急激な成長による悪影響
ガーちゃんとメガロケロスにお礼を言って、森を出る。
「そういえばアンの協会登録ってしてない気がする」
「お父様かお母様がしているとは思いますが、登録したかどうか聞いてはいないので、協会で確認をした方が良さそうですわ」
協会に戻って受付で確認をすると、アンの登録はすでにされていた。受付に部屋を用意すると言われ、アンは家があるので要らないと返すが、お金がかかる訳でもないし、物置にでもすればいいと、一部屋貰っておく事を勧められる。
俺は魔法使いは物が多くなるので物置にするのに賛成すると、アンは部屋を貰うのに同意した。
アンは今まで使っていた来客用の魔道具を受付に返却して、俺と同じ鍵型の魔道具を受け取り、首にかけている。
「アンの部屋を確認した後で、貰った素材を持ってジョーのところに相談しに行こうか」
「はい」
アンの部屋は俺やフレッドの部屋の近くにして貰ったので、確認はすぐに終わって、ジョーの部屋へと向かう。
「ジョー」
「何じゃ………」
ジョーは俺の返事をしながら顔を上げると、俺たちが持っている物に驚いたのか固まっている。
「ジョー、大丈夫?」
「何じゃそれは!」
「メガロケロスとガーちゃんに貰った」
「鱗はまだ分かるんじゃ。輝いているツノは何じゃ!」
「俺もよく分からないんだけど、メガロケロスが魔法を使ってツノを落としてくれたみたいなんだ」
流石のジョーも輝くツノに関しては存在を知らなかったようだ。ジョーなら知っているかと思ったのだが知らないとなると、このツノはどうやって使えば良いのだろうか?
「ジョーこれはどうやって使えば良いのかな?」
「メガロケロスのツノであれば杖にすれば良い物ができるんじゃが、これを杖にするのはどうなんじゃ?」
「俺たち杖って、空を飛ぶようにしか使わないんだよね」
「腕輪にするのであれば別の素材でも普通なら良いんじゃが、これはどうなるか分からんぞ」
ジョーも困惑しているので、効果がどう出るか試していく事にする。なので、ジョーに鱗とツノを預ける事にした。
ジョーにアンが協会に所属した事や、部屋を先ほど貰ったことを話す。
「アン、おめでとう。何かあればワシを頼ってくれていいぞ。魔法が使えるようになれば、魔法薬の作り方も教えるんじゃ」
「ありがとうございます。魔法薬についてはお願いしようと思っていたので、助かります」
「ワシよりドリーの方が魔法薬の製作についてはすでに上な気はするんじゃが、知識は豊富なので頼るといいぞ」
俺はアンに魔法を教え始めた事をジョーに伝え、その時に魔法を見せるのにガーちゃんとメガロケロスが、鱗とツノをくれたと説明する。
「魔法で鱗やツノを生え替わらせるとは、どちらも凄いぞ! アンに魔法を見せるというのは、あれか、エマとエレンが書いていた論文じゃな」
「魔法を覚えるのが早くなるみたいだから、アンが早く覚えられるならそっちの方が良いかなって」
「そうじゃな。早いし安全じゃ」
俺はジョーにフレッドの装備について相談すると、ジョーはイフリートを使った魔道具がどのように使えば効果が高いか、今試作を繰り返していると言われる。
「フレッドだけではなく、皆の分をイフリートを使った魔道具に作り直しじゃな」
「本当に作ったばかりだけど、イフリートで死にかけたし、作らないとダメだね」
「今の装備ならエドたちであれば問題なく進めるとは思うんじゃが、非常事態じゃし、作り直しじゃな」
「俺たちもダンジョンに行けるようになるまで作るのに参加するよ」
ジョーからイフリートを使う場合は、どのような素材になるかを聞いたりしながら、今後新しくなる装備について話して行った。
ジョーとの話が一区切りついたところで、レオン様にガーちゃんとメガロケロスが、ダンジョンが危険な場合は手伝ってくれると、伝えにいく事にする。
「お父様」
「ベスか。急ぎのようだが、どうした?」
ベスはレオン様に直接伝える事にしたようで、早く伝えた方が良いだろうと、急ぎで会いたいと頼むとすぐに会えた。
ベスが代表してレオン様にガーちゃんとメガロケロスと話した内容を伝えた。
「それは助かるな。だがダンジョンを壊して進むとなると、最終手段となりそうだ。草原に魔獣が溢れてきた場合に手伝ってもらう事になりそうだな」
「草原に騎士や冒険者は入れましたの?」
「いや、周辺のダンジョンがどうなっているか分かってから、草原へ人を入れる予定になっている」
ダンジョンから溢れたのがイフリートだったから、慎重に事を進めるようだ。アルバトロスならダンジョンからの食料がなくても、食べていけるだけの食料は準備できるので、ダンジョンは閉じたままでも問題はないとレオン様が言う。
「一部の冒険者が稼げなくなるのが問題ではあるが、今はアルバトロスが好景気なのもあって食い繋ぐ仕事ならあるだろう」
「ですが、早めにダンジョンを解放した方が本来は良いですわ」
「そうは言っても近くの都市から連絡が返ってくるのに時間がかかる。最低でも一週間はダンジョンに行けないだろう」
早馬で連絡をしているが、馬の速さや体力には限界があるので、急いだとしても往復する事を考えると、かなり時間がかかる予定であると、レオン様が説明してくれた。
レオン様は忙しいだろうと、伝える必要があったことは話したので、俺たちは部屋を退室する。アンが炭酸飲料の作り方を教わってきたので、厨房でも作り方を教えた後に、リオにもルーシー様に渡して欲しいと、作り方を書いた紙を預けた。
「時間がまだありますので、少し体を動かしたいですわ」
「ベスとフレッドは特に体がどう変わったか確認したいね」
「テレサは忙しいようなので、相手を頼みたいですわ」
「分かったよ」
テレサさんが今何をやっているかベスに聞くと、再びベスの護衛を外れてダンジョンの警戒をしているようだ。
今更ながらに、テレサさんがベスの護衛を外れるには、国王陛下しか命令が無いと無理なのではっと疑問に思って質問すると、ルーシー様の護衛の中に、軍の騎士としてテレサさんに命令できる階級の者が居ると教えてくれた。
「軍の階級と貴族としての爵位は別物なので、命令系統が別になっていて覚えるのが大変ですわ」
「習ったから覚えてはいたけど、そんなに階級が上の人がいたのは知らなかった」
「ルーシー様は王太子妃殿下ですから護衛も階級がかなり上の人が同行していますわ」
「なるほど」
将来の王妃なのだし、言われてみれば当然か。
俺とベスの話を聞いていたリオが、ルーシー様の騎士もダンジョンが溢れる可能性があると、ダンジョンの警戒をする人と、護衛をする人に分かれて、行動していると教えてくれた。
「お母様は強いので、近距離の護衛は必要かと言われると疑問ですが。王族として護衛無しはまずいと最低限残しているようです」
「魔法格闘術を使えるんだから、リング王国の魔法使いに対してでも負ける可能性は少ないか。王族だから魔力量も多いし」
「はい」
ルーシー様の魔力量は元々は俺以上で、リオが同等の魔力量だった。それが今は俺の方が魔力量が多いのだから、リング王国内でも有数の魔力量になってしまった気がする。
「フレッド、それでは相手をお願いしたいですわ。身体能力がどの程度伸びているか分からないですし、怪我をしないように魔法格闘術を使いますわ」
「では拙者も同じように使いますな」
ベスとフレッドが戦い始めると、以前見た戦い方より動きがぎこちなく見える。やはり身体能力が大きく伸びているのだろうか? 少しすると二人とも止まって確認しあっている。
「変わりすぎですわ。魔法格闘術を使えるようになった時の方が安定していましたわ」
「拙者も酷いですな。慣れるまで時間がかかりそうですな」
「戦うよりも先に体の動きを確認した方が良さそうですわ」
ベスとフレッドは素振りなどを始めたので、一応俺も身体能力が変わっていないかと、一緒に素振りを始めると違和感を感じる。
「あれ? 俺も身体能力上がってる?」
「エドもですの?」
「ベス、ちょっと見てくれない」
「分かりましたわ」
俺はベスに見てもらいながら素振りをする。
「確かに身体能力が上がっているようですわ。見たところ私やフレッドのように劇的な物では無さそうですが、見てすぐに分かる程度には動きが変わっていますわ」
「俺の勘違いじゃなかったのか」
獣人ほど身体能力は伸びないようだが、強い魔獣を狩ると伸びはするようだ。魔力ほど目に見えて増えないので、気付かれなかっただけなのかもしれない。
「エドは、私たちのように戦うのも難しくなるほど、身体能力は上がっていないようですが、素振りや手合わせをして慣れておいた方が良いですわ」
「分かった」
手合わせについては、ベスとフレッドが体に慣れてからする事にして、今日は同じように素振りなどをして体の動きを確認していく。
俺の身体能力が伸びているのだから、皆の身体能力が変わっているだろうと、動きを確認すると、やはり違和感を感じるようなので、素振りなどをして体を慣らしていく。
リオに魔法格闘術の手解きもしたいが、ルーシー様が教えるようだし、今日のところは同じように素振りなどをして、体の動きを確認するだけにした。
「私は魔法も使えるようになったのに、身体能力も伸びているようです」
「魔力か身体能力どちらかしか伸びないのかと思ってたけど、どっちも伸びるんだね」
「感覚的な物ですが、ベスとフレッドほどは身体能力が伸びていないようですね。ベスとフレッドは私と逆で魔力はあまり伸びなかっただけで、増えているかもしれませんね」
アンの予想をベスとフレッドに尋ねると、確かに多少魔力が増えている気がしないでもないと言う。魔力量は制御に困るほど増えてはいないので、問題はなさそうだと言う。
逆に俺は魔力が増えすぎて制御が難しくなっている。鍛錬も程々に魔力の制御を確認する事にした。
「今日のところはこの位にしますわ。明日も同じように体の動きを確認したいですわ」
「そうだね。アンの魔法も教えるんだし、集まって鍛錬しようか」
「それが良いですわ」
明日も集まる事にして、俺たちは汗をかいたので風呂に入ってから、今日は解散することに。
次の日も集まって鍛錬をしていると、ライノが来て俺たちに助言をくれた。俺たちのように急激に身体能力が上がったことは無いようだが、徐々に上がって困った時にした対処法などを教えてくれた。
「私よりやりにくそうだな。一気に身体能力が上がるとここまで大変とは」
「かなり大変ですわ。ですが助言で少し分かってきましたわ。手足が伸びた訳では無いのですから、ゆっくりと動きを確認すると分かりやすいですわ」
ライノに助言を貰ったことで、ベスとフレッドは俺が見ても明らかに動きが良くなった。本人たちは納得してはいないようなので、まだ鍛錬は続きそうだ。
鍛錬を続けていると、ルーシー様が来てリオに魔法格闘術を教え始めた。ルーシー様の魔法格闘術の教え方はフレッドとそう代わりがなく、リオが困っていたので、エマ師匠に教わった理論的な方法を教えると、リオは理解したようで試し始めた。
「あ、できました」
「本当だ」
「やはりできましたか。私よりエドの方が魔法格闘術の教え方が上手かったのは不思議ですが」
「ルーシー様、俺も人から聞いただけですから」
ルーシー様は俺が言っていた教え方をツヴィ王国にも伝えておくと、書き留めている。ツヴィ王国の王族でも知らなかった魔法の教え方を知っていた、エマ師匠の友達とは何者なんだろうか?
ルーシー様は続きをやると、リオに魔法格闘術の戦闘方法を教えていく。俺が知らなかった戦い方などもあり、参考になるので一緒に聞いたり試したりした。
「色々と言いましたが、魔法格闘術は人によって戦い方が異なりますので、好きに使って良いです」
「はい、お母様」
リオはまだ年齢的に剣を振るにしても身長が足りないので、今はドリーのように力が必要な時に使ったり、怪我を減らすのに体を守るのに使う事になりそうだ。
アンの魔法を教えるのにエレンさんが来てくれて、アンに魔法を教えてくれる。昨日のガーちゃんとメガロケロスが使った魔法が良かったのか、アンは二回目にして安定して魔法が使えるようになった。
「凄いですね。二回目でここまで魔法が使えるようになるとは」
エレンさんが感心しているので、昨日あった事を説明すると、一緒に見たかったという。簡単にできる魔法ではないと思うので、諦めてもらうしかない。
俺たちは急に能力が伸びた事での違和感を無くすために、毎日集まって訓練を続ける。
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