相場価格
コスチュームが決まり、春臣が再びロンさんに質問する。
「あの、これって金属でも作れますか?」
「作れるよ、ちょっと高いけど」
「かっこよくしたいんです」
「そうねえ……でも金属は勧めないかな」
「え?」
「金属で作れるけど、稀に錆が出ることがあるんだよね」
「それ嫌かも」
「でしょ? でも高級感が欲しいんだよね?」
「そうなんです」
「それなら素材はPVCにして塗装でメタルっぽく仕上げることはできるよ」
「どんな感じかイメージが湧かなくて……」
「そうだよね、手元に金属製と金属っぽく仕上げたPVCがあるから画像に出すね」
画面に二つのフィギュアが出てきた。
「ものは違うけどそっちから見て左が金属、右がPVC」
「両方金属に見えます」
「塗装でここまで近づけられるよ。扱いはPVCの方が楽だし安価だよ」
「高級感出ますか?」
「塗装メニューにオプションあるでしょ? そこをハイグレードにしてもらえればできる」
「オプションつけます」
「ちょっと高いけどいい?」
「いいです。あとなにか追加した方がいいものはありますか?」
「忘れがちなのが土台かな。これがないとフィギュアが安定しなかったりする」
「つけます」
「あとはつけないといけないものではないけど、あったらいいなというならケースだね」
「ケース?」
「そう。せっかくいいフィギュア作ったのに、紫外線で色褪せしたり埃ついたりすると萎えるでしょ?」
「はい」
「それを防止するためにUVカットされてるケースがあるといい状態が保てるよ」
「つけたいです」
お前、あれもこれもつけてるけど金大丈夫か?
そう言おうとしたらロンさんが、
「MIOちゃん、失礼かもしれないけど金は大丈夫?」
と確認する。
当然だろう。
バニーコインほぼ全て使っちゃってるし、二つもフィギュア作るからそれなりに料金がかかるはずだ。
「今の時点でいくらぐらいになりますか?」
「JINさんとMIOちゃんの2体だよね?」
「はい」
「うーん、オプションはバニ銭使うとして……大きさあるからなあ」
どのくらいの金額になるんだろう。
「40万ってところかな」
マジかっ!!
春臣が絶句してる。
オプション云々の話ではない。
ロンさんが笑う。
「相場はこれくらいするよ。オーダーだからね」
「無理です……さすがに払えない」
春臣泣きそう。
俺が協力したところで焼け石に水だ。
「どうしよう……」
ロンさんがふっと笑う。
「MIOちゃん、うちは個人経営なんだよね。俺一人でやってんの。
相場はこれくらいするけど、俺の店は3Dプリンター使うし、型枠作って一から制作するよりは多少値段下げられる」
「それでも高すぎるから無理です」
「それじゃ、うちの相場も伝えるね」
「はい……」
春臣の絶望感がすごい。
「2体で5万、初回価格、ケース付き」
嘘っ!?
8分の1になった。
マジで? マジか?
「俺が戦バニ内で店始めたのはさ、戦バニのキャラをフィギュアにしたいからなんだよね。いろんなバニーちゃんたちを作りたいんだよ。それはここでしかできないの。
でも戦バニ内で市場の相場価格持ってきちゃうと作れる人ほとんどいないでしょ?
客つかないと意味ないんだよ。
だから俺の店はめっちゃ相場より安くしてる、初回価格だけどね。リピーターになってくれる方が俺にはありがたいからね」
そういえば俺のNAGIフィギュアは5千円だったっけ……
オーダーなのに安いなって思ってた。
「でもそれだとロンさんの利益が出ないんじゃ……」
春臣が気にかける。
俺もそう思う。
「赤字だね」
「……そうですよね」
春臣の凹み具合がすごい。
「説明が悪かったな。この店はあくまでもサブ、メインはちゃんと店舗構えてるし、俺が食べていくのには困ってないから大丈夫なんだよ。
俺は戦バニが好きだから、ここでサブでも店開けたのは超ラッキーなんだよね。
だから最初からここで儲けようとは思ってないの。さっきも言ったけどいろんなバニーちゃんを作りたいんだよ」
「でも……」
まだ 春臣は不安そうだ。
「あ、安いからって手は抜かないよ。それは俺のプライドが許さないから」
「それは俺も保証したいです。ロンさんに作ってもらったNAGI、オプションもなにもつけてないけど超かわいいもん」
「だろ?w」
ロンさんがドヤる。
「あの……本当にそれで作れますか?」
「言っちゃったからねwそれで作るよ」
「でもケースもって……」
「ああ、それはサービス」
「サービス?」
「だってMIOちゃん、JINさんにプレゼントしたいんでしょ? めっちゃいいじゃん、いい彼女だね」
ロンさん、誤解してる……
でも本当のことは言えない。
「そんなことないです……」
「奥ゆかしい……かわいい……」
すっかりMIOに絆されてるロンさん。
「それに戦バニのキングのJINさんとMIOちゃんを作れるんだよ?
しかもスペシャルバージョンで!
こっちこそ光栄だよ、是非俺に作らせてくれ」
春臣が俺を見る。
いいのかな? と不安そうな顔してる。
俺は親指を立てて大きく頷く。
春臣が腹を括る。
「ロンさん、お願いします」
「よっしゃ! 任せて」
「ロンさん」
「ん? NAGIさんなに?」
「MIO、身バレはちょっとまずくて……」
「ああ! 配送先か」
「そうです、振り込みの名前とか配送先です」
「そうな、そこがバーチャルのネックよな」
「振り込みの名前と配送先、俺じゃダメですか?」
「NAGIさんの家に送るってこと?」
「はい」
「前に注文受けてるし俺は構わないよ。振り込み先は前の注文と同じね」
「はい、それでお願いします」
「了解!」
「MIOちゃん」
「はい」
「納期まで二ヶ月くらい貰いたい」
「はい」
「進捗状況は次の作業に進む前にその都度知らせる」
「はい」
「進捗状況はここで確認できるようにする。なにかあったらアカウントにDM送るから、それが来たらここで確認して」
「はい」
「わからないこととか気になることもDMで遠慮なく言って」
「わかりました」
「それじゃ早速制作に入るのでなにかあったら連絡ください」
「はい、ロンさん、ありがとうございます。よろしくお願いします」




