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第10話-C 中学1年生 ~バレンタインの日~

バレンタインの日、健斗は何人かの女子からチョコレートを渡された。

中には、呼び出されて受け取ったものもある。


小学生の時には、ほとんどの場合、集団で渡されていたが、中学生になると、渡し方にも意思が籠ってくる。


呼び出されて渡される時には、少し緊張する。

相手がとても緊張しているから。


言葉で何か言われなくても、言いたいことは伝わってくる。


チョコレートを断ったことはない。

ただ、気持ちを返したこともない。


1ヶ月後にお返しを渡すだけだ。

家で母と妹と一緒に焼いたクッキーを袋に包む。それを1人ずつに渡してきただけ。

時間はかかるけど、家族でやるから楽しいし、お返しした子からは美味しいと言ってもらえるから、悪くない。


6年生の時に両想いと噂されていた莉乃にさえ、そうした。

莉乃も、何人かのクラスの男子に渡していたから、健斗も特別にはしなかった。


そして、中1のバレンタインデー。


由奈が1年2組の教室に顔を出す。


そして、誰かを探している素振り。

健斗には、わかる。

――藤野。


由奈の友達が藤野にチョコを渡したいらしいと聞いた。


それにしても、しょっちゅう藤野の探しに来ていたり、二人で話しているのを

このクラスの連中に見られているから、由奈が藤野に気があると思っている生徒もいそうだ。


健斗は、今日は特に誤解を招きやすいだろう、と見ていた。


健斗は事情を知っているが、もし、知らなければ由奈は藤野を好きなのか?と疑っていたかもしれない。


健斗は、由奈のところに行って、事情なんて知らないふりをし、

「藤野にチョコ渡したいの?」

からかうように言った。

言いながら、なぜか少し胸がモヤッとしたように感じた。


「違うよ」

由奈は、そう言って少し健斗を睨んで小さく微笑んだ。


「でも、藤野くん、いる?」


やっぱり、藤野か。


「あー、誰かに呼ばれて出てったな。女子だった」


「え……。

そっか、ありがとう」


由奈は動揺したように見えた。


「高野くんは、今年も、チョコたくさんもらったよね?相変わらず、モテそうだもん」

由奈は気を取り直したように笑って言った。


「まぁな。由奈からのは、ないの?」

健斗は少し緊張しながら、軽い口調で言った。


「ないよ!あるわけないじゃん」

「まぁ、期待してねーし」

「そうだろうね!」


由奈は付き合いが悪いタイプではない。

冗談で頼まれた、仲良い男子には渡していたようだ。

ちゃんとお返しも貰っていた。


健斗とは、顔を合わせれば、じゃれ合うような言い合いをしていたが、

そんな相手だからこそ、渡す展開にはならない。


(私から貰っても逆に困るくせに。

私は高野くんから女子と思われてないんだから、渡すのも変だし)


由奈は、そんなことを思いながら軽く笑って健斗の前から去って言った。


(由奈からは、貰ったことないな……)

健斗は、そう思いながら、由奈の背中を見送る。



友人には、藤野が別の子から呼び出されてチョコを貰ったことは内緒にしておこう。

由奈は、そう思いながら、自分の教室に向かった。


由奈は、健斗の妹から同じクッキーを貰ったことがある。

健斗の妹は、由奈に懐いていて、個人的にくれたことがあるのだ。


(あのクッキー、美味しかったな。高野くんには言ってないけど。

また、今年も貰った子たちにクッキー焼いて返すんだろうな……)


由奈は、そんな風に思って少し胸がザワついたが、すぐにその感覚を振り払った。













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