吉沢先輩
残り少ない昼休み、友成と図書室に行ってみる。
春臣は昼休みと放課後に当番が回ってくるのだと言っていた。
なんで図書委員やってんの? と聞いたら柳木と上村が、
「春がジャンケンに負けたから」
と教えてくれた。
全然決まらなくて全員でジャンケンして負けたらしい。
すげえ確率で負けたな。
クラス35人いるんだぞ? ジャンケン弱すぎだろ。
ひょこっと覗くと、女子更衣室かと思うほど女子がわんさかいた。
理由は明白、春臣だ。
とっくに全サはサービスを終了しているが、あいつがモテる事実はなにがあっても変わらない。
「うわあ……相変わらずすげえな……」
友成が感嘆してる。
その発信源の春臣はどこだ?
いた。
カウンターで貸し出しの手続きをしているが、なにやら様子がおかしい。
図書室の本を借りるときは本についてるバーコードと学生証についているバーコードの二つを読み取る。
効率化のために、俺たちの学校の学生証はカード型になっている。
更に学生証にはQ Rコードもついていて、これを読み取ると校則などが表示されるのだ。
バーコードを読み取るだけなので誰にでもできる仕事ではあるが、なぜか行列ができている。
春臣人気のせいかと思ったがそれだけではなさそう。
よく見たら春臣と女の人が手書きで対応している。
「トラブルか?」
「さあ」
忙しそうに手書きで手続きしながら、時折、女の人となにか話をしている。
そして、
「すみません、もうすぐ昼休みが終わってしまうため、この時間の貸し出し手続きはここで終わらせてください。
必要な方は申し訳ありませんが、放課後に来ていただけますでしょうか。
システムエラーで手続きに時間がかかってすみませんでした」
と頭を下げる。
「神野くんが悪いんじゃないから!」
「手書きで対応してくれるなんて神!」
「放課後来ます!」
「かっこいい……」
「かっこいい……」
後半、ただの感想だよな?
システムエラーと言ってたな。
そんなトラブルがあっても女の子たちは春臣の神対応に大満足しているようだ。
図書室から人が消えていく。
残ったのは春臣とパソコンをいじってる女の人だけ。
同じ学年の人じゃないよな?
でも見たことある気がする。
綺麗な人、誰だっけ?
「あの人、3年の吉沢先輩か」
「友成、知ってんの?」
「は? 知らない方がおかしいだろ?
スカウトされたことあるって言われてる美人じゃん」
聞いたことある、その噂話。
確かにめちゃくちゃ綺麗な人だ。
「あの人が吉沢先輩……」
人がいなくなった図書室のカウンター内で二人で何かしている。
声が微かに聞こえる。
「やっぱりダメっぽい?」
「そうだね、これ以上余計なことするとデータ飛んじゃいそうだから後で先生に知らせておくよ」
「もしかしたら、バーコードリーダーのせいとかってある?」
「え……今更?」
「試してみる」
春臣が本を一冊持ってきて読み取らせる。
ピッと音はするが無反応。
「ダメだ」
「待って、古いのがあったはず」
吉沢先輩がカウンターの中でゴソゴソ探し物をしている。
「あ、ほら、あった」
「壊れてるんでしょ?」
「調子は悪いけど完全に壊れる前に新しいのに変えたから、もしかしたら生きてるかも」
「これでダメなら報告だね」
「そうね」
「やってみる」
なかなか読み取れないようだ。
「ダメかなあ」
ピッ!
「あ!」
「読めたかも!」
二人でパソコンを確認する。
「読めた!」
「嘘っ! 昼休みの苦労はなに?」
「それなw」
二人でめっちゃ笑ってる。
何度か試すが10回中5回、2分の1の確率でエラーになる。
「どっちにしてもこれを変えないとダメかもね」
「放課後は古いバーコードリーダーと手書きでやるしかないか」
「じゃあ私バーコードやる」
「え!? ずるい、俺手書きやだよ」
「私先輩なんで」
「こういう時だけ先輩面するの汚ねえよな」
ふふ
あはは
また二人で笑ってる。
「なあなあ、あの二人美男美女でお似合いじゃね?」
友成が覗きながらにやにやしてる。
「……」
「海凪?」
「……俺教室戻る……」
「え? お前どうした?」
「別に……」
「え? え? もしかして、前に神野がお前に告ったのに女と仲良くしてるから気に入らねえの?」
「そんなんじゃねえし」
「神野がお前に告ったあれは友達になったから終わったんだろ?」
側から見たらそういうことになってるんだな。
「まあ……」
「だよなあ、お前ら普通に友達で仲良いしな」
「……うん」
「それならなんで凹み散らかしてんだよ。
あ、もしかしてお前吉沢先輩狙ってたとか?」
「違う……」
「お前、彼女いるんだろ? 吉沢先輩は憧れだけにしとけよ」
「そんなんじゃないって……」
「海凪、さっきまでのギラギラ顔面チンコはどこいったよ?」
自分でもわからない。
なんでこんなにモヤモヤして腹が立つんだ?
なんであんな美人とあんなに仲良いんだよ。
聞いてねえぞ。
お前、俺のこと好きなんじゃないのかよ。
吉沢先輩が好きならなんで俺に告ったんだ。
なんで俺と付き合ってんだよ。




