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春臣の圧

「兄ちゃん、入っていい?」

「ん? どうした?」

友達の引っ越しの手伝いを終えて帰ってきたばかりの兄ちゃんを捕まえる。


「海凪の家に遊びに行ってたのか?」

「うん、初めて行った、楽しかった」

「そういえば、海凪と随分楽しそうなことしてたな」

「見てたの?」

「引っ越し終わってから見た、俺も呼んでよ」

「あれは急遽始めたことだから」

「海凪の練習?」

「そう、ライフル新調したから慣れるために」

「MIO、めっちゃ喜んでたなW」

「うん、めちゃくちゃ嬉しかった」


あ、そうだ、話があってきたんだ。

「兄ちゃん」

「なに?」

「麗ちゃんとはどうなってんの?」

「は?」

「麗ちゃん」

「なんで急に麗ちゃんが出てくるんだよ」

「どうなのって聞いてる」

「どうもこうもねえよ、なんもねえよ」

「それ、麗ちゃんわかってる?」

「待てよ、春、さっきからなに言ってんだ?」

「兄ちゃんのせいで海凪に誤解されてる」

「は?」

「俺と麗ちゃんが付き合ってると思い込んでる」

「え!? 春と麗ちゃん、付き合ってんの!?」

「付き合ってないよ、そんなわけないでしょ!」

「なんで海凪が誤解するんだよ。付き合ってないって言えばいいだろ?」

「海凪、頑固だから思い込むと聞く耳持たないんだよ」


ふっ

「なんで笑う?」

「頑固者同士だな」

「俺は頑固じゃない。とにかく兄ちゃんのせいで誤解されてるからなんとかして」

「俺? 俺のせいなのか?」

「兄ちゃんが悪い」

「なんでだよ」

「いいからとにかく誤解解いて!」

「ええ……」

「誤解解かないなら、もう兄ちゃんとは話さない」

「なんでだよ!」

「兄ちゃんのこと嫌いになる」

「待てよ、なんでそうなるんだよ!」

「兄ちゃんが悪い」

「理不尽すぎるだろ?」

「兄ちゃんが悪い」

「わかった! わかったから。海凪と話すればいいのか?」

「そう」

「そもそもなんで海凪の誤解解かなきゃなんないの? ほっとけばいいじゃん」

「ダメ!」

「なんでこんなことになるんだよ……」

「兄ちゃんが悪い」

「わかったから、嫌わないでくれ」


兄ちゃんが渋々海凪に電話する。


「海凪? 今大丈夫?

あのさ、ちょっと話したいことがあるんだけど都合のいい日ある?

金曜日? うん、俺はその日でいいよ。

時間は……学校帰りにするか、16時くらいでいいか?

Y駅の近くにファミレスあるだろ?

そうそう、ホスロ、そこで待ってる。

悪いな」


兄ちゃんが電話を切る。


「金曜日、話すことになった」

「うん」

「そうは言ってもなに話せばいいんだ?」

「兄ちゃんが悪いって言って」

「俺悪くないじゃん……」

「言って!」

「わかったって! とにかく海凪の話も聞いてみるから。麗ちゃんのことも海凪に説明する、それでいいか?」

「うん」

「嫌いになるなよ」

「うん」

兄ちゃんがにんまり笑った。




龍臣さんから話があると言われた。

なんだ?

戦バニでやりたい放題やったのバレたのかな?

レオタードJINさんは思い出し笑いしそうだ。

龍臣さんのことだ、なにがあっても春臣に文句言うわけない。

すると矛先は俺だよな?

共犯だもんな。

いや、唆したのお前だろ? とか言われる可能性大だ。


やばい……


優しくて穏やかな人だけど、怒らせるとめちゃくちゃ怖いのは、前にMIOとのペア解消を賭けた対戦をした時に知った。

あれはマジでやばかった。

バニーごと、この世から消されるかと思った。


口調はいつもの龍臣さんだったけど、会った瞬間ぶん殴られるかもしれない。

どうしよう。

春臣に同席してもらおうかな……

マジで殺されるかもしれない……


縋る思いで春臣に助けを求め、金曜日暇か? と聞いたら、その日も図書委員があるんだって。

俺、終わったわ……

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