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図書室からつづく異世界   作者: 柚子水
第一章 小学校時代
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第2話 教室の真ん中で

一方、教室の中心にいたのが高野《たかの》健斗《けんと》だった。


大きな目が印象的で、女の子がつい視線を送ってしまうような、愛嬌のある整った顔立ち。


性格も明るく、笑顔が多い。素直で繊細な面も持ち合わせており、話していて楽しいので、本人は何の気もなく振る舞っていても、隣の席になった女子が恋に落ちるのはしょっちゅうだった。


騒がしい友達と一緒にじゃれ合って笑ったり、昼休みにクラス中を走り回ったりするような、そんな男子。


勉強は苦手、運動もそこそこだが、誰よりもかっこよく輝いて見えて、教室の空気を明るくする存在だった。


女子との何気ない会話では、トレードマークの大きな目を優しく細めて笑う。


健斗本人には他意はない。


それでも、もともと見た目にアドバンテージのある健斗が相手の話をちゃんと聞いて楽しそうに笑うと「自分だけ特別なのかもしれない」と多くの女子に期待を抱かせた。


けれど、健斗が話したい相手は同じクラスの明るく可愛い渡瀬(わたせ)莉乃(りの)なんだろうと、クラスのほとんどの生徒が思っていた。


莉乃は、年齢を重ねれば美人になる雰囲気を今から漂わせている。


六年生になってから身長が伸び始め、顔立ちも少し大人びて、ますます見栄えがするようになった。


健斗と莉乃が何をしても、周りの男女が盛り立ててくれて、二人の周囲はいつも明るかった。


“健斗と莉乃は両想い”


それは、みんなの中でなんとなく既に決まっていた。


健斗のことを好きな女子たちも、薄々わかっていただろう。


みんなから注目され、他の男子からもモテている莉乃。


その莉乃と自分が両想いであるという噂……そのみんなの決めつけが、健斗には心地よかった。


そして、健斗の隣には、いつも古山(こやま)晴基(はるき)がいた。


男子の中では誰よりも信頼されていた。


怒ると少し怖いと思われていたが、晴基が怒る時はみんなのためだった。


普段は穏やかで、空気を読むのがうまい。


勉強も地道に取り組んで先生からも頼りにされていた。


運動神経がよく、スポーツをやらせれば、だいたい一番になる。


体育の時間や球技大会ではヒーロー扱いされる。リレーのアンカーも任される。


でも、威張るわけではない。やたらと目立ちたがることもなく、クールすぎもしなかった。


健斗と一緒にクラスを盛り上げることもあった。


トラブルが起きれば自然と「晴基に相談しよう」という流れになった。


晴基は密かに莉乃に惹かれていたが、健斗と莉乃が噂になっていたこともあり、自分から莉乃に近づいたり想いを口に出したりすることはなかった。


健斗とは、クラスの班分けで一緒になった時に意気投合。


クラスの人気者同士が親友となった。


二人は、いわゆるクラスの「一軍」。


ある日の休み時間――


晴基がクラスを見渡したとき、隅っこにいる由奈が目に入った。


(あいつは居心地が悪そうにしてるけど、最初からそういうタイプだったわけじゃないんだよな……)


由奈は、話すと面白い子で話せば会話が弾む。


いろんなことについて知識もあるし、ふいに言う一言が深かったりして。


けど、女子同士の“都合”で、クラスの端っこに追いやられた感じだ。


彼女の隣にいる桂花は、無口で少し鋭い目をしていて、あまり周囲と関わろうとしない印象。


けど、委員会活動なんかで話したときに、時折、こちらの言葉にぽつりと返す言葉が妙に的を射ていて、笑えたりする。


晴基は健斗に言ってみたことがあった。


「小藤さんって、しゃべると意外と面白いじゃん」


健斗からは、「んー? そうかもね」と気のない返事。


晴基は、教室の中で居心地悪そうにしている子たちにも、なるべく声をかけるようにしていた。


自分が話しかけたとき、その子たちが少しほっとした顔をすることに気づいていた。


晴基がそういうことを始めた頃は、クラスの中心にいる男女もザワついていたが、繰り返すうちに「晴基だからな」というふうに思われるようになった。


晴基の活動に健斗もたまについてくるようになった。


あるとき、由奈と桂花に声をかけたとき、女子たちがこそこそ言っているのが聞こえてきた。


「由奈と小藤さん、ああいうとき嬉しそうだよね」


そのとき、由奈と桂花の顔が少しこわばった。


健斗も一緒にいたから、なおのことだったかもしれない。


それからは、クラスの隅にいる男子にだけ話しかけるようになった。


ある日、そんな男子のひとりから言われた。


「古山くんに話しかけてもらうと安心するよ。ここにいてもいいんだなって」


それを聞いたとき、晴基は少しショックを受けた。


(そんな風に思いながら教室で過ごすなんて……。

毎日、何時間も学校にいるのに……)


そして、晴基は莉乃のことは、正直、気になっていた。


明るくて可愛くて、見ていて飽きなかった。


だけど――


健斗と話す彼女を見ると、「ああ、あれは両想いだな」と感じた。


自分の気持ちは誰にも言わないし、言うつもりもない。


莉乃にとって健斗以上の存在にはなれないと思ったし、健斗の邪魔をする気もなかった。


そして――もう一つ言わないことがあった。


時々、由奈の前で楽しそうに笑う健斗を見ると、ほんの少しだけ引っかかった。


健斗って、莉乃と両想いって言われると嬉しそうなのに……。


――何が引っかかるんだろう。


晴基は深く考えなかったが、何度かそう思うことがあった。



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