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第10話-D 中学1年生 ~ただの同級生~
――気がつけば、由奈を見かけなくなっていた。
(……ああ、もう藤野の件、終わったんだな)
由奈が来なければ、来なかったでそれで済む。
ただ、来ていたときは、“何か、気になっていた”。
それだけのこと。
そんなふうに自分に言い聞かせていたある日の放課後。
昇降口に向かう廊下の窓際で、健斗はふと、由奈の姿を見つけた。
隣にいるのは桂花。
相変わらず、ふたり並ぶと小学校当時の空気が流れている。
健斗は、視線を止めた。
廊下の向こうで、由奈がこちらに気づいた――かと思ったが、
視線はすぐに桂花に戻された。笑ったり、頷いたり、何か話をしているようだった。
健斗の存在など、そこにはないかのように。
健斗とすれ違っても挨拶もない。
桂花の視線が少しこちらに向いた気もする。
別におかしくはない。
由奈とは今は違うクラスだし、同じクラスでも桂花はおとなしい。
小学校の頃と違って、すれ違っても何も言わない。
それが「ただの同級生」ってやつだ。
けれど、どうしてだろう。
健斗の胸の奥で、少しだけ冷たい風が吹き抜けたような気がした。
(……別に、普通だし)
呟くように心で否定して、健斗は視線を外した。
由奈の姿は、もう背中しか見えなかった。
何も変わっていないはずなのに、ほんの少し、何かが遠くなったような気がしてならなかった。




