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図書室からつづく異世界   作者: 柚子水
第一章 小学校時代
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第5話 同じクラス

由奈と莉乃はわりと家が近くにある。


五年生で同じクラスになる前は、よく一緒に遊んでいた。


けれど、同じクラスになったときには、莉乃はなんとなくやりづらい感じを覚えた。


由奈も、莉乃と同じクラスになったことをあまり喜んでいない気がした。


近所の子たちとも遊んでいたが、学年が同じ由奈と莉乃はよく比べられている気がした。


あからさまに、どちらがすごいと言われることはなかったけど、莉乃は由奈にはなんとなく敵わない気がしていた。


みんなもそういう目で見ているのがなんとなくわかった。


由奈はおとなしそうだけど、話すと面白い。


言葉をたくさん知っていて、頭がよく回っている感じがする。


変なところで頑固だけど、誰にでも平等に優しい。


──いい子だと思うけど、なんとなく腹が立つときがある。


莉乃はいつも由奈に対してそう思っていた。


「莉乃ちゃんてさ、ちょっと負けず嫌いだよね」


そう言われたのは、同じクラスになってから一緒に遊んだときだった。


莉乃には、図星だった。


莉乃自身も、由奈が言うことに突っかかったり、反論しがちだという意識はあった。


由奈は、付き合いが長いから気軽に言ったのかもしれなかったが――


「負けず嫌いなのって、由奈の方じゃない?」


そう言い返したが、すっきりしなかった。


同じクラスになったからこそ、さっきの言葉に余計反発したくなった感じがした。


自分のことをよく知っている由奈が同じクラスにいるのは、やっぱりやりづらい。


――そして、同じクラスになって、改めて思った。


由奈は何でもそつなくこなしているように見える。


先生には褒められ、男子にも不思議と好かれる。


自分の方が“明るい”とか“可愛い”と言われることは多いけれど、由奈だって可愛いと思う。


結局、由奈に勝てるものが少ない気がする。


だからこそ、由奈が苦手なものを見つけたときは、わざとからかった。


莉乃自身も、自分の感じが悪いと思ったことはあった。


「うわ、こういうの苦手なんだ?」


「意外〜。由奈、できそうなのにね」


由奈は、勉強や運動でつまずいても、


「そういうの苦手でさ」


と笑ってみせ、やがてそれを克服してしまう。


そうなると、また腹が立った。


莉乃は由奈と同じクラスになっても、松原(まつばら)華恵(かえ)たちと一緒にいた。


華恵たちの方が、気楽に言いたいことを言って笑うことができた。


由奈はちょっとしたことでも理屈っぽく考えるときがある。


あるとき――


由奈と一緒に帰ることになったとき、学校の観察池を見てから帰ることになった。


台風が過ぎた後で、少し風が強い日だった。


池のほとりに立つと、水面が輝いて見えて莉乃は思わず言った。


「キラキラしてるね! すっごくきれい!」


「うん、きれい」


由奈は頷いて、じっくり水面を見つめながら言った。


「風で水面が小さく動いてる。それに日光も当たってるからキラキラしてるんだね」


(何言ってるの? 理由なんていいのに)


別のときにも――


窓の外に虹が出たことをみんな喜んでいたのに、由奈は莉乃に言った。


「どうしてあんな色になるんだろうね。雨の後ってことと……太陽の光が関係あるのかなぁ」


莉乃は何も答える気になれなかった。


由奈と話すと、そんなことがちょくちょくあった。


由奈なりに綺麗だと思っているのはわかる。


むしろ、自分よりそういうことに感動しているのかもしれない。


そんな由奈の話を興味深く聞く子がいることも知っている。


でも、莉乃はそうではなかった。


由奈が真面目に考えたことを話しても、莉乃には別に面白いとも思えなくて、聞き流していた。


「ふーん、そうなんだ」


莉乃がそんな返事をすると、由奈はいつも謝った。


「ごめんね、面白くないこと言って」


そう言われると、自分だけ何も考えていないみたいに思えて、なんだかもやっとした。


そういうとき、由奈が申し訳なさそうな顔をしていたのは知っていたけれど。


そしていつしか、由奈は莉乃の前ではあまり思ったことを話さなくなった気がする。


当たり障りないことだけ話す感じになった。


一方で、莉乃は、華恵たちとは難しく考えずに言いたいことを言って笑えた。


健斗や晴基も五年生のクラスが始まったときから声が大きくて目立っていた。


莉乃や華恵たちも一緒になって、健斗たちと盛り上がったりもした。


(高野くんはきっとモテる。あの子のことはみんながかっこいいと思うんだろうな)


莉乃は健斗と初めて同じクラスになって、そんな印象を持った。


クラスが始まってから少し経つと、男子も女子もクラスの空気を作るメンバーがなんとなく決まっていった。


そこに由奈は入っていなかった。


由奈は授業中に発言したりはするけど、意味なく騒いだりするのはあまりしようとしない。


莉乃は学校で他の子たちと一緒にいるとき、由奈といるより自然だと思った。


(わたしは、ほんとは由奈とは合わないのかも。

由奈もそう思ってるかもしれない。クラスではほとんど話さないし)


クラスの雰囲気や流れの中で、由奈と莉乃の距離は開いていった。


昔みたいに放課後に遊ぶことも、もうなかった。

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