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全サ、バレる

そんなある日、またバイトに遅れるとダッシュで帰る友成を見送る俺に二つの影が忍び寄る。

いきなり両腕をホールドされ、

「ちょっと付き合って」

と言われる。

柳木と上村だった。

「なに?」

「ちょっと話がある」

なんだ?


連れて行かれたのは駅前のファミレス。

「なに? 話ってなに?」

柳木と上村が顔を見合わせ、頷き合ってから俺に言う。

「葉山、春となんかあった?」


は?


「なんかってなに?」

「なんかあった?」

「言ってることがよくわからないんだけど」

何かってなんだよ。

思い浮かぶとしたら戦バニだけだが、ゲームのことは二人に言ってないと言っていたし、特にトラブルとかはないぞ?


いや?

あれ?

そういえば最近 MIOとやってないな。

JINさんに MIOは? と聞いても、

「今日はやらないって」

と言うことが多かったけど、そんなもんかと思い大して気にしてなかった。


あれ?

いつから MIOとやってない?


コメントにも、

「 MIOちゃん、どうした?」

「俺の嫁がいない……」

「 MIOちゃん不足」

「かわいいが足りない」

「キレキレの MIOちゃんが見たいんですけど」

「JINと MIOちゃん別れたのか?」

「マジでそこ付き合ってんの?」

「あれで付き合ってないなら、俺たちはなにを信じればいいんだよ」

「夫婦じゃないの?」

「嘘……」

「絶対一緒に住んでるでしょ、あの二人」

「確かに」

「結婚はしてなくても同棲はしてるよな」

「マジか……」

「俺の嫁…」

「JINだから 許せてるところはある」

「それはある、他のやつなら許さない」

「とにかく MIOちゃん、戻ってきて!」

「マジそれ」

「JIN、 MIOちゃん呼んでこい」

「待って、NAGIと三角関係勃発も有力」

「NAGI、◯す」

「通報した」

「許すまじ」

「 MIOちゃん、俺たちがいるよ!」


コメント欄は大荒れだった。


そういえば友成にも、

「最近神野来ないね」

と言われた気がする。


あれ?


「最近、こっちの教室来てないかも。

なにかあったのかな?」

と俺が二人に聞く。


上村は、

「この頃葉山のところ行かないんだなって春に聞いたんだよ。そしたらさ、なんも言わずだんまり」

と言うし、柳木も、

「だんまりというより不機嫌なんだよな」

と、上村と共にうんうんと頷く。

「春が機嫌悪いとか見たことなくてさ、どうしちゃったのかなと思って」


俺も春臣が機嫌悪いのなんて見たことない。

お兄さんに当たりが強いのは見てるけど、不機嫌とは違うし、単純に家族に気を許してるってことだろうし。


どういうことなのかよくわからない。


更に二人は話を続ける。

「この前、帰る時に駅前で他校の女の子たちに春が呼び止められてさ、また例の告白。

俺たちも見飽きるくらい見てるし、最近は春もずっと断ってるし、今回もすぐ断ったんだよ、付き合えないって。

なのに、その女の子と友達数人が騒ぎ出してさ」

「ん?」

「『どうしてですか!? 全サなんじゃないんですか!?』って」


え?


「『告ったら付き合ってくれるんじゃないんですか? 全サなのにどうしてですか?』って大騒ぎ」


うわあ……


「春、『全サってなに?』って……

あいつ自分がそう言われてること知らなかったんだよ」


え……


「その子たちに『全サってなに?』って聞いてて、説明されてたよ。

告ったら全員と付き合えるシステムだって」

「そのあと、俺たちにも聞いてきた。

知ってた? どういうこと?って」

「俺たちも誰がそう言い始めたのか定かじゃないし知らないんだけど、正直に話した。

春が誰の告白も断らずに付き合うから、

『応募者全員サービス』略して『全サ』って言われてたって」

「……」


「春は女の子たちの間で取り決めみたいなのがあって、自分の意思とは関係なく、いつの間にか彼女と言われる人が代わっていってるのは知ってたんだけど、全サって呼ばれてることは知らなかったって」

「俺たちも面白がってたところがあるのは自覚してるから春に謝った。面白がるようなことしてごめん、悪かったって謝った」

「春、なにも言わなかった。

でも傷ついたと思う」

「それと並行して葉山のところにも行かなくなったことに気づいて、葉山ともなにかあったのかなと思って……」


「いや……俺とは特になにもないけど確かにこっちに来なくなったな」

「心当たりない?」

「ちょっとわからない……」

「そっか……じゃあやっぱり全サのこと怒ってるのかな」

「来週もう一度ちゃんと謝ろうぜ」

「うん」

あんなに陽気な柳木と上村が意気消沈してる。


そうか、全サと呼ばれていたこと春臣は知らなかったのか。


「話す機会があったらそれとなく聞いてみるよ、心配だし」

「ごめんな、俺たちのせいなのに」

「上村と柳木が悪いわけじゃないよ、みんな面白がってたところあるもん」

「本当ごめん」

二人の凹みようがすごくて気の毒だった。



その日は金曜日だったのでJINさんとチーム戦をすることになっていた。

JINさん、いや、龍臣さんに連絡を取る。

「海凪どうした?」

最近龍臣さんは俺のことを海凪と呼んでいる。

俺も龍臣さんと呼ぶようになった。

「今日のチーム戦、春臣誘ってもいいですか?」

龍臣さんは、

「春? やらないって」

「え?」

「毎回誘うんだけど、最近ずっと断られてる」

え? そんなの知らないよ……

「どういうことですか?」

「 MIOがジムから帰ってくる頃からかなあ、春、『 MIO、凄く速くなった、反応も良くなったし持久力も上がった!』って嬉しそうにしてて、楽しみだなって言ってたんだよ」

「はい」

「でも、ジムから帰ってきてもやろうとしないんだよ。スピード上がったの見せてくれよって言ってもやらないって。何度誘っても海凪とやるよって言ってもやらないの一点張り。俺の部屋にも来なくなった」


え……なんで……


「なあ、海凪、あいつ学校でなにかあった?」

あったといえばあったと言えるのだろうけど、龍臣さんに言ったら心配するだろう。

その前に春臣と話をしたい。

だからちょっとだけ嘘をつかせてください。

「わからないです。あの、春臣は土曜日家にいますか?」

「多分いると思うよ」

「急なんですけど家に行ってもいいですか?」

「うん、海凪が来れば少し元気になるかもしれないし来てやってよ。母さんには言っておくから」

「すみません、ありがとうございます」

「今日のチーム戦はやるよな?」

「はい、やります」

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