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全サ

神野は帰りにも来た。

なかなかしつこい。

お前のおかげで冷やかされるし、揶揄われるし、指さされるし、すげえ睨まれるしで、いい加減うんざりもピークを越して怒りへと変わりそうなので、神野を人気のないところへ連れて行き、

「俺は神野くんと付き合う気はない、しつこくしないでくれ」

と言った。

「なんで?」

イラッ!

俺はあんまり怒らない方なんだけどさすがにキレた。


「なんでってなんなんだよ! 付き合えないって言ってるだろ!」

神野はふーむと考え込む。

「それがわからない」

話通じてる?

わかった、怒っても無駄なのはわかった。

諦めたから聞いてみる。

「なにがわからないんだよ」

神野に聞く。


「好きって言えば付き合えるんじゃないの?」


は?


「今までそうだったから」


は?


「なんで葉山くんは俺が好きって言っても付き合ってくれないのかがわからない」


は? は? は?


『全サ』こと『応募者全員サービス』

こいつがそう呼ばれていることを思い出す。

待て、まさか、もしかして……


「お前、女に好きって告られたら付き合うものだと思ってる?」

「違うの?」


全校生徒のみんな、全サの謎が解けたよ。

こいつがアホなだけだ。


「なんでそういう解釈になるんだよ、

ずっと好きでもない女と付き合ってたのか?」

「だって好きって言うから……」

頭が痛い……


「よくそんなんで付き合ってる彼女たちがすんなり別れてくれたな」

最大の疑問だよ。

こんなイケメンと付き合えたのにそう簡単に別れるか?

「俺はなにも言ってないんだけど、彼女たちの間で勝手にそういう取り決めができてるらしい」

椅子取りゲームの出来レース。

お前の意思はどこにあるんだよ。


「好きじゃないなら断れよ」

「初めて女の子に告白された時に『好きって言われたら付き合うんだよ、断ったらダメなんだよ』って言われたからそういうものなのかなって……」

初代彼女、やり手だな。

こういうタイプには洗脳が効くのか。

初手が悪手。


「あのな、相手のことが好きじゃないなら断っていいんだぞ」

「そうなの?」

「そう、いいの、断っても」

「そうなんだ」

こいつ大丈夫か?


「だからそれを踏まえてもう一度言うけど、俺は神野とは付き合えない」

「……」

「ごめんな」

「俺……断られるって思ってなくて……」

でしょうね。

自意識過剰、でもこのイケメンを振る奴なんていないだろうな。

「いくらイケメンでもダメな時はダメなんだよ。そもそもなんで俺なんだ?」

謎なのはそこなんだよ。


「俺が葉山くんと付き合いたい理由ってこと?」

「そう」

「葉山くん、優しいから」

「俺が? 優しい? どこが? 俺、別に優しくないよ」

「優しいよ、だってずっと小学生に付き添ってあげてたじゃない」


あ……


「あれ……見てたのか?」

「うん」

嘘……


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