冴えてる神様
「おい、海凪」
「なんすか?」
教室で昼飯を食っていると、向かい側に座っている友成が怪訝そうな顔をしてる。
「お前、なんかあったか?」
「ん? なんもないよ」
「いーや、絶対なんかあるだろ」
「ないってば」
あ。
「なあなあ」
「なんだよ、なんもないんだろ?」
「ないけどさ、俺、ニンニク食ってるような顔してる?」
「は?」
「ニンニク」
「なに言ってんのか全然わからないんだけど」
「いやあ、あのさあ……」
今朝の伊織くんとのやりとりを友成に話す。
「ぎゃははははは!」
「それってどういうこと?」
「ふくくく……」
友成の笑いが収まらない。
「なあ! どういうこと?」
まだちょっとヒクヒクしながら友成が答える。
「なんかその子の言いたいことがわかる気がする」
「俺、全然わからないんだけど」
「その子は海凪のことギラギラしてるって言ってるんだろ?」
「そう、ギラギラのガァッ! だって」
「くくくく」
「なあ!」
「お前の違和感の正体、それだな」
「俺、ギラついてんの?」
「その子の言うことが正しいな。確かにギラついてるもんな」
「やる気に満ち溢れてるってこと?」
「違うわw」
「どういうことだよ」
友成がちょいちょいと手招きする。
少し声をひそめて、
「いいおかずがあるのか?」
「卵焼き欲しいのか?」
弁当箱を差し出す。
「そういうお約束は要らねえのよ」
そう言いながら卵焼きを摘んで口に放り込む。
「……ありません,更新されてません」
「あれか、巨乳のやつか」
「最近使ってない」
「んん? ということは……」
「なに?」
友成の目が光った。
「お前、もしかして彼女できた?」
「!!!!!!」
「こんなわかりやすい反応するかね」
「で、できてない……いない」
「狼狽え方がイエスと言ってますが?」
「いない! いないから!」
「俺に隠すというのは、公にできない相手だからか?」
友成が冴えてる。
言えるわけなかろう!
春臣と付き合ってるだなんて。
まだ秘密にしておく約束なんだ、言えない。
「まあ、そこはいいや」
いいのかよ。
更に近寄れとまたちょいちょいと手招きする。
ほぼ密談だ。
「じゃあさ、その相手とヤっただろ?」
「!!!!!!」
「はい、その反応、確定出ましたね」
「や、やってない……」
「じゃあどこまでよ?」
「どこまでって……」
「あ、もしかして彼女じゃなくてセフレか?」
友成がひそひそ声で聞く。
そこ! 今俺たちが一番デリケートな部分なの!
「なっ……! そんなんじゃねえ! セフレじゃねえ!」
「ほら、いるんじゃん」
「くそ……」
友成の誘導尋問にまんまと引っかかった。
「まあ、いいよ、言いたくないなら相手のことは言わなくていいよ」
友成、お前は神か?
「ごめん……」
「別に謝ることでもないし」
神様、ありがとう、ご加護をありがとう。
「相手が誰だか、どこまでの関係なのかは俺はわからないけど、お前はその相手と何かしら関係を持ってて、おかずがいらないほどその相手にギラついてるんだろ?」
はえ?
「はえ? じゃねえよw
電車の子が言ってたギラギラのガァ? はそれだろ。
お前、顔に性欲滲み出てんだよ」
嘘でしょ……
マジか……
「マジで?」
「うん、顔面チンコ」
くそ恥ずい!
伊織くん、無邪気になんてことを……
泣きたい……
いや、伊織くんは悪くない。
見たまんまを言っただけだ、しかも的確に。
泣きたい……
凹み散らかしている俺を見て、友成が笑いを堪えるわけがなく爆笑してる。
神様、残酷よ……
「あのさ、海凪が顔面チンコになるほど、おかずを超えるものがあったとしてだな」
「はい……」
「その顔、その相手が見たらどう思うよ?」
「ん?」
「だからさ、その性欲剥き出しのギラギラ顔面チンコを相手がどう思うのかって話」
「嫌われる?」
「でしょうね」
「まずいよね?」
「だろうね」
「やばい……」
「エロいことしか考えてないって思われても仕方ないよな」
やばい。
身に覚えがありすぎてやばいしか出てこない……
「妄想するのはいいけどよ、さすがにその剥き出しギラギラチンコはやめろ。パンツ履け」
伊織くんにもわかるギラギラ……
これはまずいぞ。
「もう手遅れだったりしてな」
「え?」
「そんだけギラついてんだから、相手にもバレバレだろ。海凪、振られるんじゃね?」
「いや……多分まだ大丈夫だと思う……」
「童貞の暴走は厄介だな」
「やばい……あれ? なんで童貞ってバレてんだ?」
「そのギラついた必死さは童貞だろw」
「くっそ!」
「つーか、その相手、神野だったりして」
はうっ!
「そんなわけねえか! で、その神野は今日来ねえな」
「……図書委員の仕事で図書室の当番だって」
「図書室混んでそうw後で冷やかしに行こうぜ」
「おう……」
危なかった……
今日の友成は冴えすぎてる。




