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第3話  健斗と晴基

一方、教室の中心にいたのが高野健斗(たかの・けんと)だった。

大きな目が印象的で、女の子がつい視線を送ってしまうような、愛嬌のある整った顔立ち。


性格も明るく、笑顔が多い。素直で繊細な面も持ち合わせており、話していて楽しいので、本人は何の気もなく振る舞っていても隣の席の女子が恋に落ちるのは日常茶飯事。


騒がしい友達と一緒にじゃれ合って笑ったり、昼休みにクラス中を走り回ったりするような、そんな男子。


勉強も運動もそこそこ。背が特別高いわけではないが、誰よりもかっこよく輝いて見えて、教室の空気を明るくする存在だった。


女子との何気ない話の中で、トレードマークの大きな目が優しく微笑みかける。健斗には他意はないが、この微笑みは、自分にだけ向けられているのかと勘違いしてしまう女子が多いのだろう。


けれど、健斗が話したい相手は、明るく可愛い渡瀬 莉乃(わたせ・りの)。年齢を重ねれば美人になる雰囲気を漂わせているクラスのモテ女子。

6年生になってから身長が伸び始め、顔立ちも少し大人びて、ますます見栄えがよくなった。


健斗と莉乃が何をしても、周りの男女が盛り立ててくれて、二人の周囲は、いつも明るい。

噂では、健斗と莉乃の二人は両想いなのだと、すでに“決まっていた”。


みんなから注目され、他の男子からもモテている莉乃。

その莉乃と自分が両想いであるという噂……そのみんなの決めつけが、健斗には心地よかった。


そして、健斗の隣には、いつも古山晴基こやま・はるきがいた。

スポーツが得意で、男子の中では誰よりも信頼されていた“兄貴分”。

怒ると少し怖いが、普段は優しくて、空気を読むのがうまい。


勉強も地道にこなし、先生からも評価されていた。安定感と真面目さが彼にはあった。

運動神経がよく、スポーツをやらせれば、だいたい一番になる。

体育の時間や球技大会ではヒーロー扱いされる。リレーのアンカーも任される。

でも、威張るわけではない。やたらと目立ちたがることもなく、クールすぎもしない。


クラスの男子たちからの信頼は厚く、トラブルが起きれば自然と「晴基に相談しよう」という流れになる。

そういう“期待”を、彼は知らないふりをして受け止めてきた。


晴基は莉乃に密かに惹かれていたが、健斗と莉乃が噂になっていたため、想いを口に出すことはなかった。


健斗とは、クラスの班分けで一緒になった時に意気投合。


クラスの人気者同士が親友となった。

二人はいわゆるクラスの「一軍」であった。


由奈は、教室の居心地が悪そうだったけど、最初からそういうタイプだったわけじゃないと晴基は記憶している。

由奈は、話すと面白い子で、話せば会話が弾む。

知識もあるし、ふいに言う一言が深かったりして。


けど、女子同士の「都合」で、クラスの端っこに追いやられた感じだ。


彼女の隣にいる桂花は、無口で少し鋭い目をしていて、あまり周囲と関わろうとしない印象。

けど、委員会活動なんかで話したときに、時折、こちらの言葉にぽつりと返す、その言葉が妙に的を射ていて、笑える。


晴基は、そういうのが嫌いじゃない。


「小藤さん(桂花)って、しゃべると意外と面白いじゃん」

と健斗に言うと、「んー?そうかもね」と気のない返事が返ってきた。


晴基は、教室の中で少し居心地悪そうにしている子にも、なるべく声をかけるようにしていた。

自分がそうしても嫌がられないという立ち位置にいることを、彼自身よくわかっていた。


人は、存在してもいい場所があるだけで、ちょっとだけ呼吸しやすくなる。

そんな風に思うのは、少し大人びすぎているかもしれないが、晴基はそう考えていた。

その上で、自分がどうあるべきかを、時々考える。


晴基は、静かに、しかし確実に、そういうことができる人間だった。


晴基は、莉乃のことは、正直、気になっていた。

明るくて、可愛くて、見ていて飽きない。だけど──


健斗と話す彼女を見ると、「ああ、あれは両想いだな」と感じた。

誰にも言わないし、言うつもりもない。

自分が健斗を超えることはない。

モテ度でも、華やかさでも、勝てる気がしない。


そして、もう一つ。

由奈の前で楽しそうに笑う健斗を見ると、ほんの少しだけ引っかかるものがあった。


健斗って、莉乃と両想いって喜んでると思うのに。

何が引っかかるんだろう。


晴基は、深く考えなかったが、何回もそう思うことがあった。


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