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俺んち

土曜日。

俺の家の最寄駅で春臣と待ち合わせる。

うちに呼ぶのは初めてだ。

部屋を念入りに掃除した。

いかがわしい本やDVDは隠した。

そういえば春臣って一人で抜いたりするのかな?

そういう想像がつかないんだよな。

童貞じゃないと言ってたから経験があるということだけど、クリーンなイメージがあるから俗っぽいこととは無縁な感じがする。

ということで俗っぽい物は一応隠す。


駅に行ったら春臣はもう来ていた。

改札近くでスマホを見てる。

その春臣を女の子たちがチラチラ見てる。

こいつはいつ何時もモテるのだ。

それはもう慣れた。

羨ましいのは慣れない。


俺に気づき、手を振っている。

ふっ

かわいいじゃん。

「ごめん、待たせた?」

「電車一本早いのに乗っちゃっただけ」

「そんなに楽しみにしてたのか?」

ふふっ

下を向きながら笑ってる。

ちょっと照れてる時の春臣の癖だ。


家までは大体徒歩だと10分弱。

「この駅降りたことないかも」

とキョロキョロしてる。

「なんもないよ」

「だね。なんもない」

一応急行が停まる駅ではあるのだが。


家に着く。

「マンションなんだね」

「そう」

オートロックを解除し、中へ入る。 


玄関の鍵を開けると、

「お兄ちゃん? 出かけるなら声かけてよ。コンビニで買ってきてもらいたいものあったのに!」

いきなり雪海の怒声が聞こえる。

「お兄ちゃん聞いてる?」

その雪海がリビングから顔を覗かせる。

玄関に立つ春臣を見て、ヒェッ! と聞いたことない声を上げる。

一瞬で逃げ、リビングからは小声で、

「やばいやばいやばいやばい……

なにあのイケメン……やばすぎる……誰? なに? 誰? やばい……」

と呪文のような声がする。


お前、なにしてんだ?


その雪海に、

「あんたなにしてんの?」

と母さんが声をかけながら玄関に来た。

「あら? お友達? あ、連れてくるって言ってたわね」

忘れてたのかよ。

「同じ学校の春臣」

「初めまして、神野春臣です」

春臣がぺこっと頭を下げる。


「え? 神野くん、海凪と友達なの?」

「はい」

「なんだよ、その言い方」

「だってこんなかっこいい子があんたの友達のわけないじゃない」

失礼すぎだろ!

春臣笑っちゃってるし。

「神野くん、ゆっくりしていってね」

「はい、ありがとうございます。

これよかったら……」

と母さんに紙袋を渡す。


「手土産持ってきてくれたのか?」

「海凪がうちに来た時に持ってきてくれたから」

そういえばそうだった。

「気を遣わなくていいのよ」

「大したものではないんです」

「ありがとう、神野くん」

「いえ」


「ほら、雪海、お土産いただいたわよ。

挨拶しなさい」

一瞬でダルダルの部屋着からよそいきに早着替えした雪海が、しおらしく、

「……こんにちは、妹の雪海です……」

と春臣に挨拶する。


お前誰だよ。

盛大に猫被ってんな。

変わり身の早さが化け猫だよ。 


「こんにちは、前に雪海ちゃんが教えてくれたっていうお菓子を海凪にもらって食べたことがあるよ。すごく美味しかった」

そう言って春臣が微笑む。


あーあーあーあー

完全に雪海が腑抜けになってるよ。

春臣を俺の部屋に案内する。

「俺、トイレ行ってくるからちょっと待ってて」

「うん」


トイレから出てくると雪海に捕まった。

「聞いてないんだけど!」

「母さんには言ったよ」

「あんなイケメン連れてくるなら事前に……数日前に言え」

「なんでだよ」

「準備ってものがあるでしょ!」

「知らねえよ、お前関係ねえだろ?」

「あるわっ! 第一印象大事なんだよ!」

こいつ、春臣にロックオンしたな。

そう来るなら早々に芽を摘んでやる。


「春臣、付き合ってる人いるよ」


ふふん。

どうだ、太刀打ち出来まい。

お前の目の前にいる俺が彼氏だよ。


「でしょうね」

あれ?

「あれだけのイケメンで彼女いないわけないじゃん。そこは問題じゃないんだわ」

「じゃあなんだよ」

「私がどう思われるか、だよ」

「うざ……」

「とにかく私の印象悪くなるようなこと言わないでよ」

「お前の話なんかしねえよ」

「しろ! かわいい妹を売り込め!」

「そのかわいい妹とやらはどこにいるのですかね? 居場所知らないんですけど」

「このクソ兄貴……」

うぜえからほっとく。

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