海凪、なにか誤解してない?」

「してません」

「春と麗ちゃんは付き合ってないよ」


え?


「だって……吉沢先輩が春臣に『まだ好き?』って言ってたし、春臣も『好きだよ』って……」


「ああ……それは多分戦バニのことだな」


は?


「戦バニ?」

「そう」

話がわからない。


「あの、龍臣さん、話が全然わからないんですけど……」

「ええとね……ちょっと言いづらいんだけどさ」

「はい」

「麗ちゃん、俺のことが好きなんだわ」


はあ?


「説明させてもらえる?」

「はい、是非」

話が俺の知らない方向に行ってる。


「俺、大学一年の頃に家庭教師のバイトしてたんだよ」

「はい」

「麗ちゃんはその時の生徒さん」

「え?」

「麗ちゃんが高校受験で家庭教師つけることになって、そこに派遣されたのが俺」

「はあ」


「それだけならなんの問題もないんだけどね、麗ちゃんが俺のこと好きって言い出しちゃって……」

「付き合ったんですか?」

「そんなわけないだろ! 生徒に手を出すようなことしないよ」

「すみません……」

「あ、いや、大きな声出してごめん。

成績は上がったんだけど、俺に対する熱も上がっちゃっててさ。いくら断っても動じないんだよ。

挙げ句の果てには『龍臣くんの母校を受験する、受かったら彼女にして』って……」

「受かりましたよね?」

「成績上がってたし合格はできると思ってたけど、正直言って俺、全然麗ちゃんに興味なくてね」

「あんなに美人なのに!?」

「俺、年下興味ないんだよね。対象外なんだよ。歳下じゃなくても麗ちゃんは対象から外れてんの。生徒としか思えない」

「勿体無い……」

「それにさ、春の方がかわいいじゃん?」

出た、ブラコン。


「もしかして龍臣さんってゲイですか?」

「違う。普通に女の人が好きだよ。でも春が一番かわいい」

重症だ。

「彼女いたことありますか?」

「あるよ」

ないわけがないか、この兄弟は。

「彼女はすぐできるけど続かなくてね」

さらっと言ったな、すぐできると。

「どうして続かないんですか?」

「俺が春やゲームを優先させちゃうからかな」

あー、納得。


「大体しばらくすると言われるんだよね、

『私とゲームどっちが大事なの?』って。

それ言われるとゲームって答えるしかないじゃん」

「ええ……」

「『ゲームやめられないの?』って言われるから面倒で別れる」

うわあ……

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