手土産
春臣がいた。
私服初めてだな。
なに着てもかっこいいな。
「春臣」
「あ、海凪」
手振ってる。
「こっち」
と繁華街のある方とは逆の東口に向かう。
こっち来たことないな。
西口と違って静かだ。
歩きながら春臣に聞いた。
「なあ、前に家に人あげるの嫌って言ってただろ? 俺行っていいのか?」
春臣がそう言ってたことをさっき思い出して密かに気にしていた。
「うん」
「だって嫌なんだろ?」
「知らない人は嫌だよ」
最近わかったことがある。
春臣は世間知らずに加えて言葉足らずだ。
「家に友達来たことある?」
「あるよ、中学の友達とか大介と綾人も来たことある」
つまり友達が来るのはいいけど、知らない人=知らぬ間に彼女になってた人、本当に知らない人は嫌というわけか。
言葉が足りないよ。
「そっか、じゃあ遠慮なくお邪魔させてもらうね」
「うん」
10分ほど歩くと急に立ち止まり、
「ここ」
と指差す。
あ、着いたのね。
「ただいま」
春臣が手招きする。
「お邪魔します……」
「あらあら、いらっしゃい」
優しそうな綺麗な人、お母さんかな?
「初めまして葉山海凪です、お休みの日にお邪魔してすみません」
そう言って持ってきた手土産を渡す。
「気を遣わなくていいのに」
と春臣は言うがそうもいかないだろ。
手土産をなににしようか悩みまくって妹に相談した。
「なに? 彼女の家にでも行くの?」
「違う、男友達」
「だったらポテチとコーラでいいじゃん」
小学生じゃないんだよ。
「なんか、こう、もうちょっと気が利いたものがいい」
「えー、じゃあグミは?」
お前に聞いた俺が間違いだった。
友成にも聞いた。
「ポテチの大袋とコーラでいいんじゃね?」
中1と思考回路一緒だぞ。
ダメだ、自力で探すことにする。
家に帰ると妹がチラシを俺に見せる。
「なに?」
「これはどうよ」
とチラシを指差す。
デパートのチラシだった。
お菓子フェア?
話題のお菓子を取り揃えました?
なんだと。
「これ人気なんだって」
とクッキーを指差す。
缶に詰められたかわいらしいクッキー。
かわいすぎないか?
「かわいいだけじゃなくて美味しいらしいよ、口コミの評価高いよ」
クッキー食べるのかな、春臣。
「明日からだって、学校帰りに寄ってくれば? 一人3点まで買えるって!」
「一つでいいんだけど」
「3点まで買える」
「……」
「一人3点」
「……買ってこいってこと?」
「お兄ちゃん、優しい!」
買ってくるなんて言ってないんだけど……
「友達の分と家の分の二つでいいよね」
「三つ買えます」
「……お前の分?」
「そう! 正解!」
指差すな、拍手するな。
「学校帰りだから売り切れてるかもよ、買えなくても文句言うなよ」
「頑張れ」
絶対文句言うなよ。
言われるがまま学校帰りに寄ってみた。
混んでる……帰りたい……
どこだろう? キョロキョロしてると一際長い行列を見つけた。
え? これ?
こんなに並ぶの?
うわあ……
最後尾に並ぶ。
何人くらいいるんだろ、30人はいるかも。
嫌になってきた。
もうポテチとコーラでいいや……結局男はそれが一番嬉しいんだという極論に行きつきながら並んでいると店員さんに、
「おいくつご入用ですか?」
と聞かれた。
催事では一種類のみの販売なんだそう。
「三つ欲しいんですけど……」
と言うと、商品名が書かれた紙に×3と記入し、
「こちら販売員にお渡しください」
という。
整理券みたいなものなのかな?
列は思いの外すいすい進み、無事にクッキーを三つ買えた。
こんなに並んでお菓子買ったの初めてだ。
待ってる間、
「ご試食どうぞ!」
とクッキーを貰った。
これで大したことなかったら、俺は即、列を抜けてコンビニに行きポテチとコーラを買う。
食ってみる。
うっま!
バター? ナッツ? ココア?
なんでお前ら喧嘩しないの?
砂糖は遥か彼方にほんのりいる。
あんまり甘くない。
甘いもの得意じゃないけど、これはいける。
二つ貰ったのでもう一つも食う。
こっちはチーズ。
濃厚だけどしつこくない。
ちょっと黒胡椒効いてる?
スパイシーな感じもする。
これ好き。
人気なのがわかった気がした。
これなら手土産にしても大丈夫そう。
そのクッキーを春臣のお母さんに渡した。
喜んでもらえるといいけど……
紙袋を見て、
「『Tio』のクッキー! 嬉しい!
これなかなか買えないのよ、美味しいの!」
春臣のお母さん、大はしゃぎ。
喜んでもらえてなによりです。
春臣はにこにこしてる。
そして、俺を手招きし、階段を上がった。




