2 テオとレイヤ
レイヤと言う男が隣町に彗星みたいに現れて、瞬く間に制圧したと言う話は、テオにも届いていた。
「あんたがメイか!」
乗り込んできたときも、瞬殺されたときも「まぁ、そうだろうな」と思った程度だった。
メイの一撃で地に這いつくばったレイヤを見下ろす。
「メイさんは規格外なんだよ。残念だったな?」
悔しそうなレイヤを観察してふと思った。
「ふーん、面は良いな」
メイに瞬殺されたことは弱いことの証明にはならない。
あれに勝てるやつなんていない。
「まぁまぁ、強い」
じろじろと観察されてレイヤは苛立った。
「なんだ、てめぇは!この腰ぎんちゃくが!」
「生意気なのは元気な証拠か」
テオは即座に頭を踏みつけた。
「っぐ!!」
グリグリと踵を頭に押し付けながら考える。
「あの金髪よりは、こっちの方がまだマシだな」
とにかくテオにとってあの金髪素人だけは気に入らなかった。
「あぁ。お前を鍛えて、あの金髪の代わりにメイさんのとなりに置いときゃ良いのか」
「っは???」
レイヤの意見などもちろん聞く気はない。
どう仕上げるかは、もう決まっていた。
――その後。
「…ちがう。レイヤ、てめぇ何遍言ったら覚えんだ?」
「食いもんなんて、好きに食わせろよ?!」
「ダメに決まってるだろ、そういうとこに差が出んだよ」
テオの指先がレイヤの唇をなぞる。
口元のソースを拭いとり、その舌で舐めとった。
レイヤは唾を飲み込んだ。
「テオ…」
「メイさんのとなりだぞ?ガキっぽい行動は慎め」
襟を引かれ、唇が触れそうな距離で睨まれる。
「また、メイさんかよ…」
腹の底に溜まる熱の正体にレイヤは薄々気がついていた。
それでも引く気はなかった。
「分かったよ。あんたの言う「理想」ってやつ、やってやるよ」
レイヤの隠された思惑に気づくことなく、テオは目を細めた。
レイヤは目を伏せた。
満足してろ。勝つのは俺だ。
―――
後ろからガッチリ抱き込み耳元で囁く男に、テオは抵抗できず身もだえた。
「お前が考えた『俺に似合う理想の男』なんて、お前のタイプの男にしかならねぇだろ。バカなのか?」
メイが鼻で笑う。
「…っぐ!!」
返す言葉も見つからず、珍しくテオが黙り込んだ。
メイのために仕込んだはずなのに、気付けばこの有り様だ。
「頭は良いのに、バカだな」
「本物のバカのメイさんに言われたくねぇ!」
やっぱり、メイに鼻で笑われた。
「……で? いつまで見てるんだよ、メイさん」
レイヤがテオを抱きすくめたまま、メイを鋭く睨みつける。
「はいはい。お熱いことで」
メイはひらひらと手を振って部屋を出ていく。
「おい、レイヤ。……もういいだろ。メイさんも行った」
「よくない。……俺をこんな風にしたのは、あんただろ」
レイヤの手がテオの服の下に滑り込む。
テオは赤い瞳を潤ませ、自分の失態に舌打ちした。
「……あ、っ……クソ、……責任、取れよ……」
「言われなくても。そのつもりだよ」
テオはレイヤの腕の中で、自分が育て上げた「理想」に溺れていく快感に、ついに白旗を上げたのだった。




